糖尿病白内障とはどんな病気か

 糖尿病白内障は糖尿病による眼の合併症のひとつで、眼のなかの凸レンズの役目をしている水晶体(すいしょうたい)が混濁(こんだく)する病気です。白内障は年齢とともに進行する病気で、軽度のものはほとんどの高齢者に認められます。糖尿病があると年齢以上に白内障が進行しやすい傾向があります。

原因は何か

 糖尿病が原因で糖尿病白内障が発症するわけですが、高血糖そのものが原因で比較的若年者から急激に進行する真性(しんせい)糖尿病白内障と、通常の老人性白内障が合併している仮性(かせい)糖尿病白内障とに分類されます。高血糖からくるポリオール代謝経路の亢進(こうしん)、酸化ストレス、終末糖化産物(しゅうまつとうかさんぶつ)の蓄積などが原因で水晶体蛋白が混濁するものと思われますが、その詳しいメカニズムはまだ明らかではありません。

症状の現れ方

 白内障の初期症状は“まぶしい”や“かすむ”などで、進行すると視力の低下を自覚するようになります。真性糖尿病白内障ではそれらの症状が急激に進行しますが、大多数を占める仮性糖尿病白内障では徐々にそれらの症状が現れてきます。視力の低下を自覚し日常生活に支障を来すようになれば、白内障手術が必要になってきます。
 また糖尿病網膜症が合併している場合には、その管理(眼底検査、蛍光(けいこう)眼底造影検査、網膜レーザー光凝固(ひかりぎょうこ))のために早期に白内障の治療が必要な場合もあります。

検査と診断



 糖尿病白内障の診断には、散瞳薬(さんどうやく)を用いて瞳孔を開いた状態で、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡により検査をすることが必要です。この検査で水晶体に混濁があると認められれば白内障の診断がつきます。混濁の部位が水晶体の核なのか、皮質なのか、水晶体嚢下(すいしょうたいのうか)なのかの診断もこの検査で可能です。真性糖尿病白内障では皮質の多数の点状の混濁に始まり、それらが融合していく形で白内障が進行していきます(図6)。視力検査と自覚症状、そして糖尿病網膜症の状態に合わせて白内障手術の適否を判断していきます。

治療の方法

 糖尿病白内障の発症・進行には、血糖コントロールの良否、罹病(りびょう)期間、年齢、網膜症の程度が関連しています。とくに血糖コントロールが進行を抑えるのに有利にはたらくと考えられますが、水晶体の混濁は一度進んでしまうと、血糖コントロールや薬物治療などで改善させることはできません。したがって白内障手術が、現時点では唯一の根治的治療方法といえます。
 現在の標準的な白内障の手術は、超音波水晶体乳化吸引術+眼内レンズ移植術です。通常は局所麻酔で行われます。手術は、(1)水晶体前嚢(ぜんのう)に円形の切開、(2)角膜と強膜(きょうまく)の境界付近の3mm程度の切開創(そう)から入れた超音波乳化吸引装置により、水晶体核を破砕して吸引、(3)水晶体嚢内に残留した皮質の吸引、(4)眼内レンズを水晶体嚢内(のうない)に移植、(5)閉創といった手順で進められます。手術時間は通常十数分で、糖尿病であってもその他の眼合併症がなければ比較的安全に行うことができます。
 しかし、血糖コントロールが不良であれば手術合併症の危険性が高くなり、やはり良好にコントロールした状態で手術にのぞむほうがよいと一般的に考えられています。
 一方、急激なコントロールは網膜症の悪化などを来すことがあり、また糖尿病網膜症が進行している眼では、網膜レーザー光凝固治療や硝子体手術の必要性から血糖コントロールを待たずに早急に白内障手術が必要な場合があります。また、糖尿病網膜症の病期が進行しているほど手術合併症が高くなると考えられています。したがって手術のタイミングは、内科的な状態と眼科的な状態を十分に考慮したうえで判断されるべきです。

糖尿病白内障に気づいたらどうする

 糖尿病白内障に対する有効な薬剤が開発されていない現在では、白内障の発症予防には、まず糖尿病初期からの血糖コントロールが大切です。また不幸にして白内障が発症、進行した段階では、手術結果に影響すると考えられている血糖コントロールや網膜症の程度を適切に考慮したうえで、より適切な時期に手術が行われることが大切です。
 このためには内科と眼科をあわせて定期的な通院治療が不可欠です。したがって内科医と眼科医との連携、さらに患者さん自身の自己管理が重要です。