大腿骨遠位部骨折とはどんな外傷か

 大腿骨遠位部の骨折とは、大腿骨の下部で膝関節に近いところの骨折です。大腿骨は、円筒状の中央部(骨幹部)から下部にかけて円錐状に広がる形態をしており、広がりにつれて厚い骨皮質は次第に薄くなります。それが力学的な弱点となって、しばしば外力により骨折を生じます。ときに膝関節内に骨折が及ぶこともあります。
 原因は、交通事故や転落などの若い人に多くみられる高エネルギーによるものと、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)がある高齢者において転倒などの比較的軽微な外力で生じる低エネルギーによるものに分けられます。近年、高エネルギー外傷の増加や高齢化社会を迎えて発生率は増えつつあり、治療が難しい骨折のひとつです。

症状の現れ方

 受傷直後から痛み、はれがみられ、膝関節の変形やグラグラした異常な動きが起こって歩行ができなくなります。骨折のずれが大きいと、骨折した部分が大腿部の皮膚を突き破って開放骨折となったり、膝関節の後方にある動脈を損傷することもあります。

検査と診断

 大腿骨下部から膝関節にかけてのX線写真をとります。また、膝関節内に骨折が及んでいる時には、関節面の損傷の状態を正確に把握するためにCT検査を行います。
 血管損傷の疑いがある時には、まず足の先の色を調べ、動脈の拍動が触れるかを調べます。もし、疑いがある場合には、早急に血管造影などの検査が必要です。

治療の方法

 膝関節近くの骨折であるため、骨折した部位を正確に戻して骨折部分を確実に固定し、早くから膝を動かす訓練を開始する必要があります。
(1)保存的治療
 ずれがない、もしくはあってもわずかな骨折の場合は手術をしないで治します。ずれがなければギプス固定を、軽度のずれがあれば鋼線で骨を牽引して元の位置にもどして、その後にギプス固定を行います。
(2)観血的治療
 現在では手術での治療が優先されており、きちんと戻して、確実にぐらつきを固定して、早くからリハビリテーションができるようにします。


 手術のやり方として、髄内釘(ずいないてい)(骨のなかに太い金属の棒を通す、図23)やプレートとネジなどで固定します(図24)。髄内釘のほうが固定が強いのですが、最近では手術時に小さな傷しかつくらずに、プレートとネジで固定するやり方も普及しています。
 動脈損傷がある場合には、血管外科による緊急手術が必要です。もし手術が遅れると、膝から下の部分の壊死(えし)を起こすおそれがあります。

合併症はどんなものか

 高齢者の場合、骨粗鬆症のため強い固定ができないことや、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)や内科的疾患の合併によって運動機能が低下しているため、リハビリテーションが円滑に進まないことが多く、膝関節の動きが低下(関節拘縮(こうしゅく))することがあります。

応急処置はどうするか

 大腿部の下部から膝関節が大きく変形し、痛みで歩行できないので、膝を中心に副木(ふくぼく)をしてすぐに整形外科へ連れて行きます。開放骨折の場合には、きれいなガーゼやタオルなどで創部を圧迫して、不潔にならないようにします。