食道神経症とはどんな病気か

 食道神経症とは、常に食道の異和感、存在感あるいは胸痛などを訴え、何か食道に病気があるのではないかという不安を主な特徴とする心理状態をいいます。現在では診断技術が普及しており、ほとんど使用されない名称です。

原因は何か

 患者さんが不安をもつ食道由来の胸部異和感や胸痛を訴える症例の多くは、胃液が食道に逆流して起こる胃食道逆流症が原因です。そのほかに食道運動機能異常、食道知覚過敏、精神疾患との関連がありますが、これらが単独で存在するよりも相互関係で成り立つことが多いようです。

検査と診断

 診断のためには、まず心電図や心臓エコー検査を行って心臓疾患を否定します。次に内視鏡検査で食道を調べます。ここで胃食道逆流症による食道粘膜病変の存在が確認できます。
 逆流性食道炎が確認されれば、そのまま治療に入ります。通常は酸分泌抑制薬の内服が選択されます。この前段階の対応として、内視鏡検査を嫌がる患者さんが胸やけを訴えている場合には、試験的に酸分泌抑制薬を服用することもあります。
 問題は前記の検査で胃食道逆流症が証明されない場合であり、この際には、食道内酸逆流の程度を食道内腔に設置したpHセンサーで証明する方法が最も確実です。最近では、鼻から挿入する有線型のセンサーではなく、食道内に固定する無線式のものが、開発され今後は患者さんも受け入れやすい検査法になっていくと思われます。
 以上の病変が食道の内視鏡検査や食道内のpHのモニタリングで観察されない場合は、一般的に心臓の精密検査が行われます。この目的は主に虚血性(きょけつせい)心疾患の診断です。24時間心電図、負荷心電図、あるいは心臓の冠動脈造影で異常がみられる場合には、心疾患の治療を行います。また、胸部CT検査で、肺や縦隔の検査を行うことも望ましいです。これらすべての検査で異常が認められない場合、骨格筋由来の胸痛の検査に入ることもあります。
 最近では心臓に異常を認めない、非心臓性胸痛(NCCP)という概念が普及しています。特別に食道の知覚過敏を認める疾患は確かにありますが、現在のところ詳細は不明です。
 NCCPの約半数は胃食道逆流症によるものと考えられています。したがって、最も専門的な治療経験が要求される食道神経症を、いたずらに精神的なもの、気のせいと自己判断することは禁物です。順序を追った検査体制で診断を進めていくことが大切です。