吐き気を伴う頭痛というと、命にかかわる怖い病気を連想するかもしれません。もちろん、脳の病気によって引き起こされる頭痛や吐き気をはじめ、すぐ病院に行くべきケースもありますが、特定の季節に発生する病気や女性特有の症状などその要因は幅広く、対処法や治療法もさまざまです。そこで、最適な治療法を見分けられるよう、吐き気を伴う頭痛の原因や症状をしっかりと見ていきましょう。
仲 眞美子先生(アスクレクリニック上野)
医学博士。認定内科医、認定産業医、人間ドック検診専門医。
昭和50年、東京医科大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了。愛知県がんセンター第二内科・化学療法部国内留学。社会保険蒲田総合病院内科医長、他。イーク丸の内院長、医療法人社団葵会AOI国際病院健康管理センター所長を経てアスクレクリニック上野院長。

病気やけがが原因の吐き気を伴う頭痛は?

脳の病気や高血圧、軽い打撲など、病気やけがによって吐き気を伴う頭痛が生じます。それぞれ違いが見分けられるよう、正しい知識を身につけましょう。

1)これまで経験したことのない強い頭痛が起こり、痛みが続く場合

突然、これまで感じたことのない強い頭痛が起こると同時に、吐き気を感じる。そんな症状があらわれたら、脳の動脈が破裂して出血する、くも膜下出血の恐れがあります。頭痛の大きな特徴は「バットやかなづちで殴られたような」といわれるほど激しい痛みが突然起こり、何日か続くこと。ただし、軽い頭痛が突然起こり、少し時間が経ってから激しく頭が痛み出すこともあるので注意が必要です。また、出血量が多いとすぐに意識がなくなったり、動脈が破裂する場所によっては、体の左右どちらかがまひしたりすることも。ある日突然、頭痛が起こって痛みが続く場合は、脳神経外科の専門医を受診しましょう。

原因:くも膜下出血

治療法:手術

チェック方法:強い頭痛、意識障害、首の後ろのこりや痛み

関連する病気: くも膜下出血

2)朝、起きたときに強い頭痛がある場合

朝、起きると頭が強く痛む場合は、脳腫瘍の可能性があります。脳腫瘍とは頭蓋骨の中に腫瘍ができる病気で、頭痛や吐き気、嘔吐、眼がぼやけるといった症状があらわれるもの。また、突然のてんかん発作や感覚障害、言語障害などが発生するほか、子どもは吐き気がなくても突然吐くこともあります。少しでも不安な症状がみられたら、脳神経外科を受診しましょう。

原因:脳腫瘍

治療法:手術

チェック方法:眼がぼやける、てんかん発作、感覚障害、言語障害

関連する病気: 脳腫瘍

3)首や肩がこり、後頭部に締めつけられるような痛みや重さがある場合

血圧が高くなることで、頭痛や吐き気、嘔吐といった症状が引き起こされる病気を高血圧性脳症といいます。悪化すると、けいれんや意識障害などが起こり、さらに脳出血や心不全、腎不全を発症して死亡するケースもあります。高血圧は生活習慣の乱れに加え、遺伝的な素因や加齢といった要素がお互いに影響し合って発症します。普段から高血圧を予防する生活を心がけると共に、早めに内科受診し、気になる症状がある場合は脳神経外科を受診しましょう。

原因:高血圧性脳症

治療法:薬物療法

チェック方法:高血圧、けいれん、意識障害

関連する病気: 高血圧性脳症高血圧

4)頭をぶつけたあと、頭痛や吐き気が起こる場合

慢性硬膜下血腫とは、軽く頭をぶつけたあと、脳を包む膜と脳の表面に少しずつ血液がたまる病気。頭をぶつけた直後はほとんど症状がありませんが、3週間から数カ月かけて血液がたまり、頭蓋骨の内側の圧が高まって頭痛や吐き気、嘔吐が発生します。きっかけが軽い打撲などのことが多く、いつ頭を打ったのかはっきりしないこともありますが、心当たりがある場合は、頭部のMRI検査が可能な専門医を受診しましょう。

原因:慢性硬膜下血腫

治療法:手術

チェック方法:頭痛、吐き気、嘔吐、意識障害

関連する病気: 慢性硬膜下血腫

精神的・肉体的ストレスが原因となる吐き気を伴う頭痛は?

疲労や睡眠不足といった肉体的なストレスはもちろん、人間関係の悩みなどの精神的ストレスも吐き気を伴う片頭痛を引き起こします。日常生活を振り返り、ストレスの元を取り除きましょう。

脈を打つように頭が痛む場合

こめかみから目のあたりのほか、頭全体が痛むと同時に、吐き気があったり、光や音に敏感になったりする症状がみられたら片頭痛かもしれません。片頭痛は女性に多く、前触れとして食欲の増加やあくび、むくみ、疲労感などがみられることも。さらに、ズキズキと脈打つような強い痛みが発生するのが特徴です。ストレスや疲労、睡眠不足などが原因となるので、普段の生活を見直し、ストレスをこまめに発散するほか、適度に休息して疲労をため込まないよう意識することが重要です。また、頭痛が長く続くようなら、神経内科や脳外科を受診しましょう。

原因:片頭痛

治療法:薬物療法

チェック方法:あくび、食欲の増加、光や音に過敏になる

関連する病気: 片頭痛

特定の季節に起こりやすい頭痛と吐き気は?

夏は熱中症で吐き気を伴う頭痛が発生します。日頃から予防・対策を心がけることが重要です。

1)高温多湿の場所にいて、頭痛や嘔吐がある場合

猛暑が続く夏に、注意したい熱中症。高温多湿の環境に体が適応できず、さまざまな症状が引き起こされる病気で、頭痛や吐き気のほか、だるさ、めまい、ほてり、筋肉のけいれん、皮膚の異常などが起こります。熱中症を防ぐには、水分や塩分を補給する、熱さがやわらぐような環境をととのえるなど、日頃から熱中症対策を心がけることが大切です。それでも熱中症の症状があらわれたときは、涼しい場所に移動して休み、脇の下や首まわり、足の付け根を冷やしてください。また、意識がはっきりしていたらスポーツドリンクなどで水分補給を。ただ、呼びかけても反応がなかったり、吐き気がある場合は、内科などの医療機関を受診しましょう。

原因:熱中症

治療法:休息、冷却、水分補給、塩分補給

チェック方法:だるさ、めまい、ほてり、筋肉のけいれん、皮膚の異常

関連する病気: 熱中症

女性特有の頭痛と吐き気は?

月経前緊張症(月経前症候群)や更年期障害といった女性特有の症状も、吐き気を伴う頭痛の原因に。気になる症状が続くようなら、婦人科を受診するのがおすすめです。

1)月経前に頭痛や吐き気が起こる

月経前の3~10日の間にあらわれる身体的・精神的症状で、月経が始まるとなくなったり、軽くなったりするものを月経前緊張症(月経前症候群)といいます。その症状はむくみ、頭痛や吐き気など200種類以上あるともいわれ、人それぞれ発生するものが異なるうえ、月によって症状のあらわれ方が異なる場合も。不快な症状が毎月あらわれるようなら、婦人科を受診しましょう。

原因:月経前緊張症(月経前症候群)

治療法: 薬物療法、非薬物療養(生活習慣の改善)

チェック方法:むくみ、腹痛、腰痛、胸の張り、めまい、倦怠感、情緒不安定

関連する病気: 月経前緊張症(月経前症候群)

2)閉経を迎える前後の時期に、頭痛や吐き気があらわれる場合

閉経前後の約10年間に、さまざまな身体的・精神的な不調があらわれる更年期障害。卵巣の機能が低下して女性ホルモンの分泌が減ることで自律神経失調症が引き起こされるほか、心理的ストレスによって情緒不安定などの精神的症状が発生します。自律神経失調症と精神症状はお互いに影響を与え合うので、更年期障害の症状はとても複雑。人によって症状の数や程度が異なり、同じ症状でも日によってあらわれ方が違います。おもな症状は、頭痛や吐き気、突然の発汗やほてり、めまい、イライラなど。日常生活に支障が出るほど症状が重い場合もあるので、気になる症状があらわれたら婦人科を受診しましょう。

原因:更年期障害

治療法: 薬物療法、精神療法

チェック方法:突然の発汗、ほてり、めまい、イライラ

関連する病気: 更年期障害自律神経失調症

そのほか吐き気を伴う頭痛は?

低血圧によっても頭痛や吐き気が引き起こされます。自覚症状がなく、見逃されることも多ので、普段から自分の血圧を把握しておきましょう。

1)血圧が低く、頭痛や吐き気が起こる

安静時の収縮時血圧が100mmHg未満で、低血圧の原因が明らかではないものを本態性低血圧症と呼びます。低血圧によって血流量が低くなることで、頭痛や吐き気をはじめ、倦怠感、めまい、息切れ、食欲不振といった症状があらわれます。ただ、自覚症状がない場合や、症状が出ても日常生活に影響がないことがあり、血圧を測って初めて発見されるケースも多いようです。食事や生活習慣を改善することで症状がやわらぐこともありますが、頭痛や吐き気が長引いてつらい場合は、内科で精密検査を行うといいでしょう。

原因:本態性低血圧症

治療法:精神療法、生活指導、薬物療法、カフェインの多い飲料を摂る

チェック方法:低血圧、倦怠感、めまい、息切れ、食欲不振

関連する病気: 本態性低血圧症低血圧

【まとめ】

吐き気を伴う頭痛は、緊急度の高い脳の病気をはじめ、肉体的・精神的ストレスや女性特有の症状など原因も症状もさまざまです。また、自覚症状のない頭の打撲や低血圧によっても吐き気や頭痛が発生します。自分の体に敏感になり、ちょっとした変化や不調を見逃さないことが大切です。

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