頸椎後縦靭帯骨化症とはどんな病気か

 頸椎を補強している靭帯組織のうち椎体後方、すなわち脊髄(せきずい)の前方に位置する後縦靭帯が骨組織になり、肥厚してくる病気です。
 骨化した靭帯は、頸椎の可動性を減少させながら脊柱管(せきちゅうかん)内で脊髄を徐々に圧迫し、麻痺症状を引き起こします。日本で最初に報告された疾患であり、治療法も主に日本で発達してきました。

原因は何か

 現在のところ靭帯骨化の原因は不明ですが、遺伝的要因やカルシウム代謝異常など多因子の関与が考えられています。

症状の現れ方

 主な症状は脊髄圧迫症状です。すなわち、手足のしびれや痛みを発症することが多く、手の細かい動作がやりにくくなったり(巧緻運動障害(こうちうんどうしょうがい))、足が突っ張って歩行がしにくくなる(痙性歩行(けいせいほこう))などの運動障害も出現します。さらに頻尿や失禁、便秘などの膀胱直腸障害もみられます。
 こういった脊髄症状が徐々に出現し悪化する場合がほとんどですが、転倒などの軽い外傷を契機に麻痺症状は急激に悪化します。脊髄症状による歩行障害が転倒を招き、その結果、脊髄症状が悪化するという悪循環にもつながります。
 いったん高度の脊髄麻痺が発症すると、その治療は困難です。

検査と診断

 靭帯骨化の診断はX線側面像で行うことがほとんどですが、骨化巣が小さい場合などは難しいため、骨化の有無に関してはCTが最も正確な診断法です。MRIは脊髄の状態を把握するのに有用です。

治療の方法

 頸部痛や片側の上肢の痛み(神経根性疼痛)のみで脊髄症状を認めない場合は、薬物療法や頸椎カラーなどの装具による安静などの保存的治療を行います。その際、頸部の過度な動きや転倒に対してとくに注意が必要です。脊髄がいったん障害されると、たとえ手術を行っても回復の見込みは薄いため、自覚症状がほとんどない場合も予防的手術を行う場合があります。
 一方、脊髄症状を認める例では基本的に手術療法の適応です。頸椎の前方から脊髄を除圧する前方除圧固定術と、後方から行う脊柱管拡大術(椎弓形成術)があります。前方法は、脊髄の圧迫されている範囲が少ない場合に行われます。脊髄の麻痺の程度が強かったり、脊髄自体が萎縮して圧迫がない場合などは、麻痺があっても手術は選択されない場合があります。

頸椎後縦靭帯骨化症に気づいたらどうする

 本症に特有の症状はありませんので、自覚症状からは診断できません。手足のしびれがある場合はもちろんですが、ほかの目的で撮影したX線写真などで骨化を指摘されたら整形外科を受診してください。本症では、とくに経験を積んだ医師による正確な診断の元に、治療方針を決定して脊髄麻痺を予防するのが重要です。