不正咬合<歯と歯肉の病気>の症状の現れ方

 叢生によるいちばん大きな問題は、歯みがきがしにくく汚れがつきやすいため、歯周病(ししゅうびょう)やむし歯になりやすいことです。食べ物を効率よく噛めなかったり、外観上の問題から心理面に悪影響を及ぼすこともあります。
 乳歯列期の空隙歯列は正常です。とくに前歯はあとから生える永久歯のほうが大きいため、自然にすきまはなくなります。永久歯列になってもすきまがある場合、よく噛めなかったり、発音に支障が生じることがあります。
 前歯で物を噛みづらい、口を閉じにくくうまく発音しづらいといった症状や、上の前歯に外傷を受けやすくなる危険性があります。また、外観上の問題から心理面に悪影響を及ぼすこともあります。
 噛み合わせが反対になっているために噛む力が弱くなったり、サ行やタ行などが発音しづらくなることがあります。また、下あごが前に出ているため外観上の問題から心理面に悪影響を及ぼすこともあります。
 成長期においては、下の前歯に上の前歯が過剰におおいかぶさるので、下あごの前方への成長が妨げられたりすることもあります。また、下あごの前方や横方向への運動をスムーズに行うことができず、あごの関節の病気(顎関節症(がくかんせつしょう))の一因になる可能性があります。
 左右どちらか一方に交叉咬合がみられるような場合では、正面から見ると歯並びとともに下あご自体がずれていることも多く、顔が左右非対称になっている場合があります。また、あごの運動に制限が生じやすいので、あごの関節に負担がかかり、痛みや雑音などの症状がみられることもあります。

不正咬合<歯と歯肉の病気>の診断と治療の方法

 乳歯列期や乳歯から永久歯への生え変わりの時期(混合歯列期)には、永久歯の生える場所を十分確保するための治療を行います。永久歯列期の治療にはマルチブラケット装置(図5)がよく用いられ、歯並びのでこぼこを解消するための場所が十分得られない場合には、歯列弓(歯列の曲線)を拡大したり永久歯を抜歯したりすることもあります。
 歯科矯正治療によって得られた正しい噛み合わせを、その状態で維持する必要があります。このことを保定といいますが、保定を十分に行わないと不正咬合が再発してしまいます。噛み合わせが安定するまで、長期にわたり保定装置を装着します(図6)。
 一般的に乳歯列期の空隙歯列は正常なので、歯科矯正治療の必要はありません。
 永久歯列期になってもすきまが閉じない場合は、すきまを閉じる歯科矯正治療を行います。歯の幅が小さい歯(矮小歯(わいしょうし))があったり、歯の数が足りない場合は、歯科矯正治療だけでなく、人工の歯をかぶせたり、欠如歯を補う治療(補綴(ほてつ)治療)を組み合わせて行う場合もあります。舌の運動や機能異常によりすきまがみられる場合は、筋機能療法によって癖の改善を図ったり、タングクリブといった舌の突出を抑える装置を装着して治療を行うこともあります。また、舌が大きい場合にはごくまれにですが、舌縮小術といった外科的な治療を併用する場合もあります。
 あごの成長が旺盛な混合歯列期では、上あごと下あごの前後のずれがある場合、上あごの成長を抑制するヘッドギアー(図10)や、下あごの成長を促進させる機能的矯正装置を用いて治療します。
 あごの成長がほぼ終了した永久歯列期では、マルチブラケット装置を用いて治療し、必要に応じて歯を抜いたり、上あごの歯を後ろに動かすためにヘッドギアーを併用したりする場合もあります。近年、ヘッドギアーのかわりにインプラントを使うこともあります(図11)。上下のあごのずれが大きい場合は、外科手術を伴う矯正歯科治療が行われることもあります。
 幼少期に骨格性のあごの前後のずれがみられる場合、下あごの成長を抑制するチンキャップ(図14)、上あごの成長を促進させる上顎前方牽引(じょうがくぜんぽうけんいん)装置(図15)を用いて治療します。歯の位置に異常がある場合には、機能的矯正装置(図16)、床矯正装置やリンガルアーチ(図17)などの装置を用いて治療します。
 永久歯列期では、マルチブラケット装置による治療を行い、また、必要に応じて歯を抜いて治療をする場合もあります。あごのずれが大きい場合は、外科手術を伴う歯科矯正治療が行われることもあります。
 混合歯列期では、床矯正装置や機能的矯正装置を用いて噛み合わせを浅くすることがあります。永久歯列期には、マルチブラケット装置により前歯を骨のなかに押し込んだり、奥歯の高さを高くして噛み合わせを上にあげる方法をとります。最近では、インプラントを使用した矯正治療を行うこともあります。
 歯列弓の大きさの異常に対しては、機能的矯正装置や側方拡大装置を用いて上下の歯列弓の大きさと位置を整えていきます。
 上あごの歯列弓が狭い場合は、歯列弓を広げる必要があります。歯列弓の幅を広げる治療法には2つあります。
 ひとつは、急速拡大装置と呼ばれる装置を用いてあごの幅を広げる方法(図20)で、上あごの幅が狭い場合に行われます。上あごの骨は左右2つの骨が中央部で結合しており、その結合部を開くことにより上あごの幅を拡大します。一方、歯の傾きが内側に傾斜している場合は、緩徐拡大装置と呼ばれる装置で、歯を徐々に外側に傾斜させることによって歯列弓を拡大する方法(図21)が選択されます。
 骨の形に異常がみられる場合の治療は困難で、著しくずれている場合は、外科手術を伴う歯科矯正治療を行う必要があります。若齢者の交叉咬合を放置しておくと、顔やあごの成長・発育に悪影響を及ぼす場合があるので、できるだけ早期に矯正歯科医に相談してください。