鉄欠乏性貧血<血液・造血器の病気>の症状の現れ方

 貧血による組織への酸素供給量の低下を補うために、心拍数の増加による動悸や息切れ、易(い)疲労感(疲れやすい)、全身の倦怠感(けんたいかん)、頭重感、顔面蒼白、狭心症様症状(胸の痛み)などの一般的な貧血症状が現れます。くわえて、組織鉄の欠乏が進むと爪がスプーン状になったり、口角炎、舌炎嚥下(えんげ)障害(プラマービンソン症候群)などがみられることもあります。
 なお、立ちくらみ(いわゆる脳貧血(のうひんけつ))はひどい貧血の場合にも起こりますが、多くは自律神経機能の低下により下半身の血管が縮まらず、その結果、上半身が血液不足になって起こります。小児の鉄欠乏性貧血のなかには、泥、ちり、釘(くぎ)、チョークなどを食べる異嗜症(いししょう)を示す症例もあります。
 貧血は徐々に進むことが多いため、ヘモグロビンが6〜7gdlくらいまでに減少していても、体が順応して明らかな貧血症状がみられないこともあります。

鉄欠乏性貧血<血液・造血器の病気>の診断と治療の方法

 鉄欠乏の原因に対する治療と鉄の補給を行います。偏食などの鉄の摂取不足、成長期や妊娠による鉄の需要の増大、生理や過激な運動による鉄の損失などの場合は、普段から鉄分を多量に含む食品の摂取が大切です。動物性食品中には吸収されやすいヘム鉄が、植物性食品には吸収されにくい非ヘム鉄が多く含まれています。また、ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を促進します。
 貧血がひどい場合や食事療法で改善が難しい場合は、経口鉄剤(硫酸第一鉄やさまざまな有機鉄)が1日100〜200mg前後で投与されます。鉄剤を服用すると便の色が黒くなりますが、心配はいりません。副作用として吐き気などの胃腸障害が時にみられますが、徐放性製剤(徐々に吸収されるように工夫されたもの)により軽減されます。なお、お茶に含まれているタンニンは鉄と結合して鉄の吸収を妨げますが、日常生活のなかで普通に飲んでいる程度ではさしつかえありません。
 鉄の補給は経口が原則ですが、吐き気などが強くて経口投与が不可能な場合や鉄剤の吸収障害がある場合、急速に鉄欠乏状態の改善を必要とする場合には、鉄剤の静脈注射による治療法が用いられます。しかし、この場合は鉄剤の過剰投与による障害(ヘモクロマトーシスなど)を避けるため、必要以上に投与期間が長くならないように注意が必要です。
 経口投与した場合の治療効果は、まず血清鉄が上昇し、網赤血球(もうせっけっきゅう)が7〜10日後に増え、次いでヘモグロビンが上昇してきます。しかし、貯蔵鉄が完全に正常になるまでには3〜4カ月程度かかるので、血清フェリチン値が十分に上昇するまで治療を継続します。