赤ちゃんが突然吐いたら、ママやパパはびっくりしますよね。もし初めての子育てなら、慣れないことにおどおどしてしまうかもしれません。しかし、赤ちゃんの体はまだ未発達なので、吐くことは珍しくないのです。「授乳が終わった途端、嘔吐した」「昼寝をしていたら、突然吐いた」というようなケースも日常茶飯事です。しかし、なかには病気が引き金となって起こっている嘔吐もありますから、そのときは適切な対処が必要。ここでは、赤ちゃんが嘔吐する原因として考えられる病気や、その原因について考えてみます。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

速やかに医療機関へ! 注意が必要な赤ちゃんの嘔吐

嘔吐に加えて次のような症状が見られたら、注意が必要です。できるだけ早めにかかりつけ医に相談しましょう。

1)腹痛や粘血便、腹部のしこりが見られる

腹痛や粘血便、腹部のしこりが見られたら腸重積症かもしれません。これは一般に2歳までの子どもに多く見られる病気で、本来は一本の管であるはずの腸が、腸の中に入り込んでしまっている状態のことを言います。特徴は、約20分間隔で激しい腹痛が起こること。原因もなく、赤ちゃんが20分おきに激しく泣くことで、察することができるでしょう。また、血液の混ざったトマトのような粘血便が見られたり、腹部を触ってしこりが感じられたりすることでも、判断することができます。放置すると腸管が破れて腹膜炎を起こすことも。命に関わることもあるので、早めに医師の診察を受けることが必要です。

原因:腸重積症

治療法:外科治療

チェック方法:嘔吐、腹痛、腹部のしこり、粘血便

関連する病気: 腸重積症

2)発熱と頭痛がある

急に高熱を出したり、頭痛を起こしたりする場合は、髄膜炎または脳炎かもしれません。風邪などで免疫力が落ちている時には、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなります。ウイルスや細菌が脳を包んでいる髄膜に入り込んだ時に起こるのが髄膜炎、脳内に入り込んだ時に起こるのが脳炎です。風邪の症状に似ているので見落としてしまいがちですが、治療が遅れると死亡することもあります。また、知的障害や体の麻痺など、後遺症が残ることもあるので、できるだけ早めに医師の診断を仰ぎましょう。

原因:髄膜炎、脳炎

治療法:薬物療法

チェック方法:発熱、頭痛、嘔吐、髄膜刺激症状、意識障害、痙攣

関連する病気: 髄膜炎、脳炎

3)突然の嘔吐に加えて、水溶性の下痢もある

突然の嘔吐が1~2日間続いたあと、水っぽい下痢が頻発し、脱水症状に至ることもあります。この場合は、ウイルス性急性胃腸炎が疑われます。原因は、ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルスなどのウイルス感染。主に、冬に流行するので「冬季下痢症」とも呼ばれています。嘔吐により脱水症状を引き起こすことが多いので、湯冷まし、麦茶、赤ちゃん用イオン飲料、経口補水液などを十分に与えることが大切。また、同居している家族への感染を防ぐために、下痢や嘔吐などの処理では手洗いを入念に行いましょう。

原因:ウイルス性急性胃腸炎

治療法:薬物療法

チェック方法:嘔吐、下痢、発熱

関連する病気: ウイルス性急性胃腸炎

先天性の異常や、慢性疾患により、嘔吐が起こっている可能性も

続いて、先天性の異常や慢性疾患が原因となって、嘔吐が起こるケースを紹介します。特に命の危険に及ぶものではありませんが、放置しておくと症状がさらに悪化することも。これらについても正しい知識を持って、適切な行動を取りましょう。

1)顔に黄疸が見られる

嘔吐のほか、顔に黄疸が見られたり、お腹に張りが感じられたりする場合は、先天性腸閉管症かもしれません。これは生まれつきの疾患で、腸管の通過が阻害されている状態のこと。放置すると、穿孔などの症状に至る場合があり、命の危険にも及びます。妊娠中に発見されることもありますが、産後に見つかった場合は、早急に新生児外科治療が可能な施設へ搬入し、適切な処置を行う必要があります。

原因:先天性腸閉管症

治療法:外科治療

チェック方法:嘔吐、お腹の張り、黄疸

関連する病気: 先天性腸閉管症

2)母乳を飲むたびに嘔吐して、脱水症状もある

生後2〜3週から3ヶ月位までの赤ちゃんが頻繁にミルクを嘔吐していたら、肥厚性幽門狭窄症を疑います。これは胃の出口にある幽門部の通過障害が起こり、その先にある十二指腸へ流れなくなって、嘔吐を引き起こす病気です。一般に、男児が女児の5倍多く発症すると言われています。生後2〜3週ころに嘔吐が始まるのが特徴なので、もしそのような症状が見られたら、かかりつけ医や小児科医に相談しましょう。放置しておくと、低体重が進み、悪化すると出生時の体重を下回ることもあります。

原因:肥厚性幽門狭窄症

治療法:薬物療法、外科手術

チェック方法:頻繁な嘔吐、脱水、体重増加不良

関連する病気: 肥厚性幽門狭窄症

3)「数日間嘔吐が続いたと思ったら、ケロッと治る」を繰り返す

1日に5回以上の嘔吐など、ピーク時には激しい嘔吐を繰り返します。それが数日間続いた後は自然治癒するのですが、しばらくして、数日間の嘔吐が再開することがあります。その場合は、周期性嘔吐症かもしれません。これには、体内で生成されるケトン体という物質が関係しています。ケトン体とは、体内の脂肪を分解した時に生成される物質で、これが血液中で増加しすぎると、一種の中毒症状を起こして吐き気をもよおすことになります。この仕組みから自家中毒症またはアセトン血性嘔吐症と呼ばれることもあります。子どもは代謝機能が未熟であるため、特に、2~10歳くらいの間でこのような症状が見られますが、通常、思春期になる頃には収まります。一時的な症状であれば病院へ行かず、様子を見ても良いでしょうが、もしかしたら他の病気が潜んでいるかもしれないので、気になるときは小児科医の診断を受けましょう。

原因:周期性嘔吐症

治療法:薬物療法

チェック方法:嘔吐、顔面蒼白、腹痛、食欲不振

関連する病気: 周期性嘔吐症

4)ある特定の食べ物を摂ると嘔吐する

特定の食べ物を摂った時に、腹痛、嘔吐、下痢、血便などの症状を引き起こすなら、消化管アレルギーを疑います。多くの場合、牛乳、鶏卵、小麦、魚介類、大豆などが誘引物質となります。発症時間が早いのが特徴で、多くは食後2〜3時間で発症します。消化管アレルギーが慢性化すると体重減少や貧血、脂肪便、腹部膨満などの症状が出てくることもあるので、「消化管アレルギーかもしれない」と思ったら、早めに小児科医で診察を受けましょう。負荷試験によってアレルギーを引き起こす原因となる食物を突き止め、アレルゲンを除去した食事に切り替えます。

原因:消化管アレルギー

治療法:食事療法

チェック方法:口唇の腫脹、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、貧血、体重増加不良、成長障害

関連する病気: 消化管アレルギー

【まとめ】

下痢や吐瀉物に血が混じっている、熱があるなど、日頃の嘔吐と違う場合は、もしかしたら病気が潜んでいるかもしれません。もちろん、問題のないケースもありますが、「おかしい」と思ったら、念のためかかりつけ医や赤ちゃんを出産した産婦人科に相談しましょう。また、日頃から育児日記を記録し、排便の状態や食べたもの、嘔吐したらその時間や内容などを細かく記録しておくと、診察時に役立ちます。

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