ずっと同じ姿勢で座っている時や、立っているときに腰痛が現れることもありますし、また、安静にしている時でさえ、腰痛に悩まされることもあります。腰痛がひどくなった結果、足のしびれや痛みまで現れた、という人もいるでしょう。腰痛にはさまざまな種類がありますが、足のしびれが症状に加わってきたときは、腰痛が悪化した合図かもしれません。ここでは、足のしびれや痛みを伴う腰痛について、原因と対処法を考えてみます。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

足のしびれを伴う腰痛、はじめに疑うのは「坐骨神経痛」

足のしびれや腰痛を引き起こす病気として、もっとも一般的なのが坐骨神経痛です。正確に言えば、坐骨神経痛とは病名ではなく、症状を示す言葉です。坐骨神経は人体の中でもっとも太く、長い末梢神経で、腰のあたりから足のつま先まで伸びています。この神経がなんらかの原因により圧迫されると、腰や臀部、太もも、ふくらはぎなどに鋭い痛みやビリビリとしたしびれを起こします。ここでは坐骨神経痛を引き起こす病気のうち、もっとも一般的なものを見てみます。

1)腰椎椎間板ヘルニア

背骨は、椎体という骨によって構成されていて、椎体と椎体の間にはクッションのような働きをする椎間板という軟骨があります。この椎間板がはみ出したり、飛び出したりして脊柱管に突き刺さり、付近にある神経を圧迫すると坐骨神経痛が起こります。中腰や前かがみの姿勢を長時間続けたり、急に重いものを持ち上げたりしたときに発症することが多く、痛みやしびれがひどいときは局所麻酔やステロイド薬の注射で症状を緩和します。また、手術によって椎間板の飛び出た部分を切除する場合もありますが、自然治癒することもありますので、詳しい治療法は症状を考慮しながら医師と相談しましょう。

原因:腰椎椎間板ヘルニア

チェック方法:腰痛、太ももから下肢にかけて電気が走ったようなしびれ・痛み

治療法:理学療法、薬物療法、外科手術

関連する病気: 腰椎椎間板ヘルニア

2)腰部脊柱管狭窄症

背骨には脳から続く神経が通っています。この神経の通り道を脊柱管と呼びますが、これが加齢による腰椎の変化によって狭くなった状態のことを、腰部脊柱管狭窄症と呼びます。これにより付近の神経が圧迫され、坐骨神経痛を発症します。腰部脊柱管狭窄症の特徴は間欠性跛行です。これは、歩き始めは特に問題がないのですが、しばらく歩くと脚が痛くなったり、しびれたり、こわばったりして歩けなくなる状態のこと。立つことで脊柱管がいっそう狭くなり神経を圧迫するためで、体が前かがみになると脊柱管がやや広くなり、痛みなどの症状は無くなります。日常的な姿勢に気をつけるほか、痛みを薬物療法で抑えるなど、対症療法が取られるのが一般的。症状がひどい場合は手術により、狭くなっている脊柱管の部分を広くして神経の圧迫を取り除くことも行われます。

原因:腰部脊柱管狭窄症

チェック方法:間欠性跛行、立っているときや歩行時の臀部痛・下肢痛、前かがみになると症状が楽になる

治療法:理学療法、薬物療法、外科手術

関連する病気: 腰部脊柱管狭窄症

3)変形性腰椎症

腰椎の形が変形し、神経を圧迫して腰の痛みや足のしびれを引き起こすこともあります。こうした状態を変形性腰椎症といい、これが腰部脊柱管狭窄症の原因となり、坐骨神経痛を引き起こすこともあります。腰の痛みがなくても、40歳を過ぎるとほとんどの人に見られる症状なので、通常は、あまり意識する必要はありません。しかし、椎間板や関節、靭帯が老化によって劣化すると棘状に変形した椎骨が神経を刺激し、痛みを発生する場合もあります。寝返りを打ったり、立ち上がったりしたときに痛みが現れるのが一般的で、動き続けていると徐々に痛みが緩和されていくのが特徴。痛みがひどい場合は整形外科を訪れ、適切な処置を行いましょう。

原因:変形性腰椎症

チェック方法:動き始めに腰痛がある、動き続けていると痛みが緩和される

治療法:理学療法、薬物療法、外科手術

関連する病気: 変形性腰椎症

4)腰椎分離・すべり症

本来、腰椎は積み木のように連なっていますが、これが前方へ滑り出てしまい、さまざまな症状を引き起こすことがあります。こうした状態を腰痛分離・すべり症と呼び、これによって引き起こされる症状のひとつが、坐骨神経痛です。分離の状態によりいくつかのタイプに分類されますが、もっとも多く見られるのが「変性すべり症」です。これは、椎間板が老化して不安定になったために腰椎がずれたもので、閉経を迎えた頃の女性に多く発症します。症状としては、歩行による下肢痛やしびれ感、間欠性跛行などが一般的。症状が見られたら、コルセットを着用して分離部の骨を癒合するほか、必要に応じて薬物療法や理学療法、マッサージやストレッチなどを行います。

原因:腰椎分離・すべり症

チェック方法:歩行時の下肢痛、しびれ、間欠性跛行

治療法:理学療法、薬物療法、外科手術

関連する病気: 腰椎分離・すべり症

こんな痛みやしびれには要注意! 早めに医療機関で診察を

坐骨神経痛は命のリスクがないとはいえ、次のような症状がみられたら、症状が悪化する前に、早めに医療機関で診察してもらうことをお勧めします。


・安静にしていても、痛みやしびれが激しい
・腰や下肢、会陰部がしびれ、排尿障害がある
・「歩いていると腰や下肢が痛むが、少し休むと痛みが解消される」という間欠性跛行を繰り返す
・腰痛や足のしびれに加えて、全身がむくんできたような気がする

これらの症状が現れたら、坐骨神経痛を引き起こす病気が悪化しているのかもしれませんし、あるいは、脊椎や骨盤内、子宮、前立腺などに他の病気が現れているのかしれません。特に、30〜40代の女性に多くみられる子宮筋腫は、筋腫が骨盤の神経や血管、直腸を圧迫することにより、腰の痛みや足のしびれを引き起こすこともあります。腰痛などの症状が気になる場合は整形外科で診断をつけてもらい、必要に応じて婦人科を受診すると良いでしょう。

【まとめ】

現在、日本人の多くが腰痛や足のしびれに悩まされています。ここで挙げたような病気が原因になっているものもあれば、原因がまったく不明というものも少なくありません。しかし、原因がよくわからないからといって、腰痛や足のしびれをそのまま放置しておくと生活に支障をきたし、QOLも低下させてしまいます。まずは、腰痛や足のしびれに悩んだら、整形外科で診察を受けましょう。その際、どんな時に腰痛や足のしびれを起こすのか自分で把握して、的確に医師に伝えられるようにしましょう。

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