天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡)とはどんな障害か

 天疱瘡は普通、前ぶれ(前駆症状)なく、健康な皮膚にいろいろな大きさの水ぶくれ(水疱(すいほう))ができる病気です。大きなびらんをつくるタイプの尋常性天疱瘡と、小さな水疱ができて落ち葉のような落屑(らくせつ)になる落葉状天疱瘡があります。
 尋常性では口のなかなどの粘膜も侵されることがほとんどですが、落葉状では粘膜は侵されないほうが多いとされています。
 副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン(ステロイド)薬の登場により、死亡率は劇的に改善された病気ですが、今でも死亡率は尋常性では5〜10%あり、油断のできない病気です。

原因は何か

 原因は、患者さんの血液のなかに含まれる免疫グロブリンという蛋白質の一部です。免疫グロブリンは、本来はウイルスやばい菌と闘うために私たちの体のなかにある蛋白質ですが、その一部が自分の皮膚と闘いだすために皮膚が傷んでしまいます。
 具体的には、尋常性天疱瘡では皮膚のデスモグレイン(細胞と細胞をつなぐ蛋白質)3を、落葉状天疱瘡では皮膚のデスモグレイン1を攻撃します。

症状の現れ方

 尋常性では、皮膚に突然水疱ができて、すぐに破れてびらん(ただれ)になります。びらんは治りにくく、触ると痛みがあります。おおよそ半分の患者さんでは、口のなかの治りにくいびらんで始まるとされます。
 落葉状では、尋常性に比べて水疱が小さく乾きやすいので、皮膚に木の葉がついたように見えることがあります。普通は体中にできます。

検査と診断

 診断では、厚生労働省が定めた診断基準が参考になります。以下に診断基準を抜粋しますが、わかりにくいのでカッコ内に解説を入れます。
(1)臨床的診断項目 a.皮膚に多発する破れやすい弛緩性(しかんせい)水疱(水疱がたくさんできること) b.水疱に続発する進行性、難治性のびらんないし鱗屑痂皮性局面(りんせつかひせいきょくめん)(水疱が治りにくいびらんになること) c.口腔粘膜を含む可視粘膜部の非感染性水疱、びらんないしアフタ性病変(口のなかに痛みがあるびらんができること) d.ニコルスキー現象(強くこすると、そこに水疱ができること)
(2)病理組織学的診断項目(皮膚をとって検査する。皮膚生検という) a.表皮間細胞間橋(きょう)の解離(かいり)(棘融解(きょくゆうかい))による表皮内水疱
(3)免疫組織学的診断項目(aは(2)とは別にもうひとつ皮膚をとる検査です。bは血液をとる検査) a.病変部ないしは外見上正常な皮膚、粘膜部の細胞膜(間)部に免疫グロブリンG(IgG)(時に補体(ほたい))の沈着が認められる。 b.流血中より抗表皮細胞膜(こうひょうひさいぼうまく)(間)抗体(天疱瘡抗体)(IgGクラス)を蛍光抗体法(けいこうこうたいほう)で同定する。 c.流血中に抗デスモグレイン1抗体や抗デスモグレイン3抗体があることをELISA法で証明する。
(4)判定および診断 a.(1)のうち少なくとも1項目と(2)を満たし、かつ、(3)のうち少なくとも1項目を満たす症例を天疱瘡とする。 b.(1)のうち少なくとも2項目以上を満たし、(3)のa、b、cを満たす症例を天疱瘡とする。

治療の方法

 基本はステロイド薬による治療です。ステロイド薬は副作用もあり、マスコミの影響で怖い薬だから使いたくないと主張する患者さんが増えているようです。しかし、ステロイド薬が登場する前は、尋常性天疱瘡が死亡率90%以上の病気であったことを考えれば、ステロイド薬をのまなければ、10人のうち9人(以上)が、亡くなってしまうわけですから、ステロイド治療の大切さがわかると思います。
 ステロイド薬でも快方に向かわない時には、免疫抑制薬を使用します。血清浄化療法(けっせいじょうかりょうほう)や免疫グロブリン大量療法も有効です。落葉状天疱瘡ではDDS(レクチゾール)を使って治療することがあります。

天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡)に気づいたらどうする

 何も治療しなければ高率で亡くなる病気ですから、治りにくい水疱が体にできた時には、皮膚科専門医に診てもらうことが大切です。