頬粘膜がんとはどんな病気か



 頬粘膜は、上下口唇(こうしん)の粘膜面、頬の粘膜面、臼後部(きゅうごぶ)および上下頬歯肉溝(きょうしにくこう)(口腔前庭(こうくうぜんてい))からなり、ここに発生するがんを頬粘膜がんといいます(図11)。全口腔がんの約10%を占め、50歳以上、とくに高齢者に多く、またやや男性に多い傾向があります。
 好発部位は、臼歯(きゅうし)部の咬合(こうごう)面に相当する頬粘膜面です。組織学的には扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんが圧倒的に多いのですが、頬腺(きょうせん)や口唇腺などの小唾液腺(しょうだえきせん)から発生する腺系がんもみられます。

原因は何か

 原因は不明ですが、この部位には白板症(はくばんしょう)や扁平苔癬(へんぺいたいせん)などの白色病変が比較的多く発生することから、これらとの関係が指摘されています。また、口腔がんに共通して、喫煙、飲酒などが危険因子にあげられています。そのほか、歯の鋭縁や義歯(ぎし)による慢性の機械的刺激も関連する因子とされています。

症状の現れ方

 主な自覚症状は腫脹(しゅちょう)(ふくらんでいる)と疼痛(とうつう)です。がん病変部の表面は潰瘍を形成したり、乳頭状になります。がんが深部へ浸潤(しんじゅん)(侵入)すると開口障害を来します。さらに進展すると、皮膚やあごの骨に浸潤します。
 また、頸部リンパ節への転移は20〜50%に認められ、その多くは顎下(がっか)リンパ節や上内頸静脈(じょうないけいじょうみゃく)リンパ節の腫大として現れます。遠隔の臓器への転移を認めることは多くありません。

検査と診断

 確定診断には生検(病変の一部を採取して顕微鏡で調べること)が必要で、組織学的診断により行います。がんと確定した場合には、X線、CT、MRI、超音波、PETなどの画像診断を行い、総合的にがんの進行度(病期)を決定します。
 鑑別すべき疾患としては白板症、紅板症(こうばんしょう)、扁平苔癬などがあり、生検による組織学的診断と長期にわたる経過観察が必要です。外傷性潰瘍との区別が必要な場合には、その原因を除去して2週間後に状態を観察し、治る傾向がなければ生検が必要になります。

治療の方法

 初期がん(T1、T2症例)に対しては、手術あるいは放射線治療を行います。手術では、病変部を周囲の組織を含めて切除します。放射線治療では組織内照射(病変内に放射線源を埋め込んで限られたところだけに放射線を照射する)が有効です。
 進行がんでは手術を要し、がんが顎骨(がっこつ)や皮膚に進展している場合には顎骨や皮膚を含めた拡大切除が必要になります。切除後の欠損は前腕皮弁(ぜんわんひべん)、前外側大腿皮弁(ぜんがいそくだいたいひべん)、肩甲骨皮弁(けんこうこつひべん)などの遊離組織移植を行って再建します。また、頸部リンパ節への転移に対しては、頸部郭清術(かくせいじゅつ)(リンパ節を清掃する手術)を行います。5年生存率は70〜80%と比較的良好です。

頬粘膜がんに気づいたらどうする

 疼痛などの異常な症状に気づいたら、まず自分で口腔内を観察し、触ってみます。前述の疑わしい病変が認められる場合には、ただちに口腔外科などの専門医を受診して、専門的な検査や治療を受ける必要があります。