原発性胆汁性肝硬変<肝臓・胆嚢・膵臓の病気>の症状の現れ方

 慢性の肝内胆汁うっ滞の結果として、初発症状としては皮膚のかゆみが最も多く、黄疸(おうだん)がこれに続きます。このような症状がみられる場合を「症候性原発性胆汁性肝硬変(しょうこうせいげんぱつせいたんじゅうせいかんこうへん)」と呼びます。黄疸がいったん現れると、消えることはなく少しづつ増えることが多いようです。そのほか、脂質異常症高脂血症)に由来する皮膚の黄色腫(おうしょくしゅ)(もしくは黄色板)、肝腫大、カルシウムとビタミンDの吸収障害による骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などを伴います。
 また、門脈圧亢進症状が高頻度に現れるため、食道静脈瘤(しょくどうじょうみゃくりゅう)とその破裂による出血もみられます。少数ですが、肝硬変になる前から門脈圧亢進が先行して、食道静脈瘤や脾腫(ひしゅ)による血小板減少を伴って、最初に食道静脈瘤で発見されたり、また、その破裂による消化管出血を初発症状とする患者さんがいます。
 長期の胆汁うっ滞が続くと、最終的には胆汁性肝硬変となり、高度の黄疸、腹水、浮腫、出血傾向、門脈圧亢進に関連する脾腫、血小板減少症など、通常の肝硬変の肝不全時にみられる症状が現れるようになります。
 一方、皮膚のかゆみや黄疸などの症状が認められない場合は「無症候性原発性胆汁性肝硬変」とされます。
 最近では、新たに診断される人のほぼ3分の2は無症候性であり、その多くは検診あるいは他の病気の治療中に偶然発見されています。無症候性と診断された人の多くは症状が出ないまま経過することが知られていますが、どの患者さんがやがて進行して症候性になるのか、また無症候性のまま経過するのかは臨床的に判別することはできません。

原発性胆汁性肝硬変<肝臓・胆嚢・膵臓の病気>の診断と治療の方法


(1)日常生活と食事
 診断が確定したあとは、定期的な検査を行って経過観察をする必要があります。無症候性の場合はもちろん、症候性であっても、症状が比較的落ち着いていたり、ウルソデオキシコール酸(UDCA:ウルソ)などの服用で経過が良好な場合も、同薬剤の服用を続けながら普通の日常生活が可能です。
 食事は銅含有量の多い食品(貝類、レバー、キノコ類、チョコレートなど)を避け、胆汁分泌が不良であることを考慮して、脂肪をとりすぎないように注意します。とくに黄色腫や高コレステロール血症が明らかな場合には、高脂血症に準じた食事療法が大切です。
 骨粗鬆症は中年以降の女性では注意が必要なので、カルシウム、リン、亜鉛などのミネラルの摂取と適度な運動による骨塩量の減少予防対策が重要です。

(2)薬物療法(表10
 確立した治療法はありませんが、そのなかで有用性が認められているのはウルソデオキシコール酸(ウルソ)と肝移植療法です。そのほか、対症的に、高脂血症にベザフィブラート(ベザトールSR)の内服を、皮膚のかゆみにコレスチミド(コレバイン)や抗ヒスタミン薬(ポララミン、ジルテックなど)の内服を、そしてビタミン吸収障害に脂溶性ビタミン製剤(A、D、K)の注射などで、それぞれ投与します。
 コルチコステロイド(副腎皮質ホルモン薬)は、初期の原発性胆汁性肝硬変や自己免疫性肝炎を合併している場合に適応されますが、長期に服用すると骨粗鬆症を悪化させます。眼の乾燥、口腔乾燥などのシェーグレン症候群に対しては、対症的に人工涙液・唾液などを用います。
 原発性胆汁性肝硬変に対するUDCA療法では、治癒するという報告はありませんが、血液生化学検査ではALP、γ‐GTP、総ビリルビン、トランスアミナーゼなどが改善するとされています。アルブミンや凝固能は変わりません。また、皮膚のかゆみや全身倦怠感(けんたいかん)などの自覚症状は変わらないという報告が多くみられます。最も重要な肝生検組織像や生存率に及ぼす影響については、一致した見解はありません。
 UDCA療法が普及して十数年が経過して、この病気の生存率は改善されてきたような印象を受けます。しかし、実際には経過がゆっくりであり、また患者さんによって進行がさまざまなので、肝組織や生存率の改善の効果判定には、多数の患者さんについてより長期に観察する必要があると思われます。
 最近、高脂血症治療薬のベザフィブラートには、胆汁うっ滞による胆管障害とそれに伴う炎症の改善、免疫調整作用など多様な効果があることが明らかにされています。ベザフィブラート単独、もしくはUDCAとの併用療法が肝内胆汁うっ滞の改善に有効との報告があります。

(3)肝移植(かんいしょく)
 原発性胆汁性肝硬変は肝移植のよい適応疾患です。日本では、欧米と異なって脳死肝移植はまだ少数で、生体部分肝移植が行われることが多くなっています。
 米国のピッツバーグ大学における脳死肝移植の成績では、原発性胆汁性肝硬変を含む胆汁うっ滞性肝硬変は、適切な移植時期を選択することで移植後の5年生存率は70%を超えています。移植時期を決定するための予後予測モデルが開発されていますが、病期の進んだ患者さんでは移植後の生存率は低くなっています。