虚血性視神経症とはどんな病気か

 視神経での急激な循環障害により発症する、視神経の梗塞(こうそく)、卒中(そっちゅう)です。比較的高齢者に突然起こる、急激な片眼性の視力低下が特徴です。
 原因から、動脈炎型と非動脈炎型の2つに分かれます。とくに、動脈炎型は視力障害が重く、短時間のうちに反対の眼にも発症することが知られており、早期の診断・治療が必要な病気です。
 また、梗塞の部位により、眼球と視神経の接続部分である視神経乳頭(ししんけいにゅうとう)部で起こる前部虚血性(ぜんぶきょけつせい)視神経症と、視神経の後方で起こる後部虚血性(こうぶきょけつせい)視神経症に分類されます。

原因は何か

 視神経は、短後毛様動脈(たんこうもうようどうみゃく)・網膜中心動脈(もうまくちゅうしんどうみゃく)・軟膜動脈(なんまくどうみゃく)の3つの動脈系によって血液が供給され、このうちのどれかの血行障害で起こります。
 動脈炎型は、炎症により血管が閉塞(へいそく)して起こります。側頭動脈炎(そくとうどうみゃくえん)(巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん))や多発性筋炎(たはつせいきんえん)などの膠原病(こうげんびょう)を伴うことが多く、比較的高齢者に多い特徴があります。
 非動脈炎型は、糖尿病高血圧動脈硬化などの基礎疾患を背景にすることが多く、内頸(ないけい)動脈の狭窄(きょうさく)を伴うこともあります。また、視神経乳頭が生まれつき小さい人に起こりやすい傾向があります。

症状の現れ方

 中高齢者に、突然、急激な視力障害が起こります。視力障害の程度はさまざまですが、一般に動脈炎型のほうが重く、発症と同時に視力を失うこともあります。視力はよくても視野の上半分(または下半分)が見えなくなる水平半盲(すいへいはんもう)で発症することもあります。
 眼球や眼の奥に痛みを伴うことはありませんが、動脈炎型の場合は、血管炎に伴って側頭動脈周囲(こめかみ)の痛み、咀嚼痛(そしゃくつう)(あごや歯の痛み)、頭皮の痛みが特徴的とされ、また体重減少、発熱、全身倦怠感(けんたいかん)などの全身症状を伴うことが多いとされています。
 動脈炎型や、非動脈炎型で内頸動脈の狭窄を伴う場合は、発症前に「急に片眼が見えなくなって、数秒〜数分で元の見え方にもどる」という症状(一過性黒内障(いっかせいこくないしょう)発作)を繰り返すことがあります。

検査と診断



 前部虚血性視神経症の場合は、眼底検査で視神経乳頭に特徴的な蒼白浮腫(そうはくふしゅ)(むくみ)がみられ、視神経の発赤腫脹(しゅちょう)や出血を伴うこともあります(図64)。
 後部虚血性視神経症の場合は、発症当初にはまったく眼底に異常がなく、瞳孔(どうこう)反応や視野検査や病歴などから診断することもあります。
 動脈炎型の場合は、赤血球沈降速度(赤沈)の著しい亢進(こうしん)が早期診断に有用です。確定診断には、側頭動脈の生検(組織の一部を採取して調べる検査)による組織診断が重要です。
 非動脈炎型の場合は、眼底検査で視神経乳頭が小さいことが特徴のひとつとされます。基礎疾患としての糖尿病高血圧動脈硬化、また内頸動脈狭窄の存在について検査することが望まれます。

治療の方法

 動脈炎型は、短時間のうちに反対の眼にも発症して、両眼失明に至る危険が高いため、他眼の発症予防と全身状態の改善を目的として、緊急に副腎皮質ステロイド薬による点滴治療を開始します。その後も赤沈の正常化を目安に、副腎皮質ステロイド薬の内服を継続する必要がありますが、発症眼の予後は残念ながら不良です。
 非動脈炎型の場合、米国での調査では発症6カ月後に42・7%が3段階以上の視力改善、12・4%が3段階以上の視力悪化、44・9%が不変という自然経過を示しました。一方で、3年後には25%が、10年後には50%以上が両眼性に移行するという報告もあります。
 一般には、ビタミンB12製剤の内服による神経保護治療を行います。また急性期には、浮腫の軽減を目的に副腎皮質ステロイド薬による治療を行うことがあります。さらに、糖尿病など基礎疾患がある場合や、眼底検査で他眼の視神経乳頭が小さいことが判明し、他眼にも発症のリスクが高いと考えられる場合は、他眼の発症を予防する目的でアスピリンの内服をすることもあります。

虚血性視神経症に気づいたらどうする

 とくに、高齢者に発症する側頭部痛などを伴う動脈炎型は、両眼失明に至る危険があり、緊急な治療が必要な病気です。すみやかに眼科専門医の診察を受けるようすすめます。
 また、無痛性の非動脈炎型の場合でも、その背景に糖尿病高血圧動脈硬化や内頸動脈狭窄などの基礎疾患が隠れているおそれがあります。眼科専門医およびそれぞれの背景疾患の専門医の診察を受けるようすすめます。