直腸がん<直腸・肛門の病気>の症状の現れ方

 最も多いのは血便です。そのほかには排便に伴う症状が出やすいのが特徴で、便秘、便が細くなる、テネスムス(排便がなくてもたびたび便意を感じる症状)、腹痛などが主な症状ですが、かなりの進行がんになるまでまったく症状がない場合も少なくありません。
 直腸がんは痔核(じかく)と間違えられることも多く、腹部の膨満感(ぼうまんかん)が強くなったり、腸閉塞(ちょうへいそく)になり、やっと発見される場合も少なくありません。直腸がんは、専門家が診察すれば比較的簡単に診断がつくため、このような症状が認められたら、必ず大腸肛門科を受診することをすすめます。

直腸がん<直腸・肛門の病気>の診断と治療の方法

 一般的には腫瘍の切除が必要になります。直腸では、がんの浸潤の程度と、肛門括約筋との位置関係が手術方法を決定するうえで重要です。
 小さい腫瘍の場合は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)が行われます。
 腫瘍が大きく、進達度(粘膜下へのがんの広がり)が浅い場合は経肛門的切除が行われます。肛門から約8cmまでは経肛門的に切除できます。
 それ以上の場合は、経肛門的に内視鏡と腹腔鏡(ふくくうきょう)用の鉗子(かんし)を用いた手技(TEMUS、TESなど)での切除を選択できます。熟練した外科医が行えば肛門から20cmまでが対象になります(どの施設でもできるものではありません)。
 また、内視鏡治療処置具の進歩がめざましく、最近では、大腸粘膜にとどまる早期がんであれば、大きなポリープでも内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という新しい内視鏡治療が可能となりました(保険で認められていませんが、専門病院では施行している施設もあります)。
 それ以上の直腸がんでも、症例によっては腹腔鏡下直腸切除術が適応となります(これもどの施設でもできるものではありません)。
 いずれの場合も、切除した標本におけるがんの病理検査(分化腺がんか低分化腺がんか)と壁浸潤度により根治性が決定されます。
 直腸の進行がんで部分切除では根治の可能がない場合、または部分切除で不十分であった場合は、一般的には開腹による直腸低位(高位)前方切除術またはマイルズ手術が選択されます(図1)。
 前方切除術は、直腸がんを切除後にS状結腸と直腸とをつなげる手術です。肛門から腫瘍を触れなければ、ほとんどの場合、人工肛門にはしません。しかし、病変の広がりや患者さんの全身状態により、人工肛門を選択する場合もあります。肛門は残しますが全身状態などから負担を少なくするために人工肛門にする場合は、ハルトマン手術といわれています。
 一方、マイルズ手術は、がんが肛門に近い場合やがんの浸潤により肛門括約筋を温存できない場合などに選択されます。一般的には肛門と直腸を切断後、左下腹部にS状結腸による人工肛門を造設します。
 直腸低位(高位)前方切除術またはマイルズ手術が行われた場合、手術後に機能的な問題として性機能障害、排尿障害、排便障害の問題が生じることがあります。最近では、より障害が少ない骨盤神経叢(そう)をなるべく温存する手術が選択されることが多くなってきています(どの病院でもできるものではありません)。
 直腸がんの手術で、可能な限り人工肛門を作らない手術としての直腸低位前方切除術はさらに進歩し、最近では超低位前方切除術とか、内肛門括約筋切除術(ISR)といった手術が行われる施設があります(図3)。しかし、根治性と排便障害の問題があり、専門施設でしか行うことはできません。
 直腸がんに使われる抗がん薬にはさまざまなものがあります。手術でがんをすべて切除しても、約17%に再発が起こります。再発を抑える目的で行う化学療法(抗がん薬)を補助化学療法といいます。また、がんをすべて取りきれなかった場合や、明らかに再発した場合、積極的に行う化学療法があります。
 現在のところ、化学療法で、術後の生存期間が延長することが証明されている治療がありますが、生存率を改善するのに有効な方法は確立されていません(化学療法で直腸がんを治すことはできません)。しかし、フルオロウラシル(5‐FU)を中心としたロイコボリン(LV)5‐FU療法や、イリノテカン(CPT‐11)、オキサリプラチン(OHP)製剤などに延命効果が認められており、今後に期待されています。
 化学療法は、いろいろな薬を組み合わせて使用することにより年々延命効果もよくなっています。現在では、FOLFOXFOLFORI療法が世界的にも標準治療となっています。また最近では、ベバシズマブ(アバスチン)、セツキシマブ(アービタックス)などの、がんを成長させる因子に対するモノクローナル抗体(分子標的治療薬)が使われるようになり、これらを組み合わせることにより、いっそう延命効果が得られるようになってきています。抗がん薬を使わない場合と比べて、4倍ほどの延命効果が得られています。
 放射線照射は、切除不可能なものを切除可能にするなど、ある程度の効果が認められてはいますが、生存率が向上したという報告はありません。