みぞおちとは上腹部の中心、つまり肋骨の間の骨のない部分を差します。「みぞおちを殴られると痛い」と言いますが、ここは多くの交感神経が通っているのに骨で覆われていないので、痛みに敏感で不調が出やすい場所なのです。
吐き気と共に、このみぞおちの痛みがある場合、その原因は日常的なものから深刻な病気までさまざま。みぞおちの周囲には胃腸を中心に、膵臓、食道、心臓、胆嚢など多くの臓器が集まっており、重い病気に関わる場合もあります。
吐き気に伴うみぞおちの痛みは鋭いか、鈍いか。痛むのは一部分か、全体的か、あるいは痛む場所が移動していないか。また、空腹時、食後、夜中など、いつ痛みと吐き気を感じるかをチェックしましょう。部位や痛み方が、病気を判断する手掛かりになります。
仲 眞美子先生(アスクレクリニック上野)
医学博士。認定内科医、認定産業医、人間ドック検診専門医。
昭和50年、東京医科大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了。愛知県がんセンター第二内科・化学療法部国内留学。社会保険蒲田総合病院内科医長、他。イーク丸の内院長、医療法人社団葵会AOI国際病院健康管理センター所長を経てアスクレクリニック上野院長。

胃腸の病気が原因の場合

みぞおちの痛みを伴う吐き気でもっとも多いのは、胃腸の不調や病気によるものです。急性胃炎、急性胃腸炎、胃・十二指腸潰瘍、盲腸などがあります。症状を自覚したら、胃腸科や消化器科を受診しましょう。

1)みぞおちが突然キリキリと痛み、吐き気や下痢をともなう場合に考えられる病気

急にみぞおちが痛む病気に「急性胃炎」、「急性胃腸炎」があります。胃が炎症を起こせば吐き気、腸が炎症を起こせば下痢を伴います。一過性の痛みではありますが、救急車で運ばれるほどの激痛のことも。また急性胃炎のうち、吐血・下血などの症状もあらわれるものを「急性胃粘膜病変」といいます。胃や腸が炎症を起こす原因はさまざまで、ストレスの場合もあれば、ウィルスや細菌、原虫などの微生物やその毒素の場合もあります。原因がはっきりしている場合はそれを取り除くとすぐに回復します。軽症の場合は注意深く様子を見て、重症の場合は内視鏡検査の可能な病院に行きましょう。

原因:急性胃炎、急性胃腸炎、急性胃粘膜病変

治療法:薬物療法

チェック方法:みぞおちの激しい痛みが急に起きたり止んだりする、もたれ感、食欲不振、吐血、下血

関連する病気: 急性胃炎急性胃腸炎急性胃粘膜病変

2)みぞおちの痛みや不快感、膨満感、食欲不振、吐き気がある場合に考えられる病気

胃炎でも「慢性胃炎」の場合は、みぞおちがなんとなく不快、膨満感がある、食欲不振などの症状が出ます。さらに、胃の炎症が強い時には、吐き気やみぞおちの痛みなど、急性胃炎の症状も併発します。その原因は、多くがピロリ菌の長期感染によるもの。すぐに検査し、ピロリ菌に感染している場合は除去が必要です。

原因:慢性胃炎

治療法:薬物療法

チェック方法:いつも胃が不快、胃もたれ、膨満感、食欲不振などが長期間続く

関連する病気: 慢性胃炎

3)食後や空腹時、ズキズキした重苦しい痛みを伴う吐き気がある場合は

胃や十二指腸の粘膜が、ピロリ菌やストレス、薬物などにより傷つき、さらに胃液や消化酵素が粘膜を荒らすことで「潰瘍」が起こります。この「胃・十二指腸潰瘍」が、吐き気とみぞおちの痛み原因になります。胃潰瘍の場合は胃に入った食べ物が胃壁を刺激するので食後30分から1時間後に起こります。また十二指腸潰瘍では、空腹時や夜に多く起こります。十二指腸潰瘍では、痛みが激しく、吐血・下血などを伴う場合は胃や十二指腸に穴が空く場合もあるので、急いで緊急外来を受診してください。

原因:胃・十二指腸潰瘍

治療法:薬物療法、手術

チェック方法:食後30分から1時間・あるいは空腹時や夜中にみぞおち周辺が痛む、吐き気、胸やけ、胃もたれ

関連する病気: 胃・十二指腸潰瘍

4)吐き気を伴い、痛みがみぞおちから右わき腹に移動する場合に考えられる病気

盲腸についている虫垂に炎症が起こった状態を「虫垂炎」と言います。急性虫垂炎の初期はみぞおちの痛みと吐き気が起きることが多く、その痛みが右わき腹や下腹部に移動していきます。「盲腸=虫垂炎」は手術すればすぐ治る簡単な病気だと思われがちですが、対応が遅れると他の病気を併発し、重症化するケースも。また腫瘍の場合もあります。移動する痛みと吐き気を感じたら、早めに消化器科を受診しましょう。

原因:虫垂炎

治療法:薬物療法、手術

チェック方法:みぞおちから右下腹や下腹部に痛みが移動する、ジャンプすると痛みが強くなる、右下腹を押して話すと痛みが強くなる、吐き気、発熱

関連する病気: 虫垂炎

胃腸以外の臓器が原因の場合

みぞおちの痛みを伴う吐き気の原因は、かならずしも胃腸にあるとは限りません。食道、心臓、膵臓、肝臓、胆のう、胆管など、さまざまな臓器にかかわる可能性が。これらの病気を紹介します。

1)みぞおちの痛みと吐き気、胸やけ、咳、口の中にすっぱい液が上がってくるなど、多くの症状がある場合

胃の消化物や胃液が食道の方に逆流すると、食道が胃酸にさらされて炎症を起こします。この症状の原因が「逆流性食道炎」です。この病気の症状は幅広く、胃酸の過剰分泌による咳や、胸やけ、口の中の苦み、声がれ、耳の痛みや不眠などが起きることがあります。放っておくと食道がんなど別の病気を併発する恐れもあるので、早めの治療を心がけましょう。

原因:逆流性食道炎

治療法:生活習慣の改善、内科的な薬物療法、手術など

チェック方法:みぞおちの痛みと吐き気、胸やけ、口の中の苦み、酸っぱい液体が口まで上がってくる、胸痛、咳、のどの違和感

関連する病気: 逆流性食道炎

2)嘔吐後、バットで殴られたようなみぞおちの痛みを感じた場合に考えられる病気

飲酒、食中毒、乗り物酔い、つわりなどによって何回か嘔吐し、その後に血を吐いた場合は、嘔吐によって食道と胃の境界部の粘膜に裂け目ができる「マロリー・ワイス症候群」の可能性が。さらに胸やみぞおちに激しい痛みが伴う場合は、嘔吐によって食道の内圧が上がり食道が破裂する「突発性食道破裂」を起こしている可能性があります。これは死亡の恐れもある重い病気なので、嘔吐の後、みぞおちに強烈な痛みを感じたら、ただちに病院へ。

原因:マロリー・ワイス症候群、突発性食道破裂

治療法:手術

チェック方法:嘔吐した後の激しいみぞおちの痛み、胸が苦しい、吐血、呼吸困難、冷や汗、顔面蒼白

関連する病気: マロリー・ワイス症候群特発性食道破裂

3)みぞおちや胸を突然圧迫されるような痛みが30分以上続き、吐き気が伴う場合

心臓病の症状は胸の痛みだけだと思われるかもしれませんが、そうではありません。「心筋梗塞」は心臓の一部の筋肉が壊死することで痛みが生じますが、その際に迷走神経が刺激を受け、吐き気を覚えることもあります。特徴は胸の痛みが30分以上持続すること。また痛みの部分が明確ではなく、胸の奥、みぞおちや背中、咽喉、頬、左肩なども痛くなります。重篤な病気なので、胸部やみぞおちに圧迫感のある痛みを感じ、吐き気や冷や汗があるときはすぐに病院へ。

原因:心筋梗塞

治療法:薬物療法、手術、カテーテル治療

チェック方法:みぞおちが締めつけられるような圧迫感と痛みが30分以上持続する、呼吸困難、吐き気、冷や汗

関連する病気: 心筋梗塞

4)鈍痛から激痛へ変わっていく場合に考えられる病気

「急性膵炎」の可能性があります。膵臓は胃の後ろにあり、背中近くに横たわる細長い臓器です。膵臓が炎症を起こすことによって、みぞおちに鈍痛から激痛へと変わっていく激しい痛みが起こります。この痛みはおへそや背中まで突き抜ける場合があり、ときには呼吸さえ耐えられないほどになってしまうことも。痛みは動くと悪化しますが、前かがみになったり背中を伸ばしたりすると痛みが和らぐ場合も。痛みは数日間続き、入院治療が必要になる場合も多い病気です。

原因:急性膵炎

治療法:絶飲絶食による安静、薬物療法

チェック方法:みぞおちを押すと痛みがひどくなり、お腹が硬くなっている

関連する病気: 急性膵炎

5)みぞおちの右上が痛く、吐き気や下痢がある場合に考えられる病気

A型肝炎ウィルスによる「A型急性肝炎」が考えられます。ウィルスが体に入ると、1ヵ月ほど経ってから、肝臓が大きくなることによりみぞおちの右側が痛み、吐き気、食欲不振、嘔吐、下痢、38度以上の発熱など、風邪によく似た症状があらわれます。茶色の便や白っぽい尿が出ることも。海外で感染する人が増えているので、衛生状態の悪い場所に行った後にこうした症状が出た場合は必ず病院へ行きましょう。

原因:A型急性肝炎

治療法:安静、輸液

チェック方法:みぞおちの右側が痛む、吐き気、食欲不振、嘔吐、下痢、発熱、倦怠感、茶色の便、白っぽい尿

関連する病気: A型急性肝炎

6)みぞおちの右側に激痛があり、吐き気、冷や汗や寒気を感じる場合

胆嚢や胆管が炎症を起こす「胆嚢炎」、「胆管炎」になると、みぞおちに冷や汗が出るほどの激痛が走ります。また、この時、胆石ができると胆石症となります。胆嚢や胆管での炎症や結石は、右のみぞおちから肩まで響くような痛みがあり、発熱、吐き気、嘔吐もみられます。重症化すると死に至ることもある病気なので、できるだけ早く医療機関に受診しましょう。

原因:胆嚢炎、胆管炎

治療法:絶食、薬物療法、手術

関連する病気: 胆嚢炎・胆管炎胆石症

その他の原因

内臓にはっきりとした異常がなくとも、自律神経の乱れによって、みぞおちの痛みを伴う吐き気がある場合もあります。

1)胃の不調を伴い、検査しても原因がわからないときに考えられる病気

精神的なストレス、極端な寒暖差などの身体的ストレス、不規則な生活リズムなどにより自律神経の乱れが引き起こされたときも、みぞおちの痛みを伴う吐き気を感じることがあります。こうした「心身症」の場合は、他に胃弱、消化不良、胃もたれなど、胃の不調が伴うことが多くあります。しかし、血液検査や内視鏡などの検査を受けても明確な異常はみつかりません。主に胃腸の神経が過敏になっていたりすることで症状が引き起こされている可能性があります。

原因:心身症

治療法:身体医学療法、心理療法、薬物療法

チェック方法:胃弱、消化不良、胃もたれ、検査をしても数値的な異常が出ない

関連する病気: 心身症

【まとめ】

みぞおちの痛みを伴う吐き気には一過性のものもありますが、深刻な病気が潜んでいる場合も多いので、放置しないで病院へ行きましょう。その際には、いつから、どのへんが、どのように痛いのかを説明できるとスムーズな受診ができます。

「胸やけ、吐き気、嘔吐」に関するおすすめ記事

みぞおち,胃痛,吐き気の関連コラム

頭痛・吐き気の原因は眼精疲労が原因? 眼精疲労の解消法

長時間パソコンを使ったり、本を読んだりしているとき、頭痛が起きたことはありませんか?<br>それ、眼精疲労から頭痛が発生してい... 続きを読む

みぞおちの辺りの腹痛 激しい痛みor鈍痛? 痛むのは真ん中・右・左?

お腹の上の部分、みぞおちあたりの痛み。胃痛?<br>それとも、ほかの病気?<br>どんな痛みがどの位置で起こったかで、疑われる病気が... 続きを読む