ウィルソン病とはどんな病気か

 ウィルソン病は銅の代謝障害(たいしゃしょうがい)によって肝臓や脳に銅の蓄積が起こるために肝硬変(かんこうへん)になったり、脳の障害によって両手を羽ばたくような振戦(しんせん)が起こったり、バランスがとれなくなったり、あるいは筋肉の緊張が高まって手足が固くなる(固縮)などの症状が出る病気です。
 血液中には銅を運搬するセルロプラスミンという蛋白質がありますが、ウィルソン病ではこれが低下して銅を運ぶ機能が弱まって、肝や脳に銅が沈着して障害が起こります。

原因は何か

 ウィルソン病は遺伝性の疾患で、遺伝型式は常染色体劣性(じょうせんしょくたいれっせい)遺伝です。最近は遺伝学の進歩によって、この病気は13番染色体にある銅転送に関係する遺伝子の異常によって起こることが明らかになっています。
 人口10万人に1〜3人の発症がみられます。

症状の現れ方

 10〜20代のころから症状の出ることが多いです。


 肝硬変のほかに、頭部CT(図42)で示したように脳の深部にある大脳基底核(きていかく)のうち被殻(ひかく)と淡蒼球(たんそうきゅう)に障害が強いので、手を鳥のようにばたばたと羽ばたくような振戦(自分で動かそうとしなくても両手が大きく震えてしまう)が起こり、手首や足首に固縮がみられます。そのほか、口を半開きにした顔の表情や、よだれを流すこともあります。言葉は不明瞭で、ゆっくりした話し方になります。
 精神症状としては感情が変化しやすく不安定になったり、性格が変化して付き合いにくくなったり、学業成績の低下が起こります。進行すると姿勢の異常や認知症(にんちしょう)、小脳失調症(しょうのうしっちょうしょう)(バランスがとりにくい)などの神経障害が起こります。十数年の経過を経て、肝硬変のために死亡することもあります。

検査と診断

 以上に述べたように、肝障害と手の羽ばたき振戦を中心とした神経症状から、ウィルソン病を診察したことのある医師はすぐに診断ができます。検査としては、血清セルロプラスミンが低値であることや、血液検査で肝機能障害のあること、眼を見ると角膜周囲にカイザーフライシャー角膜輪(かくまくりん)といって銅の沈着のため角膜辺縁に灰色のリングが見える特徴的な所見が認められます。これらはみな、診断に役立ちます。

治療の方法

 標準的な治療法としては、まず銅を多く含む食品を減らすことです。銅を多く含む食品には、カニ、エビ、貝類、クリ、乾しブドウ、ココア、チョコレートなどがあります。
 次にD‐ペニシラミン(メタルカプターゼ)を内服して、体内にたまった銅を排泄するようにします。D‐ペニシラミンには副作用として全身の皮膚に赤い発疹が出たり、胃腸症状や白血球の減少が起こることがあるので、医師の観察のもとに注意して薬を服用します。

ウィルソン病に気づいたらどうする

 10〜20代の人で手の羽ばたき振戦のような不随意(ふずいい)運動が起こる時は、早期に神経内科医(年齢によっては小児科医)の診察を受けるようにしてください。早期に治療を始めれば、神経症状は経口的な薬で改善します。
 銅の沈着により肝硬変も起こるので、定期的に肝機能検査をして経過をみてもらうことが大切です。