血友病とはどんな病気か

 血友病は、先天性出血素因(せんてんせいしゅっけつそいん)のなかで最も頻度が高く(男子出生1万人に約1人)、生涯にわたり皮下血腫(ひかけっしゅ)、関節出血、筋肉出血などの出血症状を繰り返す病気です。血友病A(第VIII因子欠乏症)と、血友病B(第IX因子欠乏症)の2種類があり、その発生比は約5対1です。

原因は何か

 血友病の原因は、止血に重要な血液凝固第VIII因子または第IX因子の欠乏ないし異常です。それぞれ、X染色体上にある第VIII因子遺伝子あるいは第IX因子遺伝子のさまざまな変異(遺伝子の欠損、挿入、点変異(遺伝子塩基配列における1塩基置換による変異など)に基づくもので、時に家系内遺伝のない突然変異による孤発例もあります。

症状の現れ方

 第VIII因子の遺伝子および第IX因子遺伝子は、ともにX染色体(性染色体:女性は2本XX、男性は1本XY)上にあるため、血友病A、Bはともにほとんど男児に発症(伴性劣性遺伝(はんせいれっせいいでん))し、女性は保因者になります。
 重症型(因子活性1%以下)では、乳児期のささいな外傷、打撲に伴う皮下血腫、関節出血などで発症します。這行(しゃこう)(はうこと)や歩行を開始する乳児期後半からは、疼痛とはれを伴う足・膝の関節出血が多くみられ、何回も出血を繰り返すと関節症を来します。また、粘膜出血、筋肉出血、血尿、あるいは頭蓋内出血のように、生命を脅かす出血がみられることもあります。
 中等症・軽症の血友病では、出血症状はまれです。抜歯や外傷後の止血が困難な時に検査を受け、初めて診断されることもあります。

検査と診断

 特徴的な出血症状の観察や、家族歴をよく聴取することで、診断が可能な場合があります。血液凝固検査では、出血時間とPT(プロトロンビン時間)は正常ですが、全血凝固時間とAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)は延長します。確定診断には、血中第VIII因子または第IX因子の活性を測定し、重症(1 %以下)、中等症(1〜5%)および軽症(5〜30%)に分類します。
 また、それぞれ第VIII因子の遺伝子あるいは第IX因子の遺伝子の異常を調べる遺伝子診断も行われています。とくに保因者診断において、各因子の活性測定による診断が困難な場合の確定診断に威力を発揮しています。

治療の方法

 治療の基本は、凝固因子製剤の輸注(補充療法)による止血で、常に早期止血が重要です。1983年から導入された家庭輸注療法(自己注射)は極めて有用で、出血を繰り返す例では定期投与による血友病性関節症の予防を、また過激な運動・旅行などで出血が予想される場合には予防のための補充療法を行います。
(1)凝固因子(ぎょうこいんし)製剤
 補充療法では、血友病Aでは第VIII因子製剤、血友病Bには第IX因子製剤を使います。現在用いられている凝固因子製剤はすべてウイルス不活化処理がされており、止血効果は製剤間で差はありません。


 補充療法での投与量、投与間隔、投与期間は、それぞれ出血部位、程度、血中半減期(第VIII因子は8〜12時間、第IX因子は18〜24時間)によって異なります(表17)。投与量の計算法は、血友病Aでは1%上昇させるために体重1kgあたり2分の1単位の第VIII因子を、血友病Bでは1単位の第IX因子を必要とします。
 また、治療中に10〜20%の症例に、因子に対するインヒビター(抗体)が発生することがあり、このような症例にはバイパス療法として、活性型プロトロンビン複合体あるいはリコンビナント第VIIa因子製剤を用います。
(2)デスモプレシン療法
 本剤は、血管内皮からの内因性第VIII因子の放出により血中濃度を上昇させるので、中等症〜軽症の血友病Aに有効です。
(3)補助的薬物療法
 抗線溶薬(こうせんようやく)(トランサミン)は口腔内の出血や抜歯後の出血には有効ですが、血尿には水腎症(すいじんしょう)を併発する危険性があるため禁忌です。
 鼻出血に対して、鼻腔内タンポン(オキシセル綿型など)による圧迫止血を行う場合もあります。

血友病に気づいたらどうする

 まず、専門医による正確な診断が必要です。血友病性関節症の防止のためには早期輸注による止血が重要で、家庭輸注療法(自己注射)が極めて有用です。
 いつもと違う頭痛、腰痛、股関節痛が現れたら、すぐに主治医と連絡を取り、必要に応じて補充療法などの治療を受けてください。