多発性嚢胞腎<腎臓と尿路の病気>の症状の現れ方

 受診の原因となった自覚症状として、肉眼的血尿、蛋白尿(たんぱくにょう)、側腹部・背部痛、家族に多発性嚢胞腎患者がいる、易疲労感(いひろうかん)、腹部腫瘤(しゅりゅう)、発熱、浮腫(ふしゅ)、頭痛、吐き気、腹部膨満などがあります。
 最も大きな問題は進行性の腎不全ですが、すべての患者さんが腎不全になるのではありません。70歳まで生存したとして約50%で末期腎不全に陥り、透析療法が必要となり、透析導入の平均年齢は、男性52・3歳、女性54・5歳という報告があります。
 約8%の常染色体優性多発性嚢胞腎の患者さんに頭蓋内出血の既往がみられます。頭蓋内出血の危険因子として頭蓋内動脈瘤と高血圧がありますが、約10%の患者さんに頭蓋内動脈瘤を認めます。また高血圧の合併は約60%の症例で認められ、加齢や腎機能低下とともに増加します。その他の合併症として、肝臓、脾臓、膵臓、子宮、睾丸、精嚢に嚢胞が生じることが知られています。
 肝嚢胞により肝機能障害を来すことはほとんどありませんが、圧迫症状が問題となります。また心臓の弁の異常、大腸憩室(けいしつ)、鼠径(そけい)ヘルニア、総胆管拡張を来すこともあります。

多発性嚢胞腎<腎臓と尿路の病気>の診断と治療の方法

 嚢胞内出血や嚢胞内感染を来し、発熱や腰・背部痛などの症状が現れた場合は、安静とし、止血薬および抗生剤を投与します。
 進行性の腎不全に対しては、高血圧の管理(アンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬の投与など)を行います。高血圧の管理は、頭蓋内出血や心不全の予防としても重要です。
 また、上部尿路感染症に対してはすみやかに治療を行うことが大切です。肉眼的血尿に関しては、悪性腫瘍が否定できれば保存的に対処します。
 透析に至った患者さんの腹部膨満感を緩和する方法として、両側腎動脈塞栓術(そくせんじゅつ)が行われ、良好な成績が得られています。
 近年、バソプレッシン受容体阻害薬によって細胞内サイクリック‐AMP濃度を下げれば、腎嚢胞増大が抑制されることが動物実験で示され、バソプレッシンV2受容体拮抗薬の臨床試験が世界的規模で行われています。