腹痛には、さまざまな種類があります。チクチク痛むものやシクシクと痛むもの、また、差し込まれたように痛むものなどがありますが、なかには下痢や吐き気などを伴うものもあります。じっとしていれば耐えられる腹痛ならまだしも、急に下痢や吐き気が起こると、外出先で不安になることも多く、少しでも早く治したいものですよね。では、下痢や吐き気を伴う腹痛にはどのような病気があるのでしょう。症状が起こるタイミングや原因による違いごとに、病気の可能性を見てみます。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

ウイルスと細菌感染による腹痛

腹痛の中には、ウイルスや細菌に感染したことが原因で起こるものもあります。これらはウイルスや細菌が体外から排出されれば、自然と症状が治まります。しかし、あまりにも下痢や吐き気が続く場合は脱水症状を起こすこともあるので、症状が辛い場合は我慢せず医師の診断を受けた方が良いでしょう。ここではよく見られるウイルスや細菌性の腹痛について挙げてみます。

(1)腸炎ビブリオやサルモネラなど細菌による食中毒

日本で起こる食中毒の中で、もっとも多いのが腸炎ビブリオとサルモネラ。そのほか、カンピロバクター、ウエルシュ菌が原因となって起こることもあります。腸炎ビブリオは主に夏季、海産魚介類を食べたことが原因で起こります。一方サルモネラは、この菌を保有している豚や牛などの肉を食べたり、感染しているペットに触れたりすることで起こります。どちらも吐き気や腹痛、発熱などを引き起こし、抗生物質などを使用して治療します。下痢止めを使用すると、かえって回復を遅らせることもあるので、使用しない方が無難です。決して、生の肉は食べないこと。また症状が見られたら、脱水に気をつけて水分摂取を心がけましょう。

原因:腸炎ビブリオやサルモネラなどの細菌感染
チェック法:激しい腹痛、下痢、嘔吐
治療法:抗生物質
関連する病気: 腸炎ビブリオ食中毒 サルモネラ食中毒

(2)ノロウイルス感染症

通年みられ、特に冬季に多く発症するノロウイルス感染症。ノロウイルスが体内に入ったことにより、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などの症状が起こります。症状がとても激しく、子どもから大人まで年代問わずに発症します。しかし通常なら、1、2日経過すると自然に病状が回復し、後遺症などが残ることもありません。ノロウイルスに感染した場合は、水分をしっかりとって脱水症状に気をつけることが大切。もし、脱水がひどくて痙攣などの症状が見られる場合は、医師の診断を受けましょう。

原因:ノロウイルス感染
チェック法:激しい腹痛、下痢、吐き気、嘔吐
治療法:薬物療法

関連する病気: ノロウイルス感染症

(3)ロタウイルス下痢症

乳幼児や子どもに多い急性の疾患で、突然、激しい嘔吐や下痢、39度以上の発熱が起こります。便の色が白くなったり、水様性の下痢が大量に続いたりすることもあります。通常1週間以内で下痢の症状は治まりますが、けいれんなどの症状が見られたら、速やかに病院へ行きましょう。

原因:ロタウイルス下感染
チェック法:激しい嘔吐、下痢、39度以上の発熱
治療法:薬物療法

関連する病気: ロタウイルス下痢症

食前や食中、食後にお腹が痛む

普段はなんともないけれど、食事をするとお腹が痛んだり、吐き気が現れたりする場合もあります。この場合は、次のような病気が疑われます。

(1)胃・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸に潰瘍があると、食事の前後や最中にお腹に痛みが現れます。痛みが現れる時間帯は潰瘍がある場所で異なり、胃に潰瘍がある場合は食後30分から1時間くらい経ったあと、十二指腸に潰瘍がある場合は空腹時に痛みます。潰瘍とは胃酸の影響を受けて腫瘍になったもの。胃潰瘍は40歳以降に多く見られ、十二指腸潰瘍は10〜20代の若者に多く発生します。胃・十二指腸潰瘍の原因は、主にピロリ菌感染であり、潰瘍がひどくなると吐血や下血が現れることも。出血がある場合は内視鏡による止血治療が行われることが多く、また、止血がない場合は薬物療法によって原因となるピロリ菌を除菌したり、胃酸の分泌を抑え、胃の防御機能を高めたりする治療が行われます。定期的にピロリ菌検査を受けたり、胃カメラ(内視鏡)検査を受けたりして、フォローすることが大切です。

原因:ピロリ菌感染
チェック法:食前または食中食後の上腹部痛、胸焼け、吐き気、嘔吐
治療法:薬物療法、内視鏡治療

関連する病気: 胃・十二指腸潰瘍

(2)機能性ディスペプシア

胃の痛みや吐き気、胃もたれなど不快な症状が続いているのに、病院で検査を受けても異常が見つからないということがあります。この場合は、機能性ディスペプシアかもしれません。これはかつて「神経性胃炎」や「ストレス性胃炎」と呼ばれていたもの。命に関わる病気ではありませんが長引くことが多く、日常生活に支障を起こすこともあります。日本人の4人に一人が機能性ディスペプシアを持っているという調査結果もあるくらい一般的な病気で、原因は胃の動きが低下していることや、胃酸の刺激を受けやすくなっていること、ピロリ菌による炎症などのほか、ストレスが関与しているとも言われています。少ししか食べていないのに、いつまでも胃の中に食べものがあるような胃もたれの感じがしたり、すぐに満腹になってしまったり、みぞおちあたりに痛みを感じたりするのが代表的な症状。過食や早食いを避ける、不規則な食生活を改める、喫煙や過度のアルコール、炭酸飲料をやめるなど、食生活を見直すとともに、薬物療法によって治療を行います。

原因:ピロリ菌感染、胃の機能低下、ストレス
チェック法:食後すぐに満腹感を感じる、食後のもたれ感、みぞおちの痛み
治療法:薬物療法

関連する病気: 機能性ディスペプシア

(3)胆石

脂っこい食事をとったり、食べ過ぎたりした時に、上腹部あたりに痛みを感じたら、胆石かもしれません。胆石は胆のうや胆管にできる“石”。石のもととなっているのは胆汁の成分で、主にコレステロールが結晶化したことによって作られます。胆石が小さいうちは痛みを起こさないため自覚症状は少なく、自然に排出されることもありますが、実際には成人の10人に1人に胆石があるといわれるほど一般的な病気です。胆石が大きくなると、食後、身をよじるほどの激しい痛みが起こり、黄疸を伴うことがあります。とくに胆石ができやすいのは40歳以上の女性とされ、胆石がある人は胆道がんを発症しやすいというデータもあります。治療法は程度により異なりますが、薬で胆石を溶かしたり、内視鏡で胆石を除去したり、外科手術で胆のうを摘出したりします。

原因:コレステロールの増加
チェック法:食後の上腹部痛、吐き気、黄疸
治療法:薬物療法、外科手術
関連する病気: 胆石

吐き気よりも、下痢などの便通異常がひどい

吐き気より、下痢などの症状がひどい場合は、次のような病気が疑われます。

(1)潰瘍性大腸炎

下痢や軟便が続いたり、血便が見られたりする場合は、潰瘍性大腸炎かもしれません。体重が減少したり、全身の倦怠感を感じたりすることもあります。潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜に炎症が起きて、ただれたり、潰瘍を作ったりする病気のこと。年々患者数が増加していて、発症年齢はさまざまですが、特に男女とも20代の若年層に多く見られます。主な原因は免疫異常で、これに遺伝的素因や食生活、腸内細菌叢の変化などが加わって発症します。また、ストレスが原因で悪化することもあります。通常薬物療法により治療を行いますが、症状が落ち着いている状態と、悪化している状態を繰り返すことが多く、根気よく治療に取り組むことが求められます。

原因:免疫異常、遺伝的素因、食生活、腸内細菌叢の変化
チェック法:下痢・軟便などの便通異常、腹痛
治療法:薬物療法
関連する病気: 潰瘍性大腸炎

(2)過敏性腸症候群

腹痛とともに、便秘や下痢を慢性的に繰り返す病気を過敏性腸症候群 (IBS)と言います。検査をしても大腸に異常が見つからないのが特徴で、日本人のおよそ7人に1人がIBSに当てはまると推定されています。症状は人によってさまざまですが、「下痢を繰り返す」「便秘を繰り返す」「下痢と便秘を交互に繰り返す」という3タイプに大別されます。原因は身体的または精神的ストレスであることが多く、そのため、ストレスを溜めない生活を心がけることが治療の第一歩。また、腸に負担となるような食べ物(高脂肪の食べ物や刺激物など)は避け、腸をいたわることも大切です。また、症状によって薬物療法も有効なので、内科や胃腸科、消化器科などで診断を受けると良いでしょう。

原因:ストレス
チェック法:腹痛を伴う下痢または便秘が慢性的に続く、腹部膨満感、腹鳴、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如
治療法:生活・食事指導、薬物療法、心身医学的治療

関連する病気: 過敏性腸症候群

【まとめ】

このように、下痢や吐き気を伴う腹痛にはさまざまな原因が隠れています。食中毒やウイルス感染など、原因が思い当たれば適切に対処することは難しくありません。しかし、慢性的に症状が続くと、辛い症状でも我慢してしまう人も多いのではないでしょうか。激しい腹痛や便通の異常はストレスなどの心因的な問題が原因となっているものもあるため、内科的な治療だけでなく、心療内科や精神科を受診してみることも考慮に入れてみましょう。

【激しい腹痛の原因と対処法】下痢や吐き気を伴う腹痛から考えられる病気の詳細

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