息苦しさとひと口に言っても、その症状は様々。突然、呼吸困難におちいるほどの苦しさを感じる危険なものから、慢性的に「なんとなく苦しい」と感じるものまで、病気の種類や程度によって異なります。
息苦しさに「左胸の痛み」が加わると、生死に関わる重篤な病状が潜んでいる場合もありますので、すみやかな受診を。また、呼吸器系の病気でも同様の症状が多く見られます。慢性的な息苦しさを感じている人は、重症化を防ぐためにも適切な治療を受けましょう。
いっぽう、病院の検査で「異常なし」とされたのに症状が続く人は、心因性の可能性も。心療内科や精神科の受診で改善する場合もあります。
ここでは、息苦しさとともに、左胸に痛みが出る可能性のある病気をご紹介します。
仲 眞美子先生(アスクレクリニック上野)
医学博士。認定内科医、認定産業医、人間ドック検診専門医。
昭和50年、東京医科大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了。愛知県がんセンター第二内科・化学療法部国内留学。社会保険蒲田総合病院内科医長、他。イーク丸の内院長、医療法人社団葵会AOI国際病院健康管理センター所長を経てアスクレクリニック上野院長。

心臓に関わる病気の可能性

息苦しく、胸の痛みを伴う症状には、心臓に関する病気が潜んでいることもあります。緊急を要する場合もありますので、じゅうぶんに注意しましょう。

1)息苦しさや胸の痛みが15分以内でおさまる

息苦しさや胸の痛みの症状を伴う病気のひとつに、狭心症があります。狭心症は、高血圧や高脂血症、糖尿病などが原因で動脈硬化となり、冠動脈の内部が狭くなって心筋に酸素や血液が行き届かなくなることで起こります。吐き気のほか、みぞおちあたりの痛み、まれに背中の痛み、腕のしびれを感じることもあります。冷や汗が出るほどの激しい痛みから、チクチクとするような弱い痛みまで程度は様々ですが、安静にしていれば15分以内で治まることがほとんどです。
狭心症は、歩行や運動などの労作(ろうさ)によって起こる労作性心筋症、主に明け方や夜間などに冠動脈のけいれんによって起こる安静時狭心症など様々なタイプがあります。

原因:狭心症

治療法:薬物療法、手術

チェック方法:息苦しさ、胸の痛み、みぞおちあたりの痛み、吐き気

関連する病気: 狭心症

2)胸をえぐられるような痛みと呼吸困難のような息苦しさ

冠動脈の内部が狭くなって起こる狭心症に対し、冠動脈が完全に詰まって心筋が壊死するのが心筋梗塞です。狭心症の症状が徐々に悪化して心筋梗塞に発展する場合と、前触れもなく突然起こる場合があります。狭心症とは比べ物にならないほどの強い息苦しさ、胸の痛みが特徴で、胸の中をえぐられるような強烈な激痛を伴います。痛みの現れる部位は胸全体、下あごや頸部、左上腕に及ぶこともあります。冷や汗や嘔吐などの症状を伴うことも。発作が起きてから時間が経つほど重篤になり、命の危険が高まります。すぐに救急車を呼びましょう。

原因:心筋梗塞

治療法:薬物療法、手術、カテーテル治療

チェック方法:胸部の激痛、息苦しさ、圧迫感、背中・下あご・頸部・左上腕の痛み

関連する病気: 心筋梗塞

肺や気管など呼吸器に関わる病気の可能性

肺や気管など、呼吸器系の病気でも息苦しさや左胸の痛みを感じることがあります。なかには緊急を要するものも。そうでない場合も、放置すると重症化してしまうことが多いのが呼吸器疾患。早めの受診を心がけましょう。

1)症状が起こる前に、長時間同じ姿勢でいた場合に考えられる

突然の息苦しさや胸の痛みを感じたときは、肺血栓塞栓症の可能性があります。心臓から肺に血液を送る肺動脈に血栓(血の塊)が詰まり、血液の流れを妨げることで起こります。発汗や発熱の症状が見られることもあります。肺動脈が完全に閉そくしてしまい、肺の組織が壊死した状態を肺梗塞症と言います。
いちばん大きな原因はいわゆる「エコノミー症候群」で、長時間同じ姿勢でいることにより下肢にできた血栓が、血液の流れによって雪だるま式に大きくなって肺に移動し、肺動脈を閉塞させるというものです。寝たきりの人などは特に注意が必要です。死亡率が高い病気なので、循環器科や呼吸器かへの一刻も早い受診が必要となります。

原因:肺血栓塞栓症、肺梗塞症

治療法:薬物療法、手術

チェック方法:突然の胸の痛み、息苦しさを、症状が出る前に、長時間同じ姿勢でいた

関連する病気: 肺血栓塞栓症、肺梗塞症

2)息苦しさと共に、咳が出て胸が痛む

10代半ば~30代くらいの、やせ型の若い男性に多い気胸。肺の表面が膨らんでできた“ブレブ”という袋が破れることで起こります。肺に穴があいて空気がもれることにより、息苦しさや胸の痛み、咳、まれに肩の痛みを感じることもあります。肺の穴が自然にふさがることもありますが、ずっとあいたままで空気がもれ続けると、肺がしぼんで心臓に圧迫し、ショック状態になることもあるので危険です。気胸が起きているかどうかはレントゲン検査ですぐにわかります。突然の息苦しさや胸の痛みが治まらない場合は、すみやかに受診しましょう。

原因:気胸

治療法:薬物療法、チューブを使った持続脱気

チェック方法:突然の息苦しさ、胸の痛み、咳

関連する病気: 自然気胸

3)息苦しさ、胸の痛みと、慢性的な咳や痰が続く

慢性的な咳や痰が続き、息苦しく胸の痛みを感じる場合は、慢性閉塞性肺疾患(以下、COPDと略)の可能性があります。原因の9割は喫煙。有害な煙を長年吸い続けることにより、肺の組織が傷つき酸素の取り込みが悪くなったり、気管支が狭くなることで起こります。COPDは進行性の病気です。初期は、軽い運動などで息切れが起こる程度のため「年齢や体調のせいかな」と見過ごしがち。日常的な息苦しさを感じるようになった頃には、病状が進んでいることがほとんどです。ひどくなると痰の量が増え、頭痛や体重減少など全身症状に及びます。禁煙や適切な治療により、病気の進行を遅らせることができます。

原因:慢性閉塞性肺疾患

治療法:薬物療法、呼吸器リハビリ

チェック方法:慢性的な咳や痰が続く、息苦しい、安静時には症状が出にくい

関連する病気: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

4)明け方や夜中に特に症状が出る場合に多い

特に明け方や夜中に咳が出て、息苦しさや胸の傷みなどを伴う場合は、気管支喘息の可能性があります。最近は、大人の喘息も増えています。遺伝的な要因に加え、ダニや花粉、排気ガス、ほこり、カビなどのアレルギー物質で気管支の粘膜が傷つくことにより起こります。発作を繰り返すことで粘膜の壁が厚くなって気道が狭くなり、少しの刺激で発作を起こしやすくなってしまうという悪循環も。喘息の発作は、重症化すると呼吸困難となり、放っておくと死に至ることもあります。軽く考えず、症状が続く場合は専門医を受診しましょう。

原因:気管支喘息

治療法:薬物療法

チェック方法:夜間から明け方にかけて激しく咳が出る、息苦しさ、胸の痛み

関連する病気: 気管支喘息

5)息苦しさや胸の痛みのほか、痰や発熱などの症状がある

肺がんでも、息苦しさや胸の痛みを感じることがあります。一カ月以上続く咳、喀痰や血の混じった痰、発熱などの症状を伴う場合も。肺がんは主に、肺の入り口の太い気管支部分から、末梢までの間に起こる「気管支肺がん」や、肺の奥の部分にあたる肺野部に発生する「肺腺がん」として発生します。気管支肺がんは前述したような症状が出やすく、喀痰細胞診や気管支鏡で見つけやすいのが特徴。いっぽう、肺野部のがんは初期症状があまりないので注意が必要ですが、CT検査では比較的発見されやすいので、定期的な検診を心がけましょう。

原因:肺がん

治療法:手術、化学療法、放射線治療

チェック方法:4週間以上続く咳、息苦しさ、痰、血痰、胸の痛み

関連する病気: 肺がん

心因性によるものの可能性

息苦しさや胸の痛みが長き、病院では「異常なし」と言われたのにいつまでも良くならない……。そんなときは心因性による症状の可能性も。命に関わる切迫した状況ではありませんが、毎日を快適に過ごすためにも、心療内科や精神科の受診をおすすめします。

1)左胸がチクチク、ズキズキと痛む

狭心症の症状と似ていますが、左胸がチクチク、ズキズキと痛み、手で圧迫すると痛みが強くなるような場合は、心臓神経症の可能性があります。息苦しさや目まい、呼吸困難の症状を伴うこともありますが、命に別状はありません。多くはストレスや過労、心臓病に対する過度の不安から緊張状態となり、心拍数や動悸が増えることで起こります。心臓病との区別のために、まず検査をして、重篤な病状が潜んでいないかを確認します。心臓病でないと確認されたら、心療内科などで医師に相談するとよいでしょう。

原因:心臓神経症

治療法:薬物療法、カウンセリング

チェック方法:左胸にチクチク、ズキズキとした痛み、活動後ではなく安静時に起こる

関連する病気: 心臓神経症

2)強いストレスを感じたときに起きたり、他にめまいや動悸などの症状が現れる場合

過度のストレスや不安、緊張などの精神的なもので、呼吸の回数が通常より多くなる「過換気症候群(過呼吸)」が原因として考えられます。呼吸中枢が乱れることによる息苦しさや胸の痛みのほか、めまいや動悸、手足のしびれ、筋肉のけいれんなどが見られますが、これらの症状に不安を感じることで、ますます過呼吸が悪化するという悪循環の状態になります。
動脈血液ガスの検査で「炭酸ガス濃度が低く、アルカリ性」という結果であれば、この病気の可能性が高くなります。意識的に呼吸をゆっくりすることで、症状は徐々に落ち着いてきます。うつ病やパニック障害の人が発症しやすい病気でもありますが、逆にこれらを治療することにより、発症を抑えることもできます。

原因:過換気症候群

治療法:意識的に呼吸をゆっくり行う、薬物療法

チェック方法:息苦しさ、胸の痛み、めまい、動悸、筋肉のけいれん

関連する病気: 過換気症候群

【まとめ】

息苦しさとともに胸の痛みがある症状では、心臓や肺など、命に関わる病気が潜んでいることも考えられます。重篤な症状の場合、救急車を呼ぶなどすみやかな対応を取るのはもちろんですが、一旦治まったとしてもそのままにせず、早めに循環器科や呼吸器科を受診するようにしましょう。