涙腺腫瘍とはどんな病気か



 涙腺とは、眼球の上の耳側(外側)に位置し、涙液を産生分泌する臓器です(図11)。涙腺腫瘍は涙腺が腫大するため、上まぶたの外側(耳側)が腫脹(しゅちょう)します。

原因は何か

 腫瘍についての基本的解説は、眼瞼腫瘍(がんけんしゅよう)を参照してください。
 涙腺の場合、良性腫瘍は良性多形腺腫(りょうせいたけいせんしゅ)(混合腫瘍とも呼ばれる)で、真性腫瘍としてはめずらしく複数の構成要素からなっているため、「多形」や「混合」の呼び名が使われます。これが、涙腺腫瘍全体の約半分を占めます。これが悪性化すると悪性多形腺腫となります。
 その他の悪性腫瘍には、腺様嚢胞(せんようのうほう)がんなどがあります。また、悪性リンパ腫というリンパ細胞のがんが涙腺に発生することがあります。ほかに、真性腫瘍ではなくて慢性的な炎症が本態である偽腫瘍(ぎしゅよう)があります。

症状の現れ方

 無痛性または有痛性の上まぶたの外側(耳側)の腫脹、涙腺の腫大による眼球突出、複視(物が二重に見える)、軽度の眼瞼下垂(がんけんかすい)などが起こります。疼痛は急速に増大する腫瘍で多くみられます。複視は、ゆっくりと増大する腫瘍では自覚しない場合もあります。
 一般に良性腫瘍は進行が遅く、悪性腫瘍は進行が早い傾向があります。

検査と診断

 腫脹した眼部の視診、触診を行い、腫瘤の形状、硬さ、圧痛の有無などを調べます。また、周辺リンパ節の腫脹の有無も調べます。がんではリンパ節への転移が起こるからです。まぶたの発赤や圧痛があれば、細菌やウイルス感染による急性涙腺炎(きゅうせいるいせんえん)の可能性もあります。また、眼球運動や眼球突出度も検査します。
 血液検査は、急性涙腺炎と腫瘍との区別に有用です。CT、MRIなどの画像診断では、眼球突出の程度、腫瘍の広がりや、周囲の骨を破壊してまで増大しているかどうかなどがわかります。
 骨の破壊がみられれば、悪性腫瘍の兆候です。悪性が疑われる場合は、ガリウムシンチグラム、PET(陽電子放射断層撮影)などで全身への転移(肺や肝が多い)の有無を検査します。
 決定的な検査は、腫瘍を取って顕微鏡で調べること(病理組織診断)ですが、腫瘍の一部だけを取って調べる生検は、良性腫瘍の悪性化をまねくことがあるので、腫瘍はできるだけ全摘出して顕微鏡で調べるのがよいと思われます。

治療の方法

 良性腫瘍も悪性腫瘍も、手術による全摘出が原則です。悪性腫瘍では、涙腺にとどまらず眼球やまぶたまで含めて切除摘出する場合も多くあります(眼窩内容除去術(がんかないようじょきょじゅつ))。悪性腫瘍で転移が認められる場合、全身的化学療法や放射線療法が行われますが、予後はよくありません。
 偽腫瘍では、ステロイド薬の投与や放射線治療が行われます。

涙腺腫瘍に気づいたらどうする

 上まぶたの外側の腫脹、眼球突出、複視などを自覚すれば、たとえ痛みがなくても早めに専門医を受診してください。とくに悪性腫瘍では早期発見が予後をよくします。