停留精巣とはどんな病気か



 停留精巣は陰嚢(いんのう)内に精巣(睾丸(こうがん))が触れない状態をいい、男児の生殖器の異常としては最も多い疾患です。もともと精巣は胎児期には腹腔内に存在し、胎生3カ月ころに下降し始め、30〜32週までに陰嚢内に降りてきます。これが途中で留まった状態が停留精巣です(図8)。
 新生児の3〜5%に認められますが、生後6カ月ころまでは自然に下降してくる場合があり、1歳では1%に減少しますが、それ以降は自然に下降してくることはありません。低出生体重児や早産児では、発生頻度が高くなります。

原因は何か

 精巣は卵巣と同じく生殖腺原基から発生します。ところが精子は卵子と違って体温より2〜3℃低い環境でないとうまく形成されません。そのため、体内よりも多少温度の低い体外に近い陰嚢まで降りてくる必要があるわけです。
 下降してくる過程の機序(仕組み)に関しては、胎児の精巣が形成され男性ホルモンの産生が始まる時期に一致して精巣の下降も始まること、精巣はあっても男性ホルモンの産生または作用に傷害があるような特殊な症例で停留精巣が生じることから、胎児期の男性ホルモンの関与が示唆されていますが、詳細は不明です。

症状と診断

 検診で見つかることが多いのですが、両親が気づくこともあります。注意深く陰嚢を触ると精巣が触れますが、乳幼児期は精巣についている筋肉(挙睾筋(きょこうきん))が過敏で、反射的に収縮して精巣が陰嚢内にあったりなかったりしてわかりづらくなります。
 入浴後など緊張がとれた状態になると降りているのは移動性精巣と呼び、基本的に治療の必要はありません。入浴後に何回か触ってみて触れない場合には、泌尿器科の専門医に相談します。
 専門医が何回か診察して精巣が触れない場合には、腹腔内に精巣があるか精巣が欠損している可能性があります。この場合はCT、MRIやエコー(超音波)で精巣の場所を調べる方法もありますが、診断精度が低かったり侵襲(しんしゅう)が大きいので、一般的には行われていません。最近では腹腔鏡による診断と治療も行われるようになっています。

治療の方法

 停留精巣には男性ホルモンが関係しているらしいと述べました。実際、ヨーロッパではホルモン療法が行われる場合もありますが有効率は低く、治療法としてはまだ議論があり、日本では行われていません。現在のところ、手術療法が一般的です。
 前述のとおり、自然に下降するのは6カ月まででそれ以降は降りてくることはないので、1〜2歳ころに手術をするのが一般的です。

関連する障害・病気

 停留精巣では、外見上の問題のほかに将来起こりうる障害に次のようなことがあります。
鼠径(そけい)ヘルニア、精巣捻転(ねんてん)
 停留精巣では高い率で鼠径ヘルニアを合併しています。
 また、精巣が陰嚢にしっかりと固定されていない状態では精巣の血管がねじれやすく、いわゆる精巣捻転を起こしやすくなります。
不妊症
 停留精巣の男性では精巣の位置が高くなるほど、また年齢が高くなるほど精子形成の障害が強くなり、早期の手術がすすめられます。片側の場合は、手術を行っても妊娠率に差はほとんどないといわれています。
精巣腫瘍
 精巣腫瘍は10万人に1人のまれな病気ですが、停留精巣の患者さんでは発生率が40倍高くなります。停留精巣を早期に手術しても、悪性化の予防にはならないと考えられますが、精巣が陰嚢内に降りていれば、自分でも腫瘍の発見が可能になります。

手術の方法

 開腹の場合は鼠径部に3cmほどの切開を加え、精巣にくっついている血管や精管を剥離(はくり)すると、陰嚢まで伸びてきます。陰嚢に1cmの切開を加えて精巣を陰嚢内に糸で固定します。1時間以内ですみます。
 腹腔内に精巣がある場合は、内視鏡を用いて手術をする施設もあります。