顔面外傷とはどんな病気か

 顔面を構成する骨には前頭骨(ぜんとうこつ)、上顎骨(じょうがくこつ)、鼻骨(びこつ)、頬骨(きょうこつ)、下顎骨(かがくこつ)などがあります。顔面の軟部組織のみが損傷を受けた場合は、顔面がとてもはれたり、裂傷を受けたりしますが、機能的な後遺症を受けることはまれです。しかし、これらの顔面を構成する骨に骨折が生じると、その程度によって顔面の変形だけでなく、機能障害を起こすことがあります。

原因は何か

 骨折の原因として多いのが交通事故、スポーツによる外傷、ケンカによる殴打、転落や転倒などです。

症状の現れ方

 骨折の部位によってさまざまな症状が現れます。
(1)鼻骨骨折
 鼻骨は鼻根部を形作る骨です。片側あるいは両側の鼻骨が骨折することにより鼻が一方へ曲がったり、鼻が陥没するといった外鼻の変形が起こります。受傷時は鼻出血を伴います。
(2)頬骨骨折
 頬を形作る骨の骨折です。外力の加わる方向によって後方、内方、側方などいろいろな方向にゆがみます。その結果、顔面が陥没したり、口をあけたり閉じたりしにくくなります。
(3)眼窩底吹(がんかていふ)き抜(ぬ)け骨折


 眼球がおさまっている眼窩と上顎洞(じょうがくどう)の隔壁である眼窩底は、非常に薄い骨でできているため、眼に急激に外力が加わり、眼窩内圧が上がると眼窩の内容物は薄い骨壁を破って上顎洞内に落ち込むことがあります。これを眼窩底吹き抜け骨折といいます(図3)。
 とくに上のほうを見た時に、物が二重に見える複視(ふくし)が生じます。また、頬の皮膚の知覚が鈍くなることもあります。
(4)眼窩内側壁骨折
 眼窩と篩骨洞(しこつどう)との隔壁である眼窩内側壁も、眼窩への急な外力により骨折することがあります。眼窩底骨折と同様に複視が生じることがあり、とくに外側を見た時に物が二重になって見えます。また、ごくまれに視力を司る視神経にまで損傷が及び、急激な視力低下を来すことがあります。この場合は早急な対応が必要になります。
(5)下顎骨骨折
 下あごの骨の骨折です。歯の破損を伴うことが多く、骨のずれにより口があけにくくなったり、噛み合わせがずれたり、口をあける時の痛み、噛む時の痛みが起こります。

検査と診断

 受傷直後でも触診でわかる場合もありますが、顔面のはれもあって骨折があるかどうかはよくわからないことがあります。しかし、前記のような症状がある場合は骨折の可能性があります。
 確定診断は画像診断によります。顔面の単純X線、CT検査で骨折部位や骨折の程度などの正確な情報がわかります。

治療の方法

 骨折が軽度でゆがみが少なく、機能障害が認められない場合は、とくに整復の必要はありません。しかし、以下の症状がある場合は整復を考慮します。
 すなわち、(1)顔面の変形がある場合、(2)複視や眼球運動障害がある場合、(3)開口障害がある場合、(4)顔面の知覚麻痺がある場合、(5)噛み合わせの異常がある場合です。
 整復は、鼻骨骨折は受傷直後ならば局所麻酔下で可能です。鼻のなかに鉗子(かんし)を差し込んで鼻の曲り、落ち込みを元にもどします。
 受傷翌日からは顔面のはれがひどくなるため、きちんと整復できたかどうか確認するのが難しくなります。そのため、いったんはれが引いた時点(受傷後7〜10日)で全身麻酔下に整復をします。
 頬骨骨折は、歯ぐきに切開を加えて口から、あるいは側頭部の皮膚に小さい切開を入れて頬骨に到達し、ゆがんだ骨を元にもどしてワイヤーや小さなプレートで固定します。
 眼窩底骨折の場合、複視の程度、状況によって保存的に経過をみていく場合と、整復術を行う場合があります。整復術は骨折の位置などにより、鼻内内視鏡で整復する場合、歯ぐきの上を切開して操作をする場合、顔面の眼のすぐ下の皮膚を切開する場合があります。
 下顎骨骨折では、ずれがないか軽度の場合は、顎間固定といって上下のあごが動かないように4〜6週間ワイヤーで固定します。ずれがひどい場合は骨折部位付近に切開を加え、下顎骨を露出して整復したのち、ワイヤーや小さなプレートで固定し、さらに顎間固定をします。

受傷時の注意

 顔面に外傷を受けたら症状のあるなしにかかわらず、必ず病院を受診し、骨折の有無を調べることが大切です。また、鼻をかまないことが大切です。鼻をかむと骨折線から周囲組織に空気がもれていってしまいます。