遺伝性の大腸がんについて

 大腸がんは、家族性に発生することの比較的多い病気です。数%程度が遺伝性と考えられています。そのうち、遺伝的な原因が明らかになっている家族性大腸腺腫症(かぞくせいだいちょうせんしゅしょう)と遺伝性非(いでんせいひ)ポリポーシス性(せい)大腸がんについて解説します。

家族性大腸腺腫症(かぞくせいだいちょうせんしゅしょう)(家族性大腸(かぞくせいだいちょう)ポリポーシス)

大腸がんとはどんな病気か

 大腸に多数の腺腫(ポリープ)ができ、それががん化する病気です。日本人では、1万5000〜1万7000人に1人発症します。発症年齢はポリープが15歳で60%、大腸がんは40歳で50%程度です。他の主要病変としてデスモイド腫瘍(しゅよう)、十二指腸乳頭部(しちょうにゅうとうぶ)がん、甲状腺(こうじょうせん)がんなどがあります。

原因は何か

 APC遺伝子の変異です。遺伝形式は常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせい)遺伝です。

検査と診断

 大腸内視鏡検査でポリープが多数(100個以上)あれば、家族歴がなくても家族性大腸腺腫症と診断されます。臨床診断の確定した方にAPC遺伝子の変異が見つかる可能性は60〜80%程度です。遺伝子変異とポリープのでき方などの症状にある程度関連があるため、手術法・治療法の選択、他の関連腫瘍のサーベイランスプランの検討に有用です。
 発症者の遺伝子変異が見つかると、家族も同じ変異を受け継いでいるかどうか調べる発症前検査などが可能になります。発症前遺伝子診断の適切な年齢は、16歳以上です。

治療と管理方針

 この遺伝子に変異が見つかれば、ほぼ100%の確率で一生のうちに大腸がんを発症します。すべての症例において、大腸がんを発症する前に予防的大腸全摘手術の適応になると考えられます。
 遺伝子変異の見つかった人、あるいは家系内でリスクが高い人については、年に一度の大腸内視鏡検査が早期診断に役立ちます。

遺伝性非(いでんせいひ)ポリポーシス性大腸(せいだいちょう)がん

大腸がんとはどんな病気か

 家族性大腸ポリポーシスでないのに遺伝的に大腸がんが発生する病気です。常染色体優性遺伝です。大腸の右側にがんが発生しやすい傾向があります。大腸以外に、子宮内膜(しきゅうないまく)がん、胃がん卵巣がん、尿管・腎盂(じんう)がんなどが発生することがあります。
 発症年齢は20歳以上で、平均45歳です。日本人における頻度は全大腸がんの3〜10%といわれています。

原因は何か

 MSH2、MLH1(ミスマッチ修復遺伝子群)の遺伝子変異です。そのほか、MSH6、PMS1、PMS2なども知られています。

検査と診断

 家族歴などの情報から、遺伝性の疑われる大腸がんの患者さんに遺伝子変異の見つかる割合は、MSH2とMLH1を合わせて40〜80%です。もし、遺伝子変異が見つかれば、多発がん、他臓器がんのリスクが高いことがわかるので、早期発見・早期治療につなげることができます。
 同じ変異をもつ血縁者で現在発症していない人について、一生で大腸がんにかかるのは80%程度、子宮内膜がん(女性)は30%程度といわれています。
 発症前遺伝子診断(易罹患性(いりかんせい)診断)の適切な年齢は20歳以上です。

治療と管理方針

 予防的手術は日本ではまだ一般的ではありませんが、2回め以降のがんに対しては大腸亜全摘(だいちょうあぜんてき)(大腸を直腸下部を残して切り取る)が考慮されることもあります。
 未発症で遺伝子変異をもつ人や、家系内でリスクが高いと考えられる人については、20歳以上で大腸がん、30歳以上で胃がん・子宮内膜がん・卵巣がん、尿路がんに対しての検診を年に一度受けることをすすめます。