膵がんとはどんな病気か

 膵がんは、消化器がんのなかで最も予後不良のがんです。日本のがんにおける死因としては、男性では第5位、女性では第6位(平成18年人口動態統計)で、60歳以上(70代がピーク)の男性にやや多い傾向にあります。
 膵臓(すいぞう)は胃の裏側(背側)に位置し、十二指腸とくっついていて、脾臓(ひぞう)まで横に細長くなっている後腹膜(こうふくまく)の臓器です。ちょうど3等分して、右側(十二指腸側)を頭部、左側(脾臓側)を尾部(びぶ)、中央を体部と呼びます。
 予後不良の原因としては、後腹膜臓器であるために早期発見が困難であり、また極めて悪性度が高く、たとえば2cm以下の小さながんであっても、すぐに周囲(血管、胆管、神経)への浸潤や、近くのリンパ節への転移、肝臓などへの遠隔転移を伴うことが多いからです。
 膵がんは、十二指腸への膵液の通り道(膵管(すいかん))から発生したがんが90%以上を占め、ランゲルハンス島(膵島(すいとう))から発生したがんはまれです。3分の2以上は膵頭部に発生します。

原因は何か

 原因は明らかではありませんが、喫煙、慢性膵炎(まんせいすいえん)、糖尿病、肥満との関係が報告されています。

症状の現れ方

 食欲不振、体重減少、腹痛(上腹部痛、腰背部痛)などの症状以外に、膵頭部がんでは、閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)、灰白色便(無胆汁性)が特徴のある症状です。
 肝臓で作られた胆汁は、胆管を通って十二指腸へ排出されますが、胆管は膵頭部のなかを走行するため、膵頭部にがんができると胆管を圧迫したり閉塞したりして、胆汁の通過障害を起こし、閉塞性黄疸が現れます。
 また、膵管も胆管と同様に閉塞して二次性膵炎を起こし、耐糖能異常すなわち糖尿病になったり悪化することがあります。さらに進行すると十二指腸や小腸に浸潤し、狭窄(きょうさく)・閉塞を来し通過障害が起こります。
 一方、膵体部や尾部に発生したがんは症状があまり現れず、腹痛が現れるまでにはかなり進行していることが少なくありません。

検査と診断

 早期診断は非常に困難です。血液検査では、閉塞性黄疸に伴う肝機能異常や、アミラーゼ値の異常、血糖異常が認められることが多くあります。
 腫瘍マーカーとしては、CA19‐9、DUPAN2、SPAN1、CEAなどが異常(高値)を示します。しかし、ある程度の腫瘍サイズになるまでは産生量が少ないため、それほど高値にはならず、いずれも早期診断にはあまり役立ちません。
 スクリーニング検査(ふるい分け)としては、腹部超音波(エコー)、CT、磁気共鳴画像(MRI、MRCP)、内視鏡的逆行性膵管造影(ERCP)、内視鏡的超音波(EUS)、ポジトロン放射断層撮影(PET)などがあります。とくに閉塞性黄疸がある場合は、黄疸を減らす治療のために経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD)、内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)をすることにより、診断も可能です。
 区別すべき病気としては、粘液産生(ねんえきさんせい)性膵腫瘍(すいしゅよう)や黄疸の出現する病気(肝炎、胆石症胆管炎、胆管腫瘍、十二指腸乳頭部がん、腫瘤(しゅりゅう)形成性慢性膵炎自己免疫性膵炎など)があげられます。

治療の方法

 膵がんの根治を目指して、外科的切除術、放射線治療および化学療法(抗がん薬)が実施されています。現在、根治性が最も期待される治療は外科的切除術(膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除術)であり、可能なかぎり積極的に病巣だけでなく、その周囲も取り除く拡大手術が行われています。しかし、発見された時には、すでに進行していることが多く、切除可能なのは40%前後です。


 全切除後の5年生存率は10%ですが、ステージ別(がんの進行度を表す)では、表17のようになっています。いかに早期に発見して診断するかが、予後の改善につながります。
 切除が不能な場合は、放射線・化学療法を行う場合が多いのですが、生存中央値は4〜6カ月です。膵がんに対して、2001年に塩酸ゲムシタビン(ジェムザール)、2006年にティーエスワンが保険適応承認されたため、これらの抗がん薬を用いた化学療法が行われています。

膵がんに気づいたらどうする

 病気に気づいた時には、すでに進行していることが多いので、好発年齢(60歳以上)を過ぎたら定期的な検診をすすめます。
 早期発見が何よりも大切なので、(1)40歳以上で胃腸や胆道系の病変がなく、上腹部のもたれや痛みがある人、(2)やせてきて背部痛・腰痛のある人、(3)中年以後に糖尿病が現れた人や、糖尿病のコントロールが難しくなった人は、できるだけ早期にスクリーニング検査を受けてください。