突然発症した、顔の麻痺。前触れなく突然現れたら、誰もがびっくりしますよね。人目も気になりますし、このまま治らなかったらどうしようと不安になります。また、見た目の問題だけではなく、口から食べ物や飲み物がこぼれてしまったり、はっきりと言葉を話せなくなったりして、日常生活に支障を来たすこともあるかもしれません。ここでは、顔の麻痺を起こす病気をいくつか紹介します。病気の種類や麻痺の現れ方によって対処法が異なるので、しっかり確認しておきましょう。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

突然の顔面麻痺…ほとんどの場合、これらの病気が原因です

顔面麻痺を発症する原因としては、いろいろな病気が考えられますが、よく見られるのは次の三つです。

1)顔の片側に突然の麻痺。目が閉じにくく、額にしわを寄せられない

突然、片方の顔だけに麻痺が現れ、目が閉じにくくなったり、額にしわを寄せられなくなったり、顔が曲がったように見えることがあります。食事の時にも口から食べ物が溢れやすくなり、日常生活にもストレスを引き起こします。これは顔面神経麻痺(ベル麻痺)かもしれません。顔面神経麻痺(ベル麻痺)の原因は、ヘルペスウイルス感染症。口唇(こうしん)ヘルペスを患ったことのある人に発症するケースが多いようです。麻痺が軽度であれば予後は良好ですが、治療が遅れたり、症状が重症であったりする場合は、治癒率は若干低下します。麻痺が現れてから1週間以内に悪化することも多いので、異変が感じられたらできるだけ早めに耳鼻咽喉科専門医の診察を受けましょう。

原因:顔面神経麻痺(ベル麻痺)

治療法:薬物療法

チェック方法:片側の顔面麻痺、目が閉じられない、額にしわを寄せられない、食べ物が口から溢れる

関連する病気: 顔面神経麻痺(ベル麻痺)ベル麻痺

2)突然、顔の片側が麻痺。加えて、耳や耳の穴に水ぶくれやかさぶたができて、難聴、耳鳴り、めまいもある

顔の片側に急な麻痺が現れるのは、ベル麻痺と同じです。しかしそれに加えて、耳や耳の穴に水ぶくれやかさぶたができたり、難聴や耳鳴りなど耳に違和感を感じたりしたら、ハント症候群が疑われます。これは、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因となって起こる顔面麻痺で、ベル麻痺同様、顔面麻痺を発症する病気の中で、発症頻度の高いものです。症状は時間をあけて現れるため、初期はベル麻痺との区別がつきにくいかもしれません。しかし、治癒率はベル麻痺に比べて不良であり、後遺症が残ることもありますので、異変に気づいたら早めに耳鼻咽喉科専門医の診察を受けましょう。

原因:ハント症候群

治療法:薬物療法

チェック方法:片側の顔面麻痺、耳や耳の穴に水ぶくれやかさぶた、難聴、耳鳴り、めまい

関連する病気: ハント症候群

3)咳や発熱、咽頭痛が続いたあと、顔面など全身の筋力低下が起こる

風邪のような咳や発熱、咽頭痛、頭痛が続いた後、四肢や顔面の筋力低下が起こるのが、ギラン・バレー症候群です。顔面の筋力が低下すると喋りにくくなったり、食べ物を飲み込みにくくなったりするほか、顔面の筋肉が麻痺して目や口が閉じられなくなったり、外眼筋支配神経に異常が出て、ものが二重に見えたりすることがあります。通常は発症後4週間ほどで症状が治まり、ピークを過ぎれば自然と回復します。しかし、症状が重篤の場合は治るまで時間がかかり、なかにはなんらかの障害を残す人もいます。念のため、症状が出たら早めに医師の診察を受けると良いでしょう。

原因:ギラン・バレー症候群

治療法:薬物療法

チェック方法:風邪のような症状(発熱、咳、咽頭痛、頭痛)の後に四肢や顔面の筋力低下

関連する病気: ギラン・バレー症候群

腫瘍が原因で起こる顔面神経麻痺

腫瘍が原因となって顔面の麻痺を起こすこともあれば、腫瘍を摘出する手術によって顔面神経麻痺を発症することもあります。

1)片側の耳に難聴や耳鳴りが現れる。続いて、顔面麻痺や顔面痙攣が発症

突然、片側の耳に難聴や耳鳴りが現れ、続いてめまいや顔面麻痺、顔面痙攣を引き起こすことがあります。この場合は、聴神経腫瘍かもしれません。聴神経腫瘍とは聴神経を覆う細胞から発生する、良性の脳腫瘍です。腫瘍のある側の耳が聞こえにくくなったり、耳鳴りがしたりするほか、顔面の麻痺や嚥下障害などを引き起こします。治療は、手術による摘出がほとんどで、それほど危険を伴うものではありません。また、腫瘍の摘出手術がきっかけとなって顔面神経が損傷し、顔面麻痺を発症するケースもあります。

原因:聴神経腫瘍

治療法:外科手術、放射線治療

チェック方法:片側の耳の難聴、耳鳴り、顔面麻痺、嚥下障害

関連する病気: 聴神経腫瘍

2)難聴や耳鳴り、顔面麻痺に加えて、耳垂れに異臭があったり、血が混ざったりする

難聴や耳鳴りなど耳の違和感のほか、顔面麻痺が発症。さらに、耳垂れに異臭があったり、血が混ざっていたりしたら、中耳がんかもしれません。これは発症率が低く、珍しい病気ですが、初期のうちは自覚症状が乏しく、異変が現れる頃にはがんが深部に進んでいることも。鑑別診断が難しい病気ですが、早期に発見すればするほど完治の可能性が高く、治療後の合併症も少ないとされています。異変に気づいたら耳鼻咽喉科専門医の診察を受けましょう。

原因:中耳がん

治療法:外科手術、放射線治療

チェック方法:難聴、耳鳴り、顔面麻痺、耳垂れに異臭または混血

関連する病気: 中耳腫瘍

耳の病気が原因となって起こる顔面麻痺

次のような病気は放置すると合併症を引き起こすなど、リスクがあります。早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

1)糖尿病患者や高齢者に発症。耳痛・耳垂れに加えて顔面麻痺も

糖尿病の患者や免疫力の落ちた高齢者に発症しやすいのが、悪性外耳道炎です。これは緑膿菌が原因の外耳炎で、初期では耳が聞こえにくくなったり、耳垂れが出たりします。悪化すると難聴が現れたり、顔面麻痺が加わったりすることもあります。放置すると慢性化する危険性があり、また、免疫力が低下していると何度も再発することもありますので、適切な治療が必要です。治療は、糖尿病など基礎疾患の状態を把握しながら行わなければならないため、入院治療が原則。悪化すると合併症として脳神経麻痺を発症したり、死亡率も高くなったりするので、耳垂れや耳痛が長く続く場合は、早めに耳鼻咽喉科の専門医に相談してください。

原因:悪性外耳道炎

治療法:薬物療法、外科手術

チェック方法:耳痛、耳垂れ、難聴、顔面麻痺

関連する病気: 悪性外耳道炎

2)普段から鼻に持病があったり、鼻をすするくせがあったりする人が、難聴、めまい、耳垂れ、顔面麻痺などを発症

難聴やめまい、耳垂れのほか顔面麻痺を起こしたら、真珠腫性中耳炎かもしれません。これは一般的な中耳炎よりも重症とされる疾患で、放置すると髄膜炎や脳腫瘍を引き起こす可能性もあります。原因は、鼓膜の一部分が内陥したことが原因となって本来、外に排出されるべき耳垢が内部で増大し、「真珠腫」となってしまったこと。この耳垢の塊が周囲の骨や神経を圧迫し、さまざまな異常を引き起こします。特に、普段から鼻アレルギーや慢性副鼻腔炎など鼻の持病がある人、また、鼻をすする癖のある人に多く見られます。再発の可能性が高いので、根本的に治療する場合は外科手術が必要となります。

原因:真珠腫性中耳炎

治療法:外科手術、薬物療法

チェック方法:難聴、めまい、耳垂れ、顔面麻痺

関連する病気: 真珠腫性中耳炎

【まとめ】

このように、顔面麻痺の原因はウイルス感染によるものや耳の疾患などさまざまです。顔面の動きを司る顔面神経は、中耳や内耳と近いところを走行しているため、それらの疾患が原因となって起こっている場合が目立ちます。そのため、顔面麻痺の症状が見られたら、まずは耳鼻咽喉科を受診すると良いでしょう。

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