有毒植物は世界の各地に存在します。以下、症状を起こす主な毒物について、大まかな分類にしたがって説明します。

●呼吸麻痺(こきゅうまひ)を起(お)こす植物毒(しょくぶつどく)
 中毒により、さまざまな症状を示す場合がありますが、最終的に呼吸麻痺を起こして死亡するものをこの項目に入れます。
 まず、キンポウゲ科の植物には猛毒性のものが多く、なかでもトリカブトとキンポウゲは一般になじみが深いものです。
(1)トリカブト
 この植物は毒草として有名ですが、同じキンポウゲ科のニリンソウやキク科のモミジガサなどとよく似ているので、間違えて食べるケースが数多くあります。
 トリカブトの根は、昔から「附子(ぶし)」および「烏頭(うづ)」として漢方処方の重要な生薬で、新陳代謝の衰えた人に投与すると強心作用を現します。また、ヨーロッパの民間療法であるホメオパシー(類似療法)ではかぜ薬としても用いています。ただし、量を誤ると中毒を引き起こし、呼吸中枢麻痺、心伝導障害、循環系、知覚および運動神経の麻痺などを起こします。
 ある程度の中毒量を用いた場合、個人差はありますが、まず唇、腹部、皮膚などに灼熱感(しゃくねつかん)またはアリがはいまわるような感覚があり、よだれ、嘔吐、めまい、下痢を起こします。さらに知覚および中枢麻痺を起こして歩行や呼吸が困難になり、昏睡(こんすい)状態になります。死亡までに1〜数時間かかります。致死量は、トリカブトの根で約2〜4g、成分であるアコニチンで約5mgです。
 成分的には、ジテルペン系のアルカロイドのアコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン、エサコニチンなどを含みますが、毒性はアコニチンで代表されています。加熱などによってエステルが加水分解されると、毒性は百分の1以下に減少します。漢方では、これを利用して加熱減毒した加工附子を用いています。
 中毒の対処法としては、胃洗浄、保温、強心剤、マグネシウムやカルシウムの投与などがあります。また、徐脈(じょみゃく)に対してはアトロピンが、不整脈に対してはリドカインが有効です。以下のものでも対処は同様です。
(2)キンポウゲ
 ウマノアシガタとも呼ばれ、成分としてアネモニンを含み、多量では心臓毒として作用し、心臓の運動機能を停止させます。マウスによる実験では、嘔吐、下痢、血尿、血便、瞳孔(どうこう)散大などの中毒症状を現し、大量に与えると知覚麻痺、呼吸困難、けいれんを起こして死亡します。
(3)シュロソウ、バイケイソウ
 ユリ科植物で、かつては血圧降下薬として用いられたこともありました。毒性の強いステロイド系のアルカロイドを含んでいて、大量に摂取すると中枢性の呼吸抑制が起こり、呼吸停止により死亡します。成分であるジェルビンの毒性はアコニチンに匹敵するといわれ、現在は農薬としてわずかに用いられているにすぎません。
 ジャガイモの芽生えの部分に含まれるステロイド系アルカロイドのソラニンも有毒性です。誤って食べると嘔吐、下痢を起こし、呼吸困難を起こします。
(4)ドクゼリ
 セリ科に属し猛毒性をもつ植物のひとつで、毒性の強いシクトキシンを含んでいます。主に根に含まれますが、非常に吸収されやすいので、誤って食べると数分後には中毒症状が現れます。口から泡を吹き、中枢神経が侵され、けいれん、めまい、嘔吐、皮膚の発赤が現れ、最後に呼吸麻痺を起こして死亡します。
(5)ドクニンジン
 同じくセリ科で、全草に猛毒性のアルカロイド、コニインを含んでいます。まず中枢神経を興奮させ、のちに麻痺を起こし運動神経末梢を麻痺させます。その結果、よだれ、呼吸麻痺を起こして死亡します。歴史的に有名なソクラテスの獄中毒殺では、この植物が使われました。
(6)ハシリドコロ
 ナス科の植物には毒性をもつものが多く、日本の山野に自生するハシリドコロは、ヒヨスシアミン、アトロピン(dl‐ヒヨスシアミン)、スコポラミンなどのトロパン系アルカロイドを含んでいます。根はロート根と呼ばれて薬用にされますが、山菜の時期に誤って食べると狂奔(きょうほん)して走りまわるので、ハシリドコロという名がつけられたそうです。ハシリドコロとトリカブトは拮抗作用があるといわれています。
 ヨーロッパでは、古くからベラドンナ、ヒヨス、ダツラ(ヨウシュチョウセンアサガオ)などが鎮痛・鎮痙薬(ちんけいやく)として用いられました。これらのアルカロイドには抗コリン作用があり、瞳孔散大、制酸、鎮痛に用いられます。ヒヨスシアミンは量が多いと狂騒(きょうそう)状態を引き起こし、ついには呼吸麻痺によって死亡します。華岡青州の麻酔薬には、マンダラ葉(ダツラ)が処方されたといわれています。
(7)フジモドキ
 ジンチョウゲ科に属し、ゲンカニン、ヒドロキシゲンカニンなどを含み、その毒性はトウダイグサ科の甘遂(かんすい)や大戟(だいげき)よりも強いといわれています。ラットの実験では死亡の前にけいれん現象があり、多くは呼吸衰弱によって死亡します。
(8)ドクウツギ
 山野の荒地に自生し、紅紫色のきれいな実をつけるので誤って食べやすいものです。猛毒性のコリアミルチンやツチンを含み、ピクロトキシン様の作用を現します。脊髄(せきずい)より上位の中枢を刺激して激烈なけいれんを起こし、のちに麻痺させて呼吸停止により死に至ります。
 主な中毒症状は悪心(おしん)(吐き気)、嘔吐、全身硬直、口唇紫変、瞳孔縮小などで、葉約24gが致死量です。
(9)青酸配糖体(せいさんはいとうたい)を含む植物
 青酸配糖体それ自体は毒性を発揮しませんが、青酸を遊離するためチトクロームオキシダーゼを阻害し、体内呼吸を止めて死に至らせます。アンズ、ウメ、アーモンド、サクラなどのバラ科植物の果実、種子に含まれるアミグダリンは鎮咳(ちんがい)・去痰薬(きょたんやく)として用いられますが、大量に用いるか古いものを用いると、青酸中毒を起こします。
 その他の青酸配糖体として、キク科のロタウトラリン、マメ科やトウダイグサ科のキャッサバに含まれるリナマリン、またバクチノキに含まれるプルナシンなどがあります。いずれも腸内細菌のβ(ベータ)‐グルコシダーゼのはたらきによってヒドロキシニトリルを生じ、さらにヒドロキシニトリル分解酵素の作用を受けて青酸を遊離します。

●心臓障害(しんぞうしょうがい)を起(お)こす植物毒(しょくぶつどく)
(1)ジギタリス
 強心および利尿薬として有名なゴマノハグサ科の植物で、葉は毒性も強く、量をとりすぎると嘔吐、下痢を伴う中毒を引き起こします。かつてはコンフリーと誤って食べた中毒が多く報告されたことがあります。
 成分的には、ステロイド系の配糖体ラナトシド、プルプレアグルコシド、ジギトキシンなどです。同系のステロイドを含む植物として、キョウチクトウ科のストロファンツスがあり、G‐ストロファンチン(ワバイン)を含みます。ガマ毒のブホトキシンと構造的に似ています。
 地中海地方に産するユリ科のカイソウも、ガマ毒に似た成分を含み、強心利尿薬の原料となっています。
(2)キョウチクトウ、スズラン、オモト、フクジュソウ、クリスマスローズ
 これらの植物も似たような系統の化合物を含んでいます。そのほか、ガガイモ科のイケマは北海道に自生し、アイヌ民族の万能薬として用いられていましたが、根にシナンコゲニンを含み、強心利尿作用があります。
 以上の対処法としては、まず胃洗浄、医薬用活性炭の胃内投与を行い、症状に応じてカリウム、不整脈の場合はフェニトイン、心室の期外収縮にはリドカイン、部分的心房障害にはアトロピンなどを投与します。
 一般の人にできるのはまず吐かせることで、あとは医師に任せます。

●けいれん・麻痺(まひ)を起(お)こす植物毒(しょくぶつどく)
 呼吸麻痺作用をもつ植物毒のなかで、青酸以外のものはいずれも中枢あるいは末梢神経にはたらき、呼吸困難を引き起こす作用があります。したがって、呼吸困難を起こす植物毒のなかにも、激しいけいれんや麻痺を伴うものが少なくありません。
 ツヅラフジ科のアナミルタ属植物から得られるセスキテルペン系化合物のピクロトキシンは、実験動物にけいれんを起こさせる標準物質として用いられることもあります。また、ドクゼリのシクトキシンやドクウツギのコリアミルチン、キンポウゲのアネモニンも強烈なけいれん毒です。
(1)シキミ
 シキミ科に属し、セスキテルペン系のアニサチンを含み、強い嘔吐、けいれんを起こします。果実の形が大茴香(だいういきょう)に似ているので、間違えて問題が起きたことがあります。ミヤマシキミやツルシキミは、名前は似ていますがミカン科に属する植物で、アルカロイドのスキミアニンやジクタムニンを含み、強烈なけいれんを伴う中毒を引き起こします。
(2)アセビ
 ツツジ科で山野に自生する有毒植物です。牛馬が誤ってこの葉を食べると麻痺するというので馬酔木(あせび)の名があります。有毒成分は苦味質のアセボトキシンで、葉を食べるとよだれ、嘔吐、下痢、手足の麻痺を伴い、酩酊(めいてい)状態になります。
 同科のネジキ、ハナヒリノキ、シャクナゲ、レンゲツツジなどもグラヤノトキシン系のジテルペンを含み、似たような作用を示し、激しい時は呼吸麻痺で死に至ることがあります。
(3)ヒガンバナ(マンジュシャゲ)
 ヒガンバナ科の植物で、お彼岸の時期に赤い美しい花を咲かせます。全草とくに根にアルカロイドのリコリンを含み、嘔吐、よだれ、下痢を起こします。これは、リコリンが強い中枢神経麻痺作用をもっているためです。同科のキツネノカミソリやハマオモトも同様の中毒症状を示し、けいれん、麻痺を起こします。
(4)サワギキョウ、ロベリア
 キキョウ科の植物で、アルカロイドのロベリンを含みます。医薬品としては呼吸中枢興奮薬として用いられますが、小量で呼吸興奮、嘔吐、下痢に続いて虚脱状態に陥り、多量でけいれん、呼吸麻痺、心臓麻痺を起こして死に至ります。
(5)クラーレ
 南米でクラーレとして有名な矢毒は、ツヅラフジ科およびマチン科の植物を原料にしています。産地によって3種類のクラーレがありますが、有毒成分はいずれもインドール系およびビスコクラウリン系のアルカロイドです。医薬品のツボクラリンは、インドール系はマチン科の植物、ビスコクラウリン系はツヅラフジ科の植物から作られる、末梢性筋弛緩薬(きんしかんやく)です。
 また、マチン科のホミカはインド、スリランカに産しますが、やはりインドール系のストリキニーネを含んでいて猛毒性を現します。ホミカは苦味健胃剤(くみけんいざい)に配合されますが、量を誤ると全身の筋肉の強直性けいれんを起こします。ホミカの種子1個で、致死量に近いアルカロイドを含んでいます。

●肝臓機能障害(かんぞうきのうしょうがい)を起(お)こす植物毒(しょくぶつどく)
 このタイプの毒物は少ないのですが、ほかの項目のもので肝機能を障害するものは少なくありません。キク科キオン属(セネシオ)やマメ科のタヌキマメ属、ムラサキ科のヘリオトロープ属植物の葉を飲用する習慣のあるところでは、肝機能障害、肝硬変(かんこうへん)が多いことが知られていました。
 Senecio jacobaea(ヤコブボロギク)では、アルカロイドのセネシオニン、セネシンがその毒性の本体です。また、フキノトウのフキノトキシンやツワブキのセンキルキンなどもこの型の毒物に入り、発がん性も指摘されています。

●消化器(しょうかき)・腎臓障害(じんぞうしょうがい)を起(お)こす植物毒(しょくぶつどく)
 サトイモ科の植物やタデ科のダイオウの葉、ギシギシ、スイバ、またホウレンソウなどは、十分に湯通しをしないと胃腸障害を起こし、腎臓にシュウ酸カルシウムが沈着して腎機能を障害します。
 マメ科のトウアズキは、誤食により有害蛋白質のアブリンによる胃腸障害を生じ、腹痛、嘔吐を引き起こします。また、トウダイグサ科のトウゴマ(ヒマ)の種子は、下剤として使われるヒマシ油の原料になりますが、有害蛋白質のリシンを含んでいます。

●発(はつ)がん性(せい)および抗(こう)がん性(せい)を有(ゆう)する植物毒(しょくぶつどく)
 発がん性物質の代表として、TPAという有名な化合物があげられます。
(1)巴豆(はず)
 トウダイグサ科植物の種子で、クロトン油(巴豆油(はずゆ))の原料にされます。クロトン油は発がん性のジテルペンエステルであるTPAを含み、皮膚の発がんを促進します。
 クロトン油は最も激烈な下剤で、1滴内服しただけで口腔や胃の粘膜に灼熱感(しゃくねつかん)や嘔吐を起こし、やがて激しい腹痛を伴って下痢を起こします。クロトン油を外用すると皮膚刺激作用で発赤を起こし、膿疱(のうほう)、壊死(えし)に至ります。工芸品などの制作にクロトン油を常用しているところでは、皮膚がんが多く発生しています。
 トウダイグサ科の植物は粘液が多く、そのなかに発がん性のジテルペン系化合物を含んでいることがあります。ナツトウダイ、ヒロハタイゲキなども毒性が強い植物です。
(2)ソテツ
 ソテツ科のこの植物に含まれるアゾキシ配糖体サイカシンは、β(ベータ)‐グルコシダーゼによって加水分解されてジアゾメタンを生じ、このジアゾメタンがアルキル化剤として作用し、発がんさせます。
(3)ワラビ
 ウラボシ科のワラビは、湯通しをしないで食べると中毒を起こします。ノルセスキテルペン配糖体のブタキロシドが毒性本体であり、発がん性を示します。
(4)毒性が強く抗がん薬が開発された植物
 すでに臨床で用いられているニチニチソウのビンカアルカロイドが有名です。インドール系のビンクリスチンやビンブラスチンを含み、白血病性のがん(血液のがん)に有効です。
 ポドフィルム根に含まれるポドフィロトキシンはリグナンの一種で、抗がん活性も強いのですが、副作用も強く出ます。
 また、イチイの成分であるタキソールおよびタキソテレはジテルペン系の化合物で、卵巣がんに有効とのことですでに臨床に用いられています。

●麻薬性(まやくせい)の植物毒(しょくぶつどく)
 この項目に入る植物は、しばしば社会問題となる幻覚(げんかく)・麻酔を起こす成分を含んでいるので、一般の使用は法律で禁止されています。
(1)ケシ
 ケシ科に属し、この項目に入る最も有名な植物のひとつで、アヘンアルカロイドを含みます。ケシの未熟果実の乳液を固めたものがアヘンと呼ばれます。その主成分はモルヒネで、そのほかにテバイン、コデインなどを含みます。
 モルヒネは、鎮痛・麻酔性の医薬品として重要ですが、習慣性も強くモルヒネ中毒を起こします。そのジアセチル誘導体はヘロインと呼ばれ、鎮痛・麻酔性も習慣性も高まり、ヘロイン中毒は最も治療の難しい麻薬中毒といわれています。
(2)インド大麻
 クワ科の植物で雌雄異株(しゆういしゅ)です。受精後の雌株(めかぶ)に麻酔成分を含む樹脂が分泌され、この樹脂をインドではハシッシュ、欧米ではマリファナと呼んでいます。通常は、この未熟の果穂を含む枝先および葉が混在したものをタイマと呼んでいます。麻酔性の成分はTHCA(テトラヒドロカンナビノール)であり、幻覚性、習慣性をもっています。
(3)コカ
 コカノキ科の植物で、その葉に局所麻酔性のコカインを含みます。南米のペルーでは、その葉は飲用として認可されています。
(4)ウバタマ
 サボテンの一種でペヨーテとも呼ばれ、幻覚症状を起こすメスカリンを含んでいます。したがって、ウバタマの栽培は禁止されています。しかし、子吹ウバタマにはメスカリンが含まれていないので、栽培は認可されています。

●その他(た)の植物毒(しょくぶつどく)
(1)イヌサフラン
 ユリ科の植物で、その成分はアルカロイドのコルヒチンです。末梢性血管麻痺作用があり、痛風(つうふう)による激痛を特異的に鎮める作用があるので、痛風の治療薬として用いられています。また、植物の倍数体を作るため、植物の品種改良などにも利用されます。ただし、毒性が強いので一般には使えません。
(2)ウルシ
 ウルシ科の植物で、フェノール性のウルシオールを含んでいます。この化合物はラッカーゼによって酸素と結合し、黒色樹脂状となり急性皮膚炎を起こします。ウルシオールは大量投与により、脳中枢神経系の原線維を傷める作用があります。
(3)ヤマゴボウ
 ヤマゴボウ科の植物で、果実と根に有毒成分のフィトラクシンを含み、食べると嘔吐・下痢を起こし、次いで延髄(えんずい)に作用し、けいれんを起こして死亡します。