ズキッとする痛みや、キリキリ刺すような痛み…。胸の痛みにもさまざまありますが、心臓に近い部分だけあって、普段と違う痛みが現れたら誰もが不安になりますよね。ここでは、よく起こる胸の痛みについて紹介します。なかには命の危険に及ぶものもあり、適切な対処が必要なことも。また、原因が胸ではなく、心理的な部分にあるものもありますので、症状を正しく見極め、ふさわしい専門科目を選んで診察を受けることが、確実な治療には必要です。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

こんな症状が見られたら、すぐ、循環器科または内科へ!

胸の痛みに加えて次のような症状が見られたら、重症化すると命のリスクがあることも。すぐに循環器科または内科を訪ねて適切な処置を受けるようにしましょう。

1)発熱、鼻水、咳など風邪の初期症状から、動悸や胸部不快感が現れた

この場合、心筋炎が疑われます。心筋炎とはウイルスや細菌などの病原微生物が感染して発症する病気。はじめは風邪のような症状が数日続き、その後、動悸や胸部不快感、胸の痛みが現れます。悪化すると心不全を起こしたり、ショックを起こしたりすることもあり、実際、心臓を原因とする突然死のうち、主な原因のひとつがこの急性心筋炎となっています。たとえ症状が軽微でも、その後不整脈などが起こる可能性もあるので、しっかり病院で検査を受けることが必要です。

原因:心筋炎

治療法:薬物療法

チェック方法:発熱、鼻水、咳、下痢、腹痛、動悸、胸部不快感、胸の痛み

関連する病気: 心筋炎

2)風邪の諸症状と胸痛がある。特に、横になると胸の痛みが増す

はじめは風邪のような症状が続き、その後、胸痛を感じます。その場合、横になると胸の痛みが増すなど体位によって変化する場合は、心膜炎の可能性が疑われます。心膜炎は、心筋炎と同様、ウイルス感染が原因となっていることが多く、心膜や心嚢に炎症が起こることで発症します。心膜腔に貯留液が大量に増えると、心嚢がテニスボール状に膨らみ、心臓の働きを鈍らせます。これを心タンポナーデといい、命のリスクにつながります。また、心膜炎と心筋炎が合併することもあり、心膜・心筋炎と呼ばれています。

原因:心膜炎

治療法:薬物療法

チェック方法: 発熱、鼻水、咳、対位により異なる胸痛、発熱

関連する病気: 心膜炎

3)突然、胸や背中に激痛が起こる。意識消失することも

突然、胸や背中に激しい痛みが起こり、場合によっては意識を失ったり、ショック状態となることもあります。この場合は、解離性大動脈瘤かもしれません。これは、心臓から全身へ血液を送る大動脈の内膜に亀裂ができ、外側の中膜の中に血液が入り込んで血管の壁が避けてしまうという、重篤な病気です。動脈硬化や高血圧が関係しているとされていますが、原因は明らかではありません。一刻を争う危険な状態ですから、すぐに救急車を手配しましょう。

原因:解離性大動脈瘤

治療法:外科手術、薬物療法

チェック方法:胸や背中の激痛、痙攣、失神、意識障害

関連する病気: 大動脈解離

4)息を吸うときに激しい胸の痛みが現れる

突然、息を吸ったときに激しい胸の痛みが現れ、これまで楽に上っていた階段でも息が切れるようなら、肺塞栓症かもしれません。これは、血栓が肺動脈に流れ込み、血液の流れを止めてしまった状態のこと。肥満や加齢が原因となるほか、飛行機や車の中など、同じ姿勢で長時間座っているときにも起こります。また、長い時間、同じ姿勢でデスクワークを続けたときにも起こります。急性期の死亡率が高いため、症状に気づいたら早めに医師の診察を受けましょう。治療では、血液をサラサラにする薬を使用した薬物療法や血栓を取り除く手術療法が行われます。

原因:肺塞栓症

治療法:薬物療法、カテーテル治療、外科手術

チェック方法:息を吸う時の激しい胸痛、急激な呼吸困難、せき、血痰、血圧低下

関連する病気: 肺塞栓症

緊急ではないけれど、できるだけ早めに受診した方が良い病気

以下のような症状は、いますぐ重篤な危機に陥ることはあまりありません。しかし、頻発して症状が起きる場合や、「普段と違うな」と思ったら、早めに受診することをお勧めします。

1)深呼吸や咳をするとき、胸の痛みがひどくなる

深く呼吸をしたり、咳き込んだりすると胸の痛みがひどくなるという場合は、胸膜炎かもしれません。これは、胸膜に囲まれた胸膜腔に水が溜まることによって起こる病気。原因としては、ウイルスや一般細菌による感染症や肺がん(悪性腫瘍)のほか、膠原病、肺硬塞などが考えられます。もともと健康な人であれば、ウイルスや一般細菌に感染したことによって発症した場合は、自然治癒するケースも多いのですが、結核やがん、膠原病などを原因として発症した場合は、医師による適切な処置が必要になります。

原因:胸膜炎

治療法:薬物療法、外科療法

チェック方法:深呼吸や咳をするとき胸痛がひどくなる、発熱、息切れ

関連する病気: 胸膜炎

2)胸が締め付けられたり、抑えられたりするような痛みがある

突然強い胸の痛みが現れた場合、まず疑うのは狭心症です。胸の痛みを感じるシーンはさまざまで、階段を昇降した時など、体に負荷がかかった時に起こる「労作(性)狭心症」や、夜間や明け方に胸が苦しくなる「異型狭心症」など、狭心症はいくつかの種類に分類されます。胸痛などの症状が現れても、数分以内で改善した場合は、救急病院を訪れる必要はありませんが、念のため、数日以内に循環器科または内科を受診しましょう。また、発作が5分以上続く時や、1日に複数回発作が現れる時は心筋梗塞の前触れかもしれません。この場合は、できるだけ早めに循環器科または内科で診察を受けることが大切です。

原因:狭心症

治療法:薬物療法、外科療法

チェック方法:突然の胸痛、上腹部痛、背痛、左肩から腕にかけてのしびれや痛み

関連する病気: 狭心症

3)激しい胸の痛み、乾いた咳、呼吸困難が現れる

ちょうど、タイヤがパンクした時のように肺の一部が破れて空気がもれると、激しい胸の痛みや乾いた咳などを起こすことがあります。これは、自然気胸と呼ばれる疾患。特に原因もなく、自然と穴が開くため「自然気胸」と呼ばれていて、背が高く、痩せた男性に見られることの多い病気です。軽症の場合は安静にしていれば自然と穴がふさがりますが、呼吸困難が続くなど重症の場合は手術治療が必要となります。

原因:自然気胸

治療法:安静、手術療法

チェック方法:胸の痛み、激しい咳、呼吸不全

関連する病気: 自然気胸

原因が内臓ではなくて、「心」にある胸の痛み

胸の痛みの原因は心臓などの内臓だけではありません。ときには、心で感じるストレスが胸の痛みとなって現れることもあります。次の症状が見られたら、念のため循環器科または内科で心臓の異常でないか確認してもらった後、医師の指示に従って、心療内科などを受診すると良いでしょう。

胸痛、動機、息切れ、めまいなどがする。胸の痛みは「ズキズキ」「チクチク」

安静時に突然、胸の痛みが感じられるなど、狭心症と似た症状が現れるものの、心電図など心臓の検査をしても異常が見つからないことがあります。この場合は、心臓神経症かもしれません。これは自律神経の乱れによって起こり、日頃からストレスが多い人や神経症の傾向のある人によく見られます。胸の痛みも、狭心症の発作が締め付けられるような激しい痛みであるのに比べて、心臓神経症の場合はズキズキ、チクチクする痛みであるのが特徴です。この場合はストレスの元凶を取り除くことが治療の足がかりとなるため、心療内科や精神神経科を受診しましょう。

原因:心臓神経症

治療法:薬物療法、カウンセリング

チェック方法:胸痛、動悸、息切れ、呼吸困難、めまい、強いストレス

関連する病気: 心臓神経症

【まとめ】

ここでは、よく見られる胸の痛みについて紹介しました。誰もが突然、胸の痛みが起これば不安を感じるはず。適切に医師の診察を受けるためにも、どのような痛みか(鈍い痛み、鋭い痛み、つかまれるような痛み、など)、どこが痛いか(左か、右か、背部か、いつも同じところか、など)、どのくらい維持するか、何をしたときに痛むかなど、詳しく医師に伝えられるよう、記録しておくと良いでしょう。

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