膵石症<肝臓・胆嚢・膵臓の病気>の症状の現れ方

 慢性膵炎の痛みは、膵管や膵組織内圧の上昇、疼痛関連物質の産生、神経の変性、膵仮性嚢胞(すいかせいのうほう)の形成、胆管狭窄(たんかんきょうさく)などの要因が、さまざまに組み合わさって生じると考えられています。このうち膵石症の場合は、膵石が膵管内にはまり込むことによる膵液の流出障害が痛みの主な原因と考えられています。典型的な患者さんでは、飲酒後や食事後の腹痛、背部痛として現れます。
 膵石症に伴う腹痛は、比較的起伏に乏しい持続性の痛みであることが多いとされています。痛みは前屈位(ぜんくつい)(前かがみ)で軽くなることが多いため、腹痛増強時には独特の前かがみ姿勢をとる傾向があります。このほか、吐き気、嘔吐、食欲不振、体重の減少などがみられます。
 慢性膵炎では、膵炎発作を繰り返すことにより膵外分泌機能、膵内分泌機能の障害が進行します。慢性膵炎が進行して膵外分泌機能、膵内分泌機能が損なわれてくると腹痛症状は軽くなり、代わりに耐糖能障害(たいとうのうしょうがい)や消化吸収障害に伴う栄養障害が現れてきます。
 従来、膵石症は慢性膵炎の終末像にみられる病態と考えられていましたが、「どんな病気か」でも述べたように、膵石が急性炎症の原因と考えられる場合もあり、膵石が現れたからといって必ずしも腹痛がおさまる兆候とはいえないところがあります。
 また、慢性膵炎膵がんの高危険群とされていますが、とくに膵石症からの発がんの頻度は高く、健常人の20〜30倍(年率1%程度)といわれていますので、膵がんによる腹痛や体重減少などにも注意が必要です。

膵石症<肝臓・胆嚢・膵臓の病気>の診断と治療の方法

 基本は、禁酒と食事療法、そして薬物療法です。症状が落ち着いてる時でも、膵液分泌刺激の少ない低脂肪食を心がけます。腹痛症状の強い時には、膵臓を守るために食事を止め、点滴もしくは高カロリー輸液で栄養を補給し、膵酵素(すいこうそ)(トリプシン)の阻害薬や鎮痛薬などにより急性炎症を抑えます。これらの治療によっても腹痛症状が長引いたり安定しない場合には、膵石に対する治療が検討されます。
 治療の対象になる膵石は、主膵管内にあり、膵液の流出障害になっていると考えられる場合です。ここで主膵管というのは、膵液を十二指腸に運ぶ導管(膵管)のうち、膵臓の尾部に始まり、十二指腸主乳頭に至る最も太い膵管のことです。
 通常、膵液の流出障害があると、その部位より上流の主膵管が太くなります。ちょうどホースから水を流しているときに出口近くを狭めると、ホースの手前部分(蛇口側)の圧が上がってホース全体がふくらんでくるのと同じ現象が膵管にも起こります。このような状態では、多くの場合腹痛症状を伴っています。
 膵石治療は入院したうえで、急性炎症がおさまってから行います。現在、日本で保険診療として認められているのは手術のみですが、その他の治療についても普及しつつあり、実際に、ガイドラインでも有用な治療法として推奨されています。

(1)体外衝撃波結石破砕療法(たいがいしょうげきはけっせきはさいりょうほう)(ESWL)
 ESWLとは、体外から結石に対して衝撃波を当てて細かく砕く(破砕)治療法です。臨床的には尿路結石(にょうろけっせき)の治療にまず導入され、次いで胆石の治療に応用されました。現在では膵石治療の第一選択と位置づける施設が多くなっています。
 治療の実際は、衝撃波発生装置と一体化した治療テーブルの上に寝た状態で、X線透視もしくは超音波映像下に膵石に照準を合わせて衝撃波を当てて破砕します。1回の治療時間は約1時間で、十分な破砕効果を得るために適宜、鎮痛薬を使用します。
 治療後は、腹痛がなければ、当日ないし翌日から食事をすることが可能です。治療翌日の腹部単純X線検査で膵石の破砕効果を確認し、消失ないし3mm程度に小さく破砕されるまで週2、3回のペースで繰り返し行われます。平均4、5回の治療が必要です。治療に伴う膵炎の増悪を5%程度に認めますが、ほとんどが軽症で、重い合併症は少ないとされています。
 膵石症の患者さんの場合、膵石がある部位よりも下流(十二指腸側)の主膵管が炎症により狭くなっている(狭窄)ことが多いため、ESWL単独での治療(排石)効果は必ずしも十分でないことがあります。そのような場合には次に述べる内視鏡治療を併用します。

(2)内視鏡治療
 内視鏡治療は、前述したERCPに引き続き行います。押し出すとバスケット型に広がるワイヤーをチューブ内に格納したバスケット把持鉗子(はじかんし)を、造影カテーテルの代わりに十二指腸乳頭から膵管内に挿入し、膵石をバスケットのなかに入れて十二指腸内に引っ張り出す治療法です。
 小さな膵石であれば、1、2回の内視鏡治療で排石できるので、治療効率の面からは優れた方法といえます。ただし、内視鏡単独で治療できる膵石は処置具が到達できる範囲内にあり、かつ保持できる大きさに限られます。このため、ESWLと組み合わせて膵石を細かい破砕片とすることにより相乗効果が得られます。
 このほか、膵管が狭くなっている部位をバルーンカテーテルでふくらませる方法(内視鏡的バルーン拡張術)や、十二指腸乳頭の膵管開口部を広げるため内視鏡的に切開する方法(膵管口切開術)などが、膵石の排石を補助する目的で行われます。また、膵管の狭窄が強い場合には、内腔を確保すべく、ステントと呼ばれるプラスチックの筒状の管を留置することもあります。

(3)外科手術
 外科手術には、炎症の強い部分を切除する膵切除術のほかに、切除を最小限にとどめ、膵管と小腸をつなぎ合わせる膵管減圧術などがあり、痛みに対する効果は同等とされています。ESWLや内視鏡治療と比べ、手術そのものの体への負担は大きいものの、術後の経過、とくに痛みの再発は少なく、ESWLや内視鏡治療でうまくいかない場合には、良い治療となりえます。