前立腺肥大症<男性生殖器の病気>の症状の現れ方


(1)第1病期(膀胱刺激期(ぼうこうしげきき))
 尿道の奥や会陰部(えいんぶ)の不快感、夜間の排尿が2回を超える頻尿(ひんにょう)、尿意を感じるとがまんができない尿意切迫感、尿が出始めるまでに時間がかかる、尿線が細く、尿が出終わるまでに時間がかかるなどの症状がみられる時期をいいます。

(2)第2病期(残尿発生期(ざんにょうはっせいき))
 前立腺腺腫が大きくなり排尿困難の程度が増すと、膀胱にたまった尿を排出しきれなくなり、残ってしまいます。これを残尿と呼びます。残尿があると細菌感染が起こりやすくなり、また膀胱内に結石ができやすくなります。出血(血尿)することもあります。過度の飲酒や冷え、長時間座りっぱなしでいること、などにより突然尿が出なくなってしまう(尿閉)ことがあります。

(3)第3病期(完全尿閉期(かんぜんにょうへいき))
 さらに前立腺腺腫が大きくなると、膀胱排尿筋(ぼうこうはいにょうきん)の収縮作用では尿の排泄ができなくなってしまいます。膀胱は常に高度に拡張して残尿量が300〜400ml以上になり、膀胱内圧に負けて尿が絶えず少量ずつもれ出してしまうようになります。このようになると腎臓からの尿の流れも妨げられて、腎機能障害を起こしてきます。
 このように前立腺肥大症では尿の勢いが悪くなることに伴い、さまざまな症状が現れます。1992年に米国泌尿器科学会で提唱された国際前立腺症状スコア(表1)に基づき、いろいろな自覚症状をアンケート形式で患者さんに聞いて点数化し、病気の重症度を評価します。

前立腺肥大症<男性生殖器の病気>の診断と治療の方法

 前立腺がんとの区別が最も大切なことです。がんの可能性が否定されれば、前立腺肥大症に対していろいろな治療法があります。症状の程度とそれによってどのくらい患者さんが困っているかにより治療方法が決定されます。日常生活上、困っていなければ治療の必要はありません。すなわち治療しないで経過を観察するのも選択肢のひとつです。

(1)手術
 手術には大きく分けて2つの方法があります。下腹部を切開して腫大した前立腺腺腫を摘出する方法(開腹手術)と、尿道から内視鏡を挿入して前立腺腺腫を切除する方法(TUR‐P、TUEB)があります。TUR‐Pは前立腺をかんなで削るように少しずつ内視鏡で切除します。TUEBは前立腺腺腫を一塊として内視鏡で剥離摘出します。前立腺肥大症のために、繰り返す尿閉、膀胱結石の形成、出血を繰り返す、治療困難な尿路感染、腎機能障害のいずれかを認める場合は手術をすすめます。開腹手術は大きな前立腺腺腫に対して選択されます。
 手術により最大尿流量率は2〜3倍になり、最も治療効果が期待できる治療法です。

<レーザー手術>
 レーザー手術は術中の出血が少なく、入院期間が短い、低侵襲(ていしんしゅう)な手術として考案されました。レーザー手術には、レーザー照射により前立腺腺腫を凝固壊死あるいは蒸散させる方法(ILCP、HoLAP、PVP、など)と、レーザーを用いて前立腺腺腫を摘出する方法(HoLEP)とがあります。いずれも内視鏡で行います。凝固あるいは蒸散させる方法では、出血が少なく入院期間が短いという利点はありますが、大きな前立腺腺腫には不向きです。HoLEPは手術の項に記載したTUEBをレーザーを使って行う治療です。

(2)薬物療法
 前立腺部の尿道の圧迫を緩(ゆる)める作用をもったα1ブロッカーと、腫大した前立腺を縮小させるアンチアンドロゲン薬と5α還元酵素阻害薬、植物製剤、漢方薬があります。
 α1ブロッカーはもともと降圧薬として使われていた薬剤から開発されました。効果がすみやかに発現しますが、立ちくらみ、射精障害などの副作用があります。アンチアンドロゲン薬は効果発現までに1〜2カ月かかります。男性ホルモン値を若干低下させる作用があり、インポテンツなどの副作用があります。5α還元酵素阻害薬は男性ホルモンの活性化を阻害する薬剤で、性欲減少、勃起障害の副作用があります。しかし、いずれも安全性の高い薬剤です。
 植物製剤、漢方薬は切れ味は今ひとつですが、副作用の心配はほとんどありません。

(3)その他の治療法

a.尿道ステント
 心臓や肺の合併症のため麻酔をかけることが危険な患者さんのために、狭くなっている前立腺部尿道に筒状の形状記憶合金のメッシュ(ステント)を置いて、尿の通り道を確保する方法です。簡単に留置できますが、結石の形成、感染、出血などの合併症をみることがあります。

b.導尿(どうにょう)
 尿閉となって手術をすすめられたがどうしても手術はいやという方や、手術が危険で不可能という場合には、やむを得ずカテーテルという管を尿道から膀胱に通します。常時カテーテルを留置する方法と、間欠的自己導尿(かんけつてきじこどうにょう)といって尿意をもよおした時に自分で(あるいは介護者により)管を通して導尿する方法とがあります。