女性の多くが経験する「更年期」。「更年期」とは一般に、閉経を挟む前後10年間のことをさします。だいたい50歳前後とされ、この期間にはホルモンバランスの変化により、心身にさまざまな不調が起こることも少なくありません。なかには手の指や手首、足首などに痛みが現れたり、動きが悪くなったりすることも。日常の動作が妨げられるため、ストレスに感じることも多いのですが、発症の原因と改善法を知っておくことで、痛みやストレスを和らげることは可能です。ここでは、更年期に起こりうる関節痛について、症状別に解説。合わせて改善法も紹介します。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

なぜ、更年期になると関節痛が起こる?

およそ45〜55歳ごろに迎える更年期。一体なぜ、関節痛が起こるのでしょう。まずは、更年期の仕組みを見てみましょう。

(1)エストロゲンの分泌減少で発生

そもそも更年期とは、女性ホルモンのバランスが変化することによって起こります。女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類がありますが、このうち、エストロゲンは30代半ばに分泌量のピークを迎え、その後、卵巣機能の低下とともに徐々に減少。この変化に体がついていかず、さまざまな不調が起こるのが「更年期障害」の正体です。エストロゲンの分泌をコントロールするのは脳の視床下部にある下垂体であり、この視床下部は自律神経もコントロールしているため、のぼせや不安感、イライラなど心にもさまざまな影響を及ぼします。

(2)自律神経の乱れと筋力低下で、関節炎が起こる

更年期障害は、イライラや不安感、だるさなど、メンタルに大きな影響を与えるほか、腰痛や肩こりなど肉体的なトラブルも引き起こします。それは一体なぜでしょうか。これには、いくつかの原因があります。まずは、加齢による体力の低下で首や肩、腰などの関節を支える筋肉が弱くなったこと。そして、自律神経の乱れが血行不良を起こし、疲労物質を蓄積させて痛みを感じやすくすること。そのため、普段から血行をよくしたり、適度な運動で筋肉に刺激を与えたりすることが、更年期障害による関節炎の予防には効果的です。

関連する病気: 更年期障害

症状別でみる。関節炎を起こす4つの病気

更年期障害は誰もが経験するものであり、決して特別なものではありません。「更年期障害で腰痛や肩こりが起こっている」とわかれば、それほど心配することもなく、食事や運動に気をつけることで、痛みを改善することも可能でしょう。しかし、なかには更年期障害が原因ではなく、病気が引き金となって関節炎を起こしている場合もあります。ここでは症状別に、関節炎を引き起こす病気を見てみましょう。

(1)朝に関節のこわばりが見られ、1時間以上続く。

もし、起床時などに手指などの関節がこわばって動かしにくかったら、関節リウマチかもしれません。更年期障害でも起床時に関節のこわばりが見られることがありますが、関節リウマチの場合はそのこわばりが1時間以上続くのが特徴。もし長時間続くようなら、関節リウマチを疑っても良いかもしれません。関節リウマチの原因は未だに不明ですが、免疫異常が関係していると言われています。すなわち、自己免疫のシステムが何らかのエラーを起こし、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃し、炎症を起こしたり、関節の腫れや痛みを引き起こしたりするのです。発症のピークは30〜50歳代で、男性より女性に多く見られます。放置しておくと、関節が破壊されて変形し、動かなくなってしまうこともありますから、発症後はできるだけ早く病院で治療を開始することが大切。関節のこわばりや痛み、腫れのほか、微熱、食欲減退、全身倦怠感、息切れ、リンパ腺の腫れ、貧血などが見られたら注意が必要です。

原因:関節リウマチ
チェック法:関節のこわばり、関節炎、微熱、全身倦怠感、食欲減退、息切れ
治療法:薬物療法

関連する病気: 関節リウマチ

(2)朝に関節のこわばりがあるが短時間。ドライマウスやドライアイの症状がある

関節が痛くなったり腫れたりするのは関節リウマチと似ているのですが、朝のこわばりが比較的短時間で治ったら、シェーグレン症候群かもしれません。これは中年女性に好発し、涙腺と唾液腺に異常が見られる自己免疫疾患です。特徴は、ドライマウスやドライアイの症状を引き起こすこと。自己免疫の異常が口の唾液腺や目の涙腺の働きを阻害して、ドライマウスやドライアイの症状を引き起こすのです。関節リウマチと併発して発症するケースも少なくありません。ドライマウス、ドライアイ、関節痛などの症状に気がついたら、できるだけ早めにリウマチ科の専門医の診察を受けましょう。

原因:シェーグレン症候群
チェック法:関節のこわばり、ドライマウス、ドライアイ
治療法:薬物療法

関連する病気: シェーグレン症候群

(3)関節の痛みに加え、体重増加、全身の倦怠感、記憶力の低下が見られる

食べる量は変わっていないのに、急激に体重が増加したり、全身がいつもだるかったり、記憶力や計算力の低下が見られたりする場合は、甲状腺機能低下症かもしれません。甲状腺とは、新陳代謝を調節するのに重要な働きをする臓器で、ヨードを材料として甲状腺ホルモンを作ります。しかし、この甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンの分泌量が減少すると、体にさまざまな不調をもたらします。甲状腺機能低下症にはいくつかの種類がありますが、もっともよく見られるのが橋本病。これは自己免疫機能の異常によって起こり、リンパ球が甲状腺を異物として攻撃し、甲状腺組織が破壊されることで発症します。男性に比べ、圧倒的に女性の患者が多く、特に40代以降で発症率が高くなります。甲状腺ホルモンを投与することによって軽快します。

原因:甲状腺機能低下症
チェック法:関節痛、全身倦怠感、むくみ、冷え性、体重増加、皮膚の乾燥、記憶力低下
治療法:薬物療法

関連する病気: 甲状腺機能低下症

(4)全身の筋肉痛や関節痛のほか、倦怠感やうつ症状がある

特定の部位だけでなく、全身に疼痛やこわばりが感じられるとともに、倦怠感やうつ症状が、睡眠障害、頭痛・頭重感が感じられたら、線維筋痛症かもしれません。これは明らかな異常がない、原因不明の疾患とされていて、症状は人によってさまざまで広範囲に渡ります。中年女性に多く見られ、心理的・社会的なストレスや外傷がきっかけとなって発症することが多いと考えられています。症状が慢性化しやすく、重症化すると日常生活に支障を及ぼすことも。体の広範囲にわたって痛みが長期間続いていたり、うつ症状や倦怠感が強かったりする場合は、早めに医師の診断を受けましょう。現在、特効薬はありませんが、痛み止めや精神安定剤などの薬物療法のほか、認知行動療法や心理療法、運動療法などを組み合わせて治療が行われます。

原因:線維筋痛症
チェック法:全身のいたみ、こわばり、うつ症状、睡眠障害、疲労感、倦怠感
治療法:薬物療法、心理療法、運動療法、認知行動療法

関連する病気: 繊維筋痛症

【まとめ】

確かに、50歳前後は体と心に不調を来たしやすい時期ですが、症状が深刻化する人もいれば、まったく悩まされない人もいます。「病は気から」という言葉もある通り、日常を明るく生き生きと過ごすには、前向きな心とポジティブさが大切。困った時には医療の力を借りながら、ウォーキングなどの運動を始めたり、栄養バランスのいい食事を心がけたりしながら、人生の”境目”である更年期を元気に乗り切りましょう。

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