脂肪肉腫<運動器系の病気(外傷を含む)>の症状の現れ方

 手足や体の表面に発生した場合、多くは急に大きくなる瘤(こぶ)として意識されます(図58‐(a))。一部の悪性度の低いタイプでは、あたかも良性腫瘍であるかのようにゆっくりとした成長を示すことがあり、注意が必要です。痛みはほとんど自覚されません。
 骨盤腔内(こつばんくうない)(おなかの内臓のまわり、後腹膜腔)に発生した場合は大きくなるまで自覚症状があまりないため、早期診断が困難であることも少なくありません。進行した場合、周囲の重要な器官を圧迫するため、さまざまな症状が現れます。たとえば、膀胱を圧迫すれば尿が近くなり、腸を圧迫すれば便秘気味になり、足につながっている神経を圧迫すれば足にしびれが出ます。また、足につながっている血管を押すことで足(下肢)にむくみが出ることがあります。
 病気が進行すると、最初に病気が発生した部位から、血液やリンパ液の流れにのって悪性の細胞が移動し、体のほかの臓器に病巣を作ります。この現象を転移と呼びます。一般的に、肉腫は血液の流れにのって肺に転移することが最も多く、脂肪肉腫も例外ではありません。しかし粘液型脂肪肉腫では、肺以外の肝臓などへの転移が比較的多いことがわかっており注意が必要です。

脂肪肉腫<運動器系の病気(外傷を含む)>の診断と治療の方法

 放射線治療や抗がん薬単独での治療効果は認められませんので、手術による摘出が必要です。手術の方法や、手術に抗がん薬を併用するかどうかなどは主に顕微鏡の所見や転移の有無によって総合的に判断します。
 高分化型脂肪肉腫や悪性度の低い粘液型脂肪肉腫は多くの場合、抗がん薬を併用せず、手術だけで治療します。悪性腫瘍は、腫瘍のまわりの一見正常な組織にも腫瘍細胞が潜んでいることがあります。こうした細胞を取り残すと、再発の原因になります。
 再発する確率をより少なくするために、肉腫を手術する時には、腫瘍のまわりの正常な組織を腫瘍に一部つけて切除するのが原則であり、このような手術法を広範切除術と呼びます。脂肪肉腫もこうした方法で手術を行うのが原則ですが、最近は悪性度の低い高分化型脂肪肉腫には、より患者さんの体への負担の少ない縮小手術を行うことも増えています。
 円形細胞の含有率の多い粘液型脂肪肉腫、多形型脂肪肉腫、脱分化脂肪肉腫など細胞が増殖する勢いがあり、悪性度が高いと考えられている脂肪肉腫に対しては、広範切除術による外科的摘出に加えて、抗がん薬の併用が行われることが少なくありません。これは、全身の精密検査によって放射線診断学的に転移がないと考えられる場合でも、小さな悪性の細胞の集団が体のどこかに潜んでいる可能性が予想されるからです。