食事をした後、キリキリと胃が痛み出したり、突然の下痢に襲われたりすることはありませんか。「食べ過ぎたかな」「食中毒だろうか」など、不安になることもあるかと思います。食後、すぐに体を動かした時などは腹痛や胃痛、下痢が起きる場合がありますし、そうした時は少し体を休めて安静にしていると、自然と痛みが治まってくるはず。しかし、体を休めても全然痛みが治まらなかったり、そうした痛みが頻繁に起こったりする場合は、もしかしたら別の病気が隠れているのかもしれません。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

食後、すぐに腹痛や下痢が…! 原因が「胃」にある場合

食事中や食後すぐに腹痛や下痢が起こる場合、どのような病気が隠れている可能性があるのでしょうか。ここでは、よく見られる病気をあげてみます。

(1)胃潰瘍

食事中あるいは食後すぐに胃の痛みが起こった場合は、胃潰瘍が疑われます。ズキズキと重苦しい痛みがみぞおちのあたりに起こり、そのほかにも腹部膨満感や胸焼け、嘔吐、悪心、げっぷなどがみられることもあります。胃潰瘍とは、胃の粘膜に炎症が起こり、いの粘膜や胃壁が損傷してしまうこと。食べものが胃の中で潰瘍を刺激するため、激しい痛みを引き起こすのです。胃潰瘍の原因は、主にピロリ菌感染や非ステロイド性の消炎鎮痛剤があげられ、ここにストレスが加わることで、これらが潰瘍を作るリスクが高まるとされています。一般に、「ストレスで胃に穴が開く」と言われるのは、このため。放置しておくと本当に胃に穴が開いたり、下血や吐血を引き起こしたりする場合もあるので、早めに医師の診断を受けましょう。

原因:ピロリ菌感染、非ステロイド性の消炎鎮痛剤
チェック法:食事中または食後の胃痛、胃もたれ、腹部膨満感、胸焼け、嘔吐、悪心
治療法:薬物療法
関連する病気: 胃潰瘍

(2)機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)

胃潰瘍に似た胃の痛みが起きるのに、検査をしても異常が見つからないことがあります。この場合は、機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)かもしれません。これは以前、神経性胃炎や慢性胃炎、ストレス性胃炎と呼ばれていた病気です。食後のもたれ感や早期膨満感、みぞおち辺りの痛みが代表的な特徴で、これらが頻繁にみられる場合は、医師の診断を受けると良いでしょう。命に関わる病気ではありませんが、食後いつも胃の痛みに悩まされていたのでは、生活の質が下がってしまいます。原因としては、ピロリ菌に感染している、胃の働きが低下している、胃酸の刺激を受けやすくなっている、ストレスが影響している、など考えられます。胃酸の出過ぎを抑える薬や、消化管の運動機能を調整する薬を処方したり、また、ピロリ菌に感染している場合は菌を除去する治療が行われたりしますが、同時に生活習慣を整え、しっかり休息をとったり、胃に優しい食べものをとったりする工夫も必要になります。

原因:ピロリ菌感染、胃の機能低下、ストレス
チェック法:胃痛、早期膨満感、胃もたれ
治療法:薬物療法
関連する病気: 機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)

(3)逆流性食道炎

食べたものを消化する胃液は、非常に強い酸性です。この胃液が何らかの理由で逆流して食道に上がってきたり、また、胃で消化されている途中の食べものが食道へ上がってきたりすると、食道の粘膜が酸性の胃液で傷つけられてしまいます。これが逆流性食道炎です。通常、胃から食道へ食べ物や胃酸が逆流することがないように、食道と胃のつなぎ目にある下部食道括約筋という筋肉が働いています。しかし、この筋肉の働きが弱まったり、胃酸が増えすぎたりすると、胃から食道へ胃酸や消化途中の食べものが逆流。食道を傷つけてしまうのです。逆流する原因は、脂肪分の多い食事のとりすぎや、肥満、加齢、嘔吐の繰り返しなどさまざまです。医師の診断を受けて、適切な治療を行うことが大切です。

原因:高脂肪の食事、肥満、加齢、嘔吐の繰り返し
チェック法:胃痛、胸焼け、呑酸、喉の違和感、不眠
治療法:薬物療法
関連する病気: 胃食道逆流症

食後の腹痛・下痢、原因が「腸」にある場合

食後の腹痛や下痢の原因が腸にある場合をみてみましょう。なお、胃と腸の痛みは広範囲に及ぶことが多く、自分では原因がどこにあるのか見極めることが困難です。安易に自己判断せず、医師の診断を受けることが必要です。

(1)過敏性腸症候群

近年、とても患者数の増えている病気のひとつ。過敏性腸症候群(IBS)は、主にストレスが原因となって下痢や便秘などの症状を引き起こします。症状によって下痢を繰り返す「下痢型」、便秘を繰り返す「便秘型」、下痢と便秘を交互に繰り返す「混合型」に分類されますが、いずれの場合も、内視鏡などで腸の検査をしても異常が見つからないのが特徴。現在では、日本人のおよそ7人に1人が過敏性腸症候群に当てはまると推定されており、特に、30代より若い年代に比較的多くみられます*。ストレスによって腸が脳からの刺激に対して過敏になり、便通の異常が起こっているため、根本的に症状を改善するにはストレスマネジメントやセルフケアが必須。必要に応じて心療内科などで診察を受けることも助けになります。

*Hiroto Miwa. Patient Prefer Adherence. 2008; 2: 143-147.

原因:ストレス
チェック法:腹痛を伴う下痢または便秘が慢性的に続く、腹部膨満感、腹鳴、頭痛、疲労感、抑うつ、不安感、集中力の欠如
治療法:生活・食事指導、薬物療法、心身医学的治療
関連する病気: 過敏性腸症候群

(2)潰瘍性大腸炎

大腸の粘膜が炎症を起こし、ただれや潰瘍を引き起こしている状態のことを、潰瘍性大腸炎と呼びます。若年者から高齢者まで幅広く発症しますが、主なピークは男女とも20代。しかし最近では、40代以降でも多くの人が発症しています。症状は下痢や血便、発熱、腹痛、体重減少などで、特徴的なのは、症状が顕著に現れる「活動期」と症状が治っている「寛解期」を繰り返すこと。適切な治療を行えば寛解期をキープすることができますが、中途半端に治療を中断してしまうと、何度も症状を繰り返すことも。原因は未だはっきりされておらず、免疫異常が関係しているとされています。潰瘍性大腸炎の患者は大腸がんの発症リスクが高いという研究結果もあるため、適切な治療を継続することが大切です。

原因:免疫異常、遺伝的要因、不規則な食事、腸内細菌叢の変化
チェック法:下痢・軟便などの便通異常、腹痛
治療法:薬物療法

関連する病気: 潰瘍性大腸炎

(3)クローン病

主に10〜30代くらいの若者に好発し、口腔から肛門に至る消化管のあらゆる場所に、炎症や潰瘍ができる病気のこと。腹痛、下痢、微熱、体重減少などが見られます。患者数は年々増加していて、男性に多いのが特徴です。原因は不明ですが、免疫異常のほか遺伝的素因や、食事や化学薬品、感染などの環境因子が複雑に絡み、発症のリスクを高めていると考えられています。根治するための治療法も未だ、確立されておらず、腸管の炎症を抑えたり、症状の軽減を図ったりするなどの対症療法が中心。脂肪分の多い食べものを避けたり、良質なタンパク質をとったりするなどして、病態をコントロールすることも大切です。

原因:免疫異常、遺伝的要因
チェック法:腹痛、下痢、微熱、体重減少
治療法:薬物療法

関連する病気: クローン病

【まとめ】

ほかにも、食後の腹痛や下痢を伴う病気にはさまざまなものがあります。また、女性は月経前になると女性ホルモンの一つであるプロゲステロンの分泌量が増えますが、これにより、胃腸の働きが抑えられ、胃痛や便秘などの症状が起こることもあります。一口に腹痛や下痢と言っても、速やかに治療が必要なものもあれば、休養を取れば自然と治るものもあり、一概に「医師の診察を受けるべき」ということはできません。しかし、放置しておくとがんなど重大疾患の発症リスクを高めるものもあるため、症状が続くようなら早めに医師の診察を受けた方が良いでしょう。

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