いきなりの下腹部痛。仕事で大事な会議に出席していたり、通勤電車の途中だったりしたら、突然のことで焦りますよね。お腹の痛みにはさまざまな種類があります。痛む場所や、痛み方、痛みが起きるタイミングなどによってそれぞれ特徴付けられ、原因を探ることができますが、ここでは下腹部にターゲットを当てて、痛みの原因を探してみます。合わせて、症状別の対処法も紹介するので、下腹部に痛みが出た時の参考にしてください。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

できるだけ早めに医師の診断を受けたほうが良い病気

次のような症状が見られたら、早めに医師の診断を受けたほうが良いでしょう。いずれも、自然治癒することはなく、適切な治療を行う必要がある病気です。医師の指示に従って、対処しましょう。

1)突然の激しい腹痛と吐き気。キリキリした腹痛が時間差で繰り返す

突然、キリキリした下腹部痛が起こり、合わせて吐き気を催したら、腸閉塞(イレウス)かもしれません。これは、食べたものが小腸や大腸の中で滞ってしまった状態。消化物が腸の中で詰まってしまったために起こります。腸管が癒着し、塞がれてしまったために起こる「機械的閉塞」と、腸の働きを司る神経に障害が発生して腸内の消化物が肛門へ移動できなくなったために起こる「機能的閉塞」の2種類にわけられます。機械的閉塞のうち、恐ろしいのは絞扼性(こうやくせい)の閉塞(イレウス)で、放置しておくと腸管が壊死するなど、命の危険に及ぶことがあります。この場合は緊急手術が必要なので、できるだけ早めに医師の診断を受けましょう。それ以外の閉塞でも、痛みが激しい場合は救急車を呼ぶなどして早めに対処しましょう。

原因:腸閉塞(イレウス)

治療法:薬物療法、外科療法

チェック方法:腹痛、嘔吐、便秘、お腹の張り、食欲不振、発熱

関連する病気: 腸閉塞(イレウス)

2)女性が下腹部痛に加えて、左右どちらかの下腹部が「太ってきた」「スカートがきつくなってきた」と感じたら

女性が下腹部の痛みに加えて、腹部膨満感や頻尿、便秘などの症状を感じることがあります。この時、左右どちらかの下腹部のウエストサイズが大きくなって、「スカートのファスナーが閉まりにくくなった」と感じたら、卵巣腫瘍かもしれません。卵巣と子宮をつなぐ卵管に腫れが生じた状態で、左右両方にある卵巣のうち、通常、どちらか片方に症状が現れますが、なかには両方に生じることもあります。腫瘍が大きくならないと気づきにくいので発見が遅れやすい病気であり、腫瘍の特性によりさまざまな病名に分類されます。もっとも多いのは卵巣嚢腫。これは卵巣のなかに液体成分が溜まって腫れている状態で、ほとんどのケースで良性です。しかし、放置しておくと下腹部の痛みや違和感が大きくなり、不妊の原因になることもあります。また、良性の卵巣嚢腫が悪化して卵巣がんになる可能性もあるので、下腹部に違和感を感じたら、念のため、早めに婦人科を受診すると良いでしょう。

原因:卵巣腫瘍

治療法:薬物療法、外科療法

チェック方法:腹部膨満感、下腹部痛、性器出血、便秘、頻尿

関連する病気: 卵巣腫瘍

3)月経量が多くなり、月経痛がある。腰痛、下腹部痛、頻尿が見られる

月経量が多くなったり、月経痛がひどくなったり、また、月経時以外に出血が見られたりする場合は、子宮筋腫かもしれません。これは、子宮を構成している筋肉に腫瘍ができた病気で、30歳代以上の女性に多く見られます。症状は腫瘍のできた場所によって異なりますが、一般的に下腹部痛や下腹部の膨らみ、頻尿などのほか、月経量が多くなったことによる貧血や立ちくらみが見られることもあります。また、不妊の原因になることもありますので、特に妊娠を希望する女性は早めに婦人科で診察を受けると良いでしょう。

原因:子宮筋腫

チェック方法:月経過多、下腹部痛、不正出血、貧血、めまい、動悸、息切れ

治療法:外科手術、薬物療法

関連する病気: 子宮筋腫

4)激しい痛みが下腹部から背中、腰、脇腹へ広がり、数時間続く

激痛が下腹部から背中や腰、脇腹へ広がっていき、それが数時間続く場合は尿路結石かもしれません。これは、腎臓や尿管、膀胱、尿道など、尿の通り道である尿路に結石ができる病気のこと。女性よりも男性に多く見られ、同じ姿勢を保っていられないほど、激しい痛みが特徴です。冷や汗、悪心、嘔吐などを伴う場合もあり、発熱が見られることも。原因は尿路感染や尿路の通過障害のほか、水分の過剰摂取などが挙げられます。とにかく痛みが激しいので、このような症状が現れたら早めに泌尿器科を受診した方が良いでしょう。

原因:尿路結石

治療法:薬物療法、外科手術

チェック方法:下腹部から背中、脇腹などに激しい激痛、吐き気、嘔吐、冷や汗

関連する病気: 尿路結石

5)下腹部痛のほか、排尿痛や頻尿、尿の濁りなどが見られる

尿をするときに痛みが生じたり、尿に濁りが見られたり、また、頻繁に尿意を催したりする場合は、急性膀胱炎を疑います。これは、尿道から細菌が侵入し、膀胱が感染して起こる病気。トイレや性交渉を通して感染しやすく、男性より女性に多く見られます。抗菌薬を服用することで、約1週間程度で完治しますが、症状が長く続いたり、繰り返したり、また、血尿が出たりする場合は前立腺がんや膀胱結石など、他の疾患が隠れているかもしれません。泌尿器科を受診することをお勧めします。

原因:急性膀胱炎

治療法:薬物療法

チェック方法:下腹部痛、排尿痛、頻尿、尿の濁り、残尿感、血尿

関連する病: 気急性膀胱炎

がんが原因で、下腹部に痛みが現れていることも

次のような症状が見られたら、もしかしたら、がんが原因かもしれません。早めに内科または消化器内科を受診しましょう。

1)下腹部痛や下痢、便秘、腰痛がある。最近、体重が減ってきた

このような症状が現れた場合、大腸がんの可能性も疑われます。大腸がんは初期の症状が乏しく、気づいた時にはステージが進んでいた、ということも珍しくありません。下腹部痛や下痢、便秘、腰痛、体重減少が起こっている場合はすでに早期がんのステージを超えて、進行がんの領域に入っていることが多いのです。しかし、少しでも早く医師の治療を受ければ完治の確率は高まります。大腸がんで亡くなる人の数は、年々増加しています。特に、40歳を過ぎると大腸がんの発症確率が高くなるので、異常が見られなくても、定期的に内視鏡検査など精密検査を受けることをお勧めします。

原因:大腸がん

治療法:外科手術、薬物療法

チェック方法:下腹部痛、便秘、下痢、出血、体重減少

関連する病気: 大腸がん

2)下腹部痛や不正性器出血がある

不正に性器から出血したり、性交時に接触出血があったりする場合は、子宮がんかもしれません。子宮がんとは文字通り、子宮にできるがんのこと。がんの発症する場所によって「子宮頸がん」と「子宮体がん」に分類されます。子宮頸がんは、子宮と膣をつなぐ子宮頸部にできるがんであり、一方、子宮体がんは子宮上部にできるがん。子宮頸がんは20〜30歳代の女性に、子宮体がんは40〜60歳の女性に多く見られますが、どちらも検診を定期的に受けることで早期に発見することが可能です。がんが進行すると下腹部痛が見られるため、不正出血なども気になるようなら婦人科を受診することをお勧めします。

原因:子宮がん

治療法:外科手術、薬物療法

チェック方法:不正出血、下腹部痛

関連する病気: 子宮頸がん子宮体がん

心理的な問題が、腹痛の原因になっている場合

緊張するとお腹がキリキリ痛くなったりすることはありませんか。実は、脳と腸はとても密接に関係していて、脳が緊張やストレスを感じたりすると、腸にトラブルが起こりやすいのです。

下痢と便秘を繰り返すが、血液検査や内視鏡検査をしても腸に異常が見つからない

何度も下痢と便秘を繰り返すのに、病院で検査をしても何の異常も見つからないという場合があります。これは多くの場合、過敏性腸症候群(IBS)が原因。これは日本人のおよそ7人に1人がIBSに当てはまると推定されており、特に、20〜30代の若い世代に多く見られる病気です。発症する原因は現在も解明中ですが、最近の研究により、何らかのストレスが原因となって腸の働きを乱していることがわかっています。男性は下痢を、女性は便秘を繰り返しやすく、その他、お腹にガスが溜まる感じがしたり、腹部が張ったりする人も多いようです。根本治療はなかなか難しく、必要に応じて薬物療法を取り入れながら、ストレスを溜めない規則正しい生活を心がけたり、必要があれば医師やカウンセラーによるカウンセリングを受けたりして、病気とうまく付き合っていく姿勢が大切です。

原因:過敏性腸症候群

治療法:生活食事指導、薬物療法、カウンセリング

チェック方法:下痢と便秘を繰り返す、下腹部痛、腹部膨満感、ガスだまり

【まとめ】

日常的な下腹部痛に悩まされ、痛みが現れたときだけ治療薬を服用して、とりあえず痛みから逃れている人も多いのではないでしょうか。しかし、なかには下腹部痛が頻繁に起こったり、下痢と便秘を繰り返したりするために生活の質自体が落ち、それ自体がストレスになっていることもあります。些細なことでも困ったら、ぜひ医師に相談を。原因が追求できたということだけでも安心感につながり、ストレスを減らすことができるはずです。

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