真菌性眼内炎(とくに内因性真菌性眼内炎)とはどんな病気か

 何らかの原因で、真菌(しんきん)(カビ)が眼のなかに入り炎症を起こすものです。真菌による眼の感染症と位置づけられます。健常な人や眼科手術をしたことのない人に発症することはほとんどありません。
 早期に発見し適切な治療を受けることにより、多くの場合障害を残しません。しかし、発見が遅れた場合、あるいは全身状態が非常に悪い場合などでは、眼のなかで真菌が増えてしまい、失明に至る場合もあります。

原因は何か

 原因としては、(1)外傷や手術の傷口から眼のなかに真菌が侵入する場合(外因性)、(2)体のどこかに原因となる真菌が存在し、それが血液により眼内に転移してくるもの(内因性・転移性)に分類できます。
 内因性の場合、ほとんどの患者さんで、何らかの全身的な因子、たとえば(1)体が弱り、免疫力(病原体に対して攻撃し、自分を守る力)が落ちている、(2)抗がん薬投与を受けている、(3)治療のために血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されている、などが認められます。
 とくに、現在問題となっているのは、内因性のもので血管内カテーテル留置のある患者さんの場合です。以下に、この内因性真菌性眼内炎について述べます。

症状の現れ方

 内因性真菌性眼内炎の場合、眼の症状が出る前に、ほとんどの患者さんで全身真菌症による発熱などの全身症状があります。
 この発熱などが続いたあと、1週間前後で虫が飛んでいるように見える飛蚊症(ひぶんしょう)(コラム)や、霧がかかるように見える霧視(むし)などの初期の症状を自覚します。眼内で炎症が悪化すれば、視力の低下を自覚するようになり、眼の充血・痛みも生じてきます。この時点でさらに放置すると、高度の視力低下に陥り、恒久的(こうきゅうてき)な視機能(しきのう)障害を残します。
 一般的に内因性真菌性眼内炎は、程度の差こそあれ、両眼に生じることが多いのが特徴です。

検査と診断

 診断にあたって最も大切なことは、全身的要因があるかどうかを知ることです。とくに血管内カテーテルの使用の有無、発熱の有無などは大切な情報です。


 これらの情報を得たあとに、細隙灯(さいげきとう)検査と、散瞳(さんどう)(瞳を広げること、いわゆる黒目を大きくすること)による精密眼底検査を行います。熟練した眼科医が、眼底の特徴的な黄白色の円形滲出斑(しんしゅつはん)を認めれば、診断はそれだけで可能です(図28)。
 とくに、眼内炎(がんないえん)を起こす真菌としては、カンジダと呼ばれる種類が圧倒的に多く、真菌性眼内炎の90%を占めます。この真菌の感染を調べる血清学的検査(β(ベータ)‐グルカン、カンジダ抗原)が陽性であれば、診断の大きな助けとなり、さらに血液やカテーテル、硝子体(しょうしたい)(眼のなかのゼリー状の物質)から採取したサンプルから真菌そのものが検出されれば、診断は確定されます。
 区別すべき病気としては、細菌性の眼内炎、悪性リンパ腫などが問題となります。

治療の方法

 内因性真菌性眼内炎の治療の第一は、抗真菌薬の大量点滴療法です。現在、米国の感染症学会の勧告では、6〜12週間の治療が必要と考えられており、眼底の病変が消えるまで治療が続行されるべきであるとされています。早期〜中期の状態であれば、この点滴療法で多くの場合は治ります。
 抗真菌薬として、日本ではトリアゾール系薬剤のジフルカンがよく使用されます。眼内に薬が届きやすく、カンジダに効果があるという特徴があります。
 しかし、より進行し、すでに視力障害が生じている場合は、点滴療法と硝子体の手術が必要になることが多く、治療しても高度の視機能障害が残る可能性があります。ただし、この硝子体手術については、いまだ厳密な意味での有効性は確認されていません。

真菌性眼内炎(とくに内因性真菌性眼内炎)に気づいたらどうする

 この病気でいちばん問題となるのは、先に述べた免疫力が弱っている患者さんや、血管内カテーテルが留置されている患者さんの場合です。発熱があり、そのあと飛蚊症、霧視などの症状があれば、主治医、看護師に申し出て、眼科を受診してください。視機能障害を残さないためには、早期の発見・治療が大変重要になります。