いろいろな病気を治すために薬は使われます。しかし、薬はのんだ人の体質によっては、薬として期待する作用以外の好ましくない作用を体に及ぼすことがあり、これを副作用といいます。過去に報告された副作用の原因となる薬では抗生剤が最も多く、鎮痛薬などを含む中枢神経作用薬や細菌などを排除する抗生物質などがこれに続きます。
 薬物が原因で起こる肝障害を薬物性肝障害と呼び、大きく分けて中毒性のものとアレルギー性のものとがあります。
 現在、日本で使われている薬剤は安全確保のため厳しい安全基準が定められており、使用量や使用法を間違えることがなければ中毒性肝障害を来すことはまれです。しかし、食品に分類されるサプリメントややせ薬、ハーブを含む自然食品ではこのような安全性の確保や注意事項の表示が義務づけられていないため、それ自身がもともと含む成分や意図的に添加された薬物により、しばしば中毒性肝障害が起こったり、死亡例が出るなど社会問題になっています。
 このため最近では「薬剤性肝障害」という言葉を使うのをやめ、「薬物性肝障害」と呼ぶようになり、日本肝臓学会で「薬物性肝障害」の診断基準の改定が行われました。

薬物性肝障害とはどんな病気か

 アレルギー性の機序(仕組み)によるものが薬物性肝障害の大半を占めます。副作用を生じる人は特定の薬物に対する感受性が高いのですが、最初に使用する前に副作用が生じることを予測をすることは困難です。これに対し、中毒性肝障害では薬物そのものがそもそも肝臓毒であり、一定の量より多ければ必ず肝障害を来すものです。
 軽症の場合は自覚症状がなく、血液検査でAST(GOT)やALT(GPT)と呼ばれる肝細胞からの逸脱(いつだつ)酵素、ALPと呼ばれる胆道系酵素やビリルビンの値が高値を示すのみですが、重症化すると全身の倦怠感(けんたいかん)や吐き気、嘔吐、黄疸(おうだん)などを来し、肝不全(かんふぜん)から死亡に至ることもしばしばです。

原因は何か

 薬物の多くは肝臓で代謝(解毒)されて、胆道あるいは腎臓から排泄されるので、多くの中毒性肝障害は肝臓の代謝能力を上回る量の薬物を服用することで起こります。自殺目的の服薬や、サプリメント、やせ薬、ハーブを含む自然食品が原因になることが知られています。
 一方、アレルギー性肝障害は肝臓で薬物が代謝されたあとに、自分の体内にはない異物と認識されてアレルギー反応が起こり、肝細胞障害が生じることが原因です。アレルギー性肝障害は少量の服用で起こり、以前に服用していて大丈夫であった薬でも、何かのきっかけで突然アレルギー反応を起こすことがあります。

症状の現れ方

 副作用は服用開始後、1〜4週以内に起こることが多く、60日以内にそのほとんどが観察されます。薬物性肝障害の大半を占めるアレルギー性肝障害の初期症状には、発熱や皮膚症状(発疹、発赤、かゆみ)、黄疸などがあります。
 ウイルス性肝炎でもこれらの症状を認める場合があり、症状だけから見分けることはできません。初期症状に気づいた時点でただちに服薬を中止することが大切で、中止が遅れると不可逆的な病変や致死的病変を来すことがあります。
 また、自覚症状に乏しいことも多く、血液検査で初めて気がつくこともしばしばです。新しい薬やサプリメント、やせ薬、ハーブを含む自然食品をとり始めた場合には、定期的な肝機能検査を行い、薬物性肝障害の早期発見に努めます。

検査と診断

 血液検査でASTやALTと呼ばれる肝細胞からの逸脱酵素、ALPと呼ばれる胆道系酵素やビリルビンの値が高値を示すことがしばしばです。しかし、時にはこれらの異常を来すことのない肝障害もあります。アセチルサリチル酸やバルプロ酸による肝障害がこれにあたります。
 偶然の再投与により肝障害が再び起こった時には、その薬物が原因であるということが確実に診断できます。しかし、最初の服用の場合、診断の多くは除外診断に基づきます。
 肝障害を発見したら、(1)ウイルス性やアルコール性肝障害である可能性が低いこと、(2)薬物性肝障害の可能性の高い薬物(薬やサプリメント、やせ薬、ハーブを含む自然食品)の服用開始後比較的早期であること、(3)末梢血で白血球の増加を認めたり血液像で6%以上の好酸球の増加を認めることなどを参考に、薬物性肝障害を疑います。
 採血したリンパ球を用いた薬物による刺激試験もありますが、その有用性は高くありません。それは薬物性肝障害の場合、薬物そのものが原因となることはまれで、多くの場合は肝臓で代謝される過程で生じる中間代謝産物が原因となるからで、リンパ球を用いた薬物による刺激試験では、このような中間代謝産物に対するアレルギー反応を検出できないからです。

薬物性肝障害に気づいたらどうする

 漫然と服用を続けると、かつて問題になった「やせ薬」のように、7日間の服用で「肝移植しか治療法がない」といった状況になることもあるので、すみやかに服用を中止するのが原則です。
 なお、抗がん薬や抗不整脈薬のように最初から肝障害が予想されるものについては、薬物の必要性の程度が症例ごとに異なります。「木をみて森を見ず」にならないように、前もって主治医とよく相談して、経時的に副作用の出方とその程度を観察する必要があります。