下垂体腺腫とはどんな病気か

 両眼の奥で、いろいろなホルモンを分泌する下垂体と呼ばれるところにできる良性の腫瘍(しゅよう)です。脳腫瘍全体の16%を占めます。成人に発生し、小児ではまれです。その発生原因は不明です。下垂体ホルモンをたくさんつくる腫瘍と、ホルモンをあまり多くつくらない腫瘍とがあります。

症状の現れ方

 症状は、下垂体腺腫が大きくなりまわりの神経を圧迫することによる症状と、内分泌の症状との2つに分けられます。
 腫瘍が大きくなると眼の奥や額に重い感じや鈍い痛みを感じることがあります。腫瘍がさらに大きくなると、下垂体の上にある視神経と呼ばれる眼からの情報を脳に伝える神経が下から圧迫され、眼で見える範囲が狭くなります。
 見えない範囲は、外側の上のほうから徐々に拡大してきます。患者さんは、最近、斜め前から来る人にぶつかりやすくなった、赤信号で停止していたら後ろからクラクションを鳴らされ、信号を見上げると青になっていた、などの症状を訴えます。また、眼科を受診することで初めて、下垂体腺腫を指摘されることも珍しくありません。
 内分泌の症状には次のようなものがあります。プロラクチンと呼ばれるホルモンが多くつくられると、月経異常、乳汁分泌、性欲減退、インポテンツなどが現れます。成長ホルモンが多くつくられると、身長の異常な増加、指が太くなる、唇が厚くなる、あごが前に突き出る、高血圧糖尿病などが現れます。副腎皮質刺激ホルモンが多くつくられると、肥満、色素沈着、多毛、高血圧などが現れます。そのほか、腫瘍の種類によっては、下垂体からのホルモンの生成が抑えられる症状を現すことがあります。
 最初に月経異常や不妊症で産婦人科を訪れたり、高血圧糖尿病で内科を受診したりして、そこから脳神経外科へ紹介される場合もあります。

検査と診断



 下垂体腺腫の診断にはMRIが有効です(図36)。下垂体のなかでどこにできたか、まわりの神経を圧迫しているかどうかなどが診断できます。さらにMRIでは、下垂体の近くにできた腫瘍と下垂体との関係を診断することも可能で、下垂体腺腫以外の腫瘍も確定診断できます。
 また、採血によって血中の下垂体ホルモンを測定する内分泌検査も重要です。場合により入院して、早朝に下垂体ホルモンを刺激したり抑えるような薬物を投与して、その後連続して採血が行われることがあります。
 注意が必要なのは、薬物の服用によりプロラクチンが高くなっている場合です。この場合は、MRI検査でも下垂体腺腫が発見できません。
 患者さんは、吐き気止めの薬(メトクロプラミド、ドンペリドン)、血圧を下げる薬(レセルピン、α(アルファ)‐メチルドパ)、精神を安定させる薬(クロルプロマジン)、胃潰瘍(いかいよう)の薬(スルピリド)、女性ホルモン(エストロゲン、ピル)などをのんでいることが多く、これらの薬を中止すればプロラクチンの値は正常になります。

治療の方法

 プロラクチンが多くつくられる腫瘍では、ブロモクリプチン、テルグリド(テルロン)、カベルゴリン(カバサール)などの薬物療法が第一選択です。これらの薬は服用を中止すると腫瘍が大きくなるので、かなり長期間の継続した内服が必要です。小さな腫瘍、出血している腫瘍、腫瘍のまわりから髄液(ずいえき)がもれている場合などには、手術療法が優先されます。
 成長ホルモンが多くつくられる腫瘍では、手術療法が第一選択です。補助的に行われる薬物療法では、オクトレオチドの皮下注射またはブロモクリプチンの内服があります。そのほか放射線治療が追加される場合があります。
 その他のホルモンをつくる腫瘍やホルモンを分泌しない腫瘍では、手術により下垂体腺腫を摘出する方法が第一選択です。