上・下前腸骨棘裂離骨折とはどんな外傷か



 骨盤には大腿や体幹(胴)の筋肉がついている突起部がいくつかあり、そのうち縫工筋(ほうこうきん)と大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)の付着する部位を上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)、大腿直筋(だいたいちょくきん)(大腿四頭筋のひとつ)の付着する部位を下前腸骨棘(かぜんちょうこつきょく)といいます(図37)。これらの突起部は成長期(13〜17歳くらい)にはまだ骨盤とは骨と骨とではつながらず、骨端線あるいは成長線という軟骨でつながっています。そのため付着している筋肉の収縮による影響を受けやすく、引きちぎられるように骨折を起こすことがあります。
 これは裂離骨折と呼ばれ、そのうち上前腸骨棘裂離骨折と下前腸骨棘裂離骨折は高頻度に発生します。
 いずれもスポーツ中に急激で強い牽引(けんいん)力がはたらいた場合に起こり、上前腸骨棘は短距離走のスタート時やダッシュなどの際に、下前腸骨棘はサッカーにおけるキックやハードルでの着地などの際に発生します。

区別すべき障害と合併症

 同じ年齢層、同じ部位に痛みを来す障害に上・下前腸骨棘骨端炎(こつたんえん)があります。裂離骨折が急激な強い力で発生する外傷であるのに対して、骨端炎は反復する小さな力による障害といえます。この場合のX線所見では骨折はなく、骨端線のわずかな開きや不整、突起部の肥大や変形を認める程度です。治療としての安静期間は骨折の場合より短くなりますが、裂離骨折の前ぶれとしてみられることや再発を繰り返すことなどがあり、復帰は決して急がないようにします。
 裂離骨折の合併症として、まれに大腿外側皮神経障害を来すことがあります。症状としては、大腿の外側から前面にかけてのしびれが現れます。

症状の現れ方

 ダッシュやキックなどで突然股関節の前面やや上のあたりに激痛が現れ、スポーツ活動が続けられなくなります。

検査と診断

 上・下前腸骨棘のところに圧痛、腫脹(しゅちょう)(はれ)が認められます。さらに骨盤のX線撮影で骨折を確認します。X線だけでは疑わしい場合や骨折のずれの程度を知る必要がある場合は、X線CTの検査を追加することもあります。

治療の方法

 保存療法と手術療法とがあります。原則的には、骨折のずれが小さければ保存療法を、大きければ手術を行うとされていますが、はっきりした基準はありません。ずれが小さくても早期復帰を目的にネジ釘を用いて固定する手術を行うことや、反対に比較的大きなずれがあっても安静療法で治すこともあります。いずれの治療法でも、ほとんどの場合大きな後遺症を残すことはありません。

応急処置や予防対策はどうするか

 応急処置としてアイシングを行い、損傷の起きた肢に荷重しないように、足を浮かせるようにしてただちに整形外科を受診します。予防対策としては、大腿の筋肉のストレッチングをスポーツ前後に行うこと、大腿の前と後ろの両方の筋力トレーニングをバランスよく行うことなどがあります。