水尿管症とはどんな病気か

  • 尿管が正常よりも拡張している病態をいいます。
  • 通常、腎杯(じんぱい)・腎盂(じんう)の拡張を示す水腎症(すいじんしょう)も伴っています。
  • 尿路の通過障害を来す病態があれば、水腎・水尿管症が生じます。

水尿管症の原因は何か

  • 腎細胞がん、腎盂・尿管がん、膀胱がん前立腺がん、尿道がんなどによるもののほか、他臓器腫瘍として胃がん、結腸・直腸がんなどの消化器がんによるもの、子宮がん、卵巣がんなどの婦人科がんなどによるものなどがあります。
  • これらの腫瘍が尿管・膀胱・尿道に浸潤(しんじゅん)した場合、尿路の通過障害を起こします。
  • (4)腎嚢胞(じんのうほう)の圧迫によるもの (5)炎症
  • 結核(けっかく)などによって尿管の狭窄(きょうさく)を来した場合 (6)交通事故や労働災害により、尿管・膀胱・尿道の通過障害を起こした場合 (7)手術に起因するもの
  • 泌尿器科的内視鏡手術である経尿道的前立腺切除術(TUR‐P)や経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR‐Bt)後の尿道狭窄や、経尿道的尿管砕石術(TUL)、尿管切石術などの術後の尿管狭窄があります。
  • また、消化器がんや婦人科がんの手術時の尿管損傷によるものもあります。
  • (8)尿道異物
  • 尿道内に故意に異物を挿入した場合 (9)その他
  • 後腹膜線維化症(こうふくまくせんいかしょう)(後腹膜の脂肪組織が板のように硬くなる原因不明の病気で、腎茎部(じんけいぶ)〜尿管・総腸骨(そうちょうこつ)動脈交差部〜腸骨動脈分岐部にかけて生じる)などによっても水腎・水尿管症が生じます。
  • 尿路の通過障害がなくても、尿流の停滞を示す病気によって水腎・水尿管症は生じます。
  • 代表的なものとして、膀胱尿管逆流現象神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)があります。
  • これらは尿路通過障害はありませんが、尿流の停滞を示すため尿管の拡張を起こします。
  • 神経因性膀胱は、脳・脊髄(せきずい)などの神経性疾患や糖尿病前立腺肥大症などによる長期の排尿障害の結果、膀胱の自律性収縮が損なわれ、著しい残尿を起こす病気です。
  • このような場合、運動障害だけでなく知覚障害も現れることがあり、尿意が感じられなかったり、膀胱容量が1000mlを超えても苦しくないことがあります。
  • そのため、膀胱の拡張が著しいわりには尿管へ圧が伝わらないために、水腎・水尿管症は比較的軽度なこともあります。
  • (10)巨大尿管
  • 逆流によるもの、閉塞によるもの、またこの両者によらない非逆流性・非閉塞性巨大尿管の3種類があります。
  • 非逆流性・非閉塞性巨大尿管は乳幼児に発見される先天性の病気で、尿管縫縮術(ほうしゅくじゅつ)などの手術療法が行われます。

水尿管症の症状の現れ方・検査と診断・治療

  • 病態が急激に起こった場合には尿管結石の症状と同様に、疝痛(せんつう)発作といわれる激烈な腰背部・側腹部・下腹部痛が生じます。
  • しかし、原因が先天的なものや腫瘍などの浸潤で徐々に生じた場合には、ほとんど自覚症状がない場合もあります。
  • 先天的な病気では、健診や人間ドックで指摘されるまでは気づかないこともあります。
  • そのため、先天的な病気による水腎・水尿管症は病態としては進行していることが多いのです。
  • (1)腎盂尿管移行部狭窄
  • 片側(左側に多い)または両側の腎盂と尿管の移行部の狭窄が原因で、男児に多く起こります。
  • 健診・人間ドックで指摘されるまで無症状なこともあり、発見時に著しい水腎症を示していることがあります。
  • 診断は、CTスキャンや静脈性腎盂造影と逆行性腎盂造影(膀胱鏡下に尿管口からカテーテルを挿入して造影する検査法)により行います。
  • 機能検査では、腎シンチグラム、レノグラムが行われます。
  • 形態的に水腎・水尿管症が改善し、腎機能の改善が得られる見込みがある場合には、年齢などを考慮して手術を行います。
  • (2)下大静脈後尿管(かだいじょうみゃくこうにょうかん)
  • 静脈系の発生異常によるもので、右尿管が下大静脈の後方を回旋するように走行する病気です。
  • これも健診・人間ドックで初めて指摘されることが多く、自覚症状はあっても右腰背部の鈍痛程度です。
  • 診断は腎盂尿管移行部狭窄と同様な検査を行います。
  • この場合も、水腎・水尿管症の程度、改善の見込み、年齢などによって手術するかどうかを決定します。
  • (3)後部尿道弁
  • 男児の後部尿道に弁状の膜ができる先天性の病気です。
  • 出生後まもなく排尿状態の不良(尿がしたたるようにしか出ない)や、著しい両側水腎・水尿管症(すいにょうかんしょう)のために腹部腫瘤(しゅりゅう)として気づかれることもあります。
  • このため、腎機能障害を起こしている場合もあり、まず腎機能改善の目的で腎瘻(じんろう)造設を行います。
  • そのあと、内視鏡下に小児用切除鏡で尿道弁を切除すると、水腎・水尿管症も改善します。
  • (4)尿路結石 (5)泌尿器科領域の悪性腫瘍
  • 腎細胞がんが尿管を圧迫した場合や、腎盂尿管がん・膀胱がん・前立腺がん・尿道がんによる尿路閉塞のため水腎・水尿管症を起こした場合などです。
  • 膀胱がんの場合には、膀胱・腎盂・尿管ともに同じ移行上皮でおおわれていて、約5%に腎盂尿管(じんうにょうかん)がんが合併します。
  • 腎盂尿管がんは後述のように、腫瘍による尿路通過障害を起こし、水腎・水尿管症を呈します。
  • このため、膀胱がんの場合にはCTや静脈性腎盂造影などでの上部尿路の検索が不可欠です。
  • 前立腺がんは、排尿困難・尿閉(にょうへい)(尿が膀胱から出ないこと)を起こすだけでなく、膀胱および下部尿管に浸潤すると、片側または両側の水腎・水尿管症を示します。
  • 尿道がんは比較的まれですが、尿閉による両側の水腎・水尿管症を示すことがあります。
  • 泌尿器科領域の悪性腫瘍の治療は、根治性がある(手術で治癒する)場合は根治術を行います。
  • 腎細胞がんでは根治的腎摘除(じんてきじょ)術、腎盂尿管がんでは腎尿管全摘除術、膀胱がんでは膀胱全摘除術が適応となります。
  • 尿閉以外で水腎・水尿管を起こす前立腺がんの場合は、進行がんなので、根治的手術は行わず、ホルモン療法と放射線治療を行います。
  • 尿路悪性腫瘍の進行がんの場合には、多剤併用の抗がん薬治療を行います。
  • また、腎後性腎不全(じんごせいじんふぜん)を来している場合には、腎瘻(じんろう)造設を行います。
  • (6)泌尿器科領域以外のがん
  • 胃がんの腹膜播種(はしゅ)・リンパ節転移・膀胱直腸窩(か)(腹腔内でいちばん底になる部位)での腫瘤(腫瘍)形成などにより、両側の水腎・水尿管症を起こします。
  • 両側性で進行した場合には、腎後性腎不全(両側尿管完全閉塞による腎不全)になることがあります。
  • 結腸・直腸がん、子宮がん、卵巣がんでは、膀胱または尿管への直接浸潤により尿路閉塞を生じ、同様な症状を示します。
  • 診断は超音波、CT、MRIを用いて行います。
  • 悪性腫瘍が浸潤した場合は、尿管ステント留置または腎瘻造設術を行い、腎後性腎不全の改善を図ります。
  • (7)腎嚢胞
  • 腎細胞がんと同様に尿管を圧排した場合に、水腎・水尿管症を起こすことがあります。
  • (8)結核
  • 現在では少なくなっていますが、尿路結核がみられることがあります。
  • 長期の炎症の結果、腎杯頸部(けいぶ)の狭窄、腎盂尿管移行部の狭窄、尿管全体の狭窄、膀胱萎縮(いしゅく)が生じ、水腎・水尿管症を起こします。
  • 抗結核薬による治療後に狭窄が認められることもあります。
  • (9)外傷によって尿管の損傷を来した場合
  • この場合も水尿管症を示します。
  • 尿管ステント留置、尿管拡張、尿路再建などの処置を行います。
  • (10)泌尿器科手術により尿路損傷を生じた場合
  • 経尿道的に処置することが多く、尿道拡張、尿管拡張、尿管ステント留置を行います。
  • 消化器や婦人科での手術中に尿管を損傷した場合は、尿管が完全断裂していることもあります。
  • この場合は尿管の端々吻合(たんたんふんごう)(切断端同士を吻合する)、尿管ステント留置が必要になります。
  • 術中に尿管損傷に気がつかない場合、患者さんは術後、腰背部の鈍痛を訴え、腎超音波を行って初めて水腎・水尿管症が判明することがあります。
  • この場合、尿路の近くに尿がもれて尿瘤(にょうりゅう)を形成したり、感染を合併している場合は発熱や炎症所見を示すこともあります。
  • 膿瘍(のうよう)を形成した時は、抗菌薬投与とドレナージ(膿排出の処置)を行います。
  • (11)後腹膜線維化症(こうふくまくせんいかしょう)
  • 原因不明の尿管を圧迫する病気で、水腎・水尿管症を呈します、時に膠原病(こうげんびょう)を合併していることもあります。
  • ステロイド薬の投与で改善する場合や、尿管ステントを留置して水腎・水尿管症を改善させる方法があります。