重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルスによるもの)とはどんな感染症か

 重症急性呼吸器症候群は、英語名の頭文字をとって、SARS(サースまたはサーズ)とも呼ばれています。2002〜03年、中国広東(かんとん)省に端を発した世界的流行で、初めて発見されました。SARSコロナウイルスによる全身性の感染症ですが、肺炎の症状が前面に出るので呼吸器症候群という名がついています。
 この病気は、患者さんの咳(せき)やくしゃみの飛沫や体液を介して感染します。そのため、とくに患者さんと密接に接触する家族や医療従事者の間で感染が広がりやすく、注意が必要です。

症状の現れ方

 ウイルスに感染してから2〜10日、平均5日の潜伏期ののち、発熱と悪寒(おかん)・戦慄(せんりつ)(震え)、筋肉痛などの全身症状を伴った、インフルエンザによく似た症状で発症します。熱はいったん下がるかにみえますが、発病第2週には再び高くなり、咳や呼吸困難が現れ、下痢を伴うこともあります。
 その後、発症者の約80%は軽快しますが、約20%の患者さんは急速に呼吸困難が進行し、集中治療が必要になります。致死率は全体で10%前後ですが、年齢により0〜50%と差があり、高齢者や基礎疾患がある人では高くなります。

検査と診断

 SARSの診断は、その時点での流行状況も考慮して行います。
 ほとんどの患者さんは、発病3〜4日で胸部X線やCTで肺炎所見が観察されます。血液検査では特徴的なものはありませんが、リンパ球や血小板の減少、LDH(乳酸脱水素酵素)値の上昇などがみられます。同様の症状の原因となるさまざまな細菌、インフルエンザ、マイコプラズマ、レジオネラなどの病原体の検査を行い、肺炎や不明熱の原因となる病気を除外しつつ、SARSコロナウイルスの検査を考慮します。
 検査法には、ウイルス分離、RT‐PCR法、血清抗体測定があります。しかし、発病早期においては、検査による診断は難しく、検査で陰性でも感染していないとはいえません。
 世界での流行状況によりますが、ウイルスが野生動物に存在していると考えられる中国南部で野生動物やその体液に接触した経験や、肺炎の患者さんとの接触歴、あるいは検査室での病原体との接触などの情報も、SARSを疑う際の参考になります。

治療の方法

 初期には、治療と診断を兼ねて抗生物質による治療が行われる場合が多いのですが、SARSに有効な治療法はまだ確立されていません。基本的には、酸素投与や人工呼吸器などによる支持療法が中心になります。効果のある薬剤の発見・開発に向けて研究が行われていますが、いまだ有望なものは見つかっていません。

重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルスによるもの)に気づいたらどうする

 本疾患は2003年7月5日以来世界で流行は認められておらず、2009年7月1日現在世界のどこにもSARSの発生は確認されていません。このような状況では発熱や咳だけでSARSを疑うことはできませんし、その可能性も極めて低いので、あまり心配をすることはありません。
 世界のどこかで流行が起こっている時に、流行地から帰国後、あるいは流行地で野生動物や肺炎の患者さんに接触したあと、10日以内に発熱などの体調不良が出た場合には、保健所や医療機関に電話で連絡をしてから、できれば公共交通機関を使用せずに、マスクをして受診することが重要です。