舌がんとはどんな病気か



 舌がんは有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう)(舌背部後方にある8〜10個の突起)より前方部(舌前方の3分の2)に生じたがんをいい(図17)、それより後方に発生したものは舌根(ぜっこん)がんと分類されます。舌がんは口腔がんのうちでは最も頻度が高く、約50%を占めます。男性に多く、50〜70歳代に多く発生しますが、最近は20歳代の若い人にも発生しています。好発部位は舌の側縁から下面で、とくに臼歯(きゅうし)部に相当する側縁部に多く発症します。組織学的にはその大多数が扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんですが、まれに腺系がんも発生します。
 舌は、摂食、咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)、構音など日常生活を営むうえで極めて重要な機能をもっているために、治療後、その障害は社会復帰を困難にすることがあります。

原因は何か

 原因は不明ですが、他の口腔がんと同様に喫煙、飲酒、義歯むし歯による持続的な慢性刺激や損傷が誘因と考えられています。
 さらに、白板症(はくばんしょう)や紅板症(こうばんしょう)は前がん病変とされ、がん化する危険性があり、長期の経過観察を必要とします。

症状の現れ方

 病変の表面には膨隆(ぼうりゅう)(こぶ状のふくらみ)、びらん、潰瘍を認めることが多いのですが、白板、肉芽(にくげ)、乳頭状を示すものもあります。
 乳頭型、肉芽型および白板型のがんは外向性に発育し、粘膜表層を広範囲に進展しますが、深部への浸潤(しんじゅん)は比較的少ない傾向があります。
 潰瘍型や膨隆型は内向性に発育し、深部組織に深く浸潤して嚥下障害構音障害を来します。
 顎下(がっか)リンパ節や上内頸静脈(じょうないけいじょうみゃく)リンパ節などの頸部リンパ節への転移頻度は30〜40%と口腔がんのなかでは高く、舌がんの治療後にもリンパ節転移(後発転移)が出現することがあります。通常、口腔がんでは病変と同じ側の頸部リンパ節に転移することが多いのですが、舌がんでは両側に転移することもあります。

検査と診断

 診断には生検(病変の一部を採取して顕微鏡で調べること)を行い、組織学的に確定します。がんと確定した場合には、さらにCT、MRI、超音波、PETなどの画像診断を行い、進行度(病期)を決定します。進行した舌がんの診断は視診でも容易ですが、初期がんでは他の病変との鑑別が困難な場合があります。
 潰瘍型では外傷性潰瘍との鑑別が必要で、その原因が歯や補綴物(ほてつぶつ)の鋭端あるいは咬傷などによるものであれば、原因を除去すれば潰瘍は2週間以内に縮小あるいは消失します。
 膨隆型の場合には線維腫(せんいしゅ)、血管腫(けっかんしゅ)、リンパ管腫などの良性腫瘍と、肉芽型の場合は炎症性の肉芽と、白板型は白板症扁平苔癬(へんぺいたいせん)と、また乳頭型は乳頭腫との鑑別が必要です。
 また、触診で病変周囲の硬結(しこり)の有無を調べます。良性腫瘍では硬結はありません。炎症性肉芽では硬結は触れますが、その範囲は限られています。

治療の方法

 治療の主体は、手術か放射線治療になります。両者はほぼ同等の治療成績をあげています。初期がん(T1、T2症例)にはIr192、Au199による組織内照射を主体とした放射線治療を行います。また、術後に機能障害を残さないで完治が期待できる早期がんには手術が選択されます(舌部分切除)。
 初期がんでも頸部リンパ節に転移を認める場合には、頸部郭清術(かくせいじゅつ)(リンパ節を清掃する手術)とともに舌病変部を周囲の健康な組織も含めて切除します(舌部分切除、舌半側切除)。
 進行がん(T3、T4症例)や放射線治療の効果がない症例には、頸部郭清術とともに舌の広範切除を行います(舌亜全摘出、舌全摘出)。両側性リンパ節転移が疑われる場合には、両側の頸部郭清術を行います。
 リンパ節転移のない症例での5年生存率は85%と良い成績が得られていますが、リンパ節転移のある症例では不良です。舌がん全体での5年生存率は約60%です。

舌がんに気づいたらどうする

 前述した疑わしい病変を認めたら、ただちに口腔外科などの専門医を受診して、専門的な検査を受ける必要があります。
 また日ごろから、舌の側縁や下面を観察する自己検診も、早期発見につながる大切なことです。