ちょっとお腹が痛むのはよくあることですが、何の兆候もなく激しい腹痛に襲われたら心配ですよね。ここでは、急な腹痛と吐き気が一緒に起こったとき、どんな原因や病気が隠れているかをご紹介します。
こうした症状で典型的なのが、食中毒やその二次感染によって、内臓に炎症がおきているケース。そのほか盲腸や結石など、炎症にはさまざまな原因があり、どこがなぜ炎症を起こしているかによって、症状や治療法も異なります。
点滴治療や内服薬、安静などで症状が緩和されることもありますが、なかには自然には治らず手術など緊急治療を必要とする場合もあるので要注意です。
仲 眞美子先生(アスクレクリニック上野)
医学博士。認定内科医、認定産業医、人間ドック検診専門医。
昭和50年、東京医科大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了。愛知県がんセンター第二内科・化学療法部国内留学。社会保険蒲田総合病院内科医長、他。イーク丸の内院長、医療法人社団葵会AOI国際病院健康管理センター所長を経てアスクレクリニック上野院長。

食中毒による急激な腹痛と吐き気、嘔吐、下痢

急な腹痛を伴う吐き気に加え、嘔吐や下痢を起こすのは、食中毒(食あたり)の典型的な症状です。食中毒は有害な細菌、ウイルス、化学物質、寄生虫などで汚染された食べ物や飲み物を誤って摂取することや、感染者からの二次感染などでも起こります。

1)下腹部の激しい腹痛や吐き気とともに、下痢がある場合に考えられる病気

食中毒で腸に炎症が起きる感染性腸炎では、激しい腹痛とともに吐き気、嘔吐、下痢、発熱などがあり、ときには血便が出ることもあります。原因としては、細菌ではサルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌など。ウイルスで多いのはノロウイルス、寄生虫は赤痢アメーバなどがよく知られています。知らずに行動して感染を周囲に広げてしまう恐れもありますので、突然の腹痛を伴う嘔吐や下痢があったらすぐに最寄りの医療機関で受診しましょう。

原因:感染性腸炎

治療法:薬物療法

チェック法:激しい腹痛、吐き気、嘔吐、下痢

関連する病気: 感染性腸炎

2)生の魚介類を食べた後、激しい腹痛と吐き気がある場合

生の魚介類を食べた後、激しい腹痛と吐き気がある場合は「アニキサス症」の可能性があります。アニサキスとは、魚類などに生息する寄生虫のこと。アニサキス類の幼虫が寄生したものを食べると、数時間後に突然激しい腹痛、吐き気や嘔吐に襲われます。また、半日以上から、長い時は1週間くらいたって腹痛に見舞われることもあり、この時は胃ではなく腸に虫が侵入していると考えられます。魚介類を食べたあとに体調が悪くなったら、内視鏡検査の可能な医療機関へ行きましょう。

原因:アニサキス症

治療法:内視鏡での摘出

チェック方法:症状を起こす前にサバ、アジ、スルメイカなどの魚類を食べている

関連する病気: アニサキス症

3)みぞおち右上の痛みと、吐き気や下痢、発熱などがある場合

食べ物や飲み物を通してA型肝炎ウィルスが体内に入ることで起こる「A型急性肝炎」が考えられます。ウィルスに感染して1ヵ月ほど経ってから、肝臓が大きくなることによってみぞおちの右側が痛み、吐き気、食欲不振、嘔吐、下痢、38度以上の発熱など、風邪によく似た症状があらわれます。茶色の便や白っぽい尿が出ることも。海外で感染する人が増えているので、衛生状態の悪い場所に行った後にこうした症状が出た場合は、肝炎を疑ってください。

原因:A型急性肝炎

治療法:安静して肝臓を回復させる、薬物療法

チェック方法:みぞおちの右側が痛む、吐き気、食欲不振、嘔吐、下痢、発熱、倦怠感などの風邪に似た症状

関連する病気: A型急性肝炎

痛む部位別で見分ける内臓の急性炎症

特別に悪い食べ物や飲み物を摂取したわけではないのに、さまざまな原因で内臓が急性の炎症を起こして、突然に腹部の痛みをともなう吐き気がすることがあります。どの部位が痛むかによって、どの臓器が炎症しているかが、ある程度わかります。

1)みぞおちが痛い場合に考えられる病気

みぞおちの痛みと吐き気が起こる場合は「急性胃炎」の可能性があります。細菌やウイルスによる場合が多く、食中毒が原因の場合もあります。それ以外にもストレスや外傷などにより起きることも。症状はみぞおちの痛み、もたれ感、食欲不振、嘔吐などで、重症だと吐血するケースも。軽症の場合は注意深く様子を見て、重症の場合は内視鏡検査の可能な病院の受診を。

原因:急性胃炎

治療法:薬物療法

チェック法:みぞおちの痛みに伴う吐き気・嘔吐、もたれ感、食欲不振、吐血

関連する病気: 急性胃炎

2)みぞおちや左上腹部が痛い場合に考えられる病気

膵臓の「急性膵炎」が考えられます。膵臓は胃の後ろで、背中近くに横たわる細長い臓器です。急性膵炎によるみぞおちの痛みは、鈍痛のこともあれば激痛のことも。痛む場所がおへそや背中まで突き抜ける場合があります。ときには呼吸さえ耐えられないほど痛むことも。痛みは動くと悪化しますが、前かがみになったり背中を伸ばしたりと体勢を変えることで痛みが和らぐ場合もあります。また、痛みと吐き気の他、発熱を伴うことも。膵炎によるみぞおちの痛みは数日間続き、入院治療が必要になる場合も多いです。

原因:急性膵炎

治療法:絶飲絶食による膵臓の安静、薬物療法

チェック方法:みぞおちや左上腹部の鈍痛・激痛、吐き気、嘔吐、発熱

関連する病気: 急性膵炎

3)みぞおちから右わき腹、下腹部に痛みが移動する場合に考えられる病気

盲腸についている虫垂の炎症である「虫垂炎」の可能性があります。初期はみぞおちの痛みと吐き気があらわれますが、その痛みが右わき腹や下腹部に移動していったら虫垂炎を疑いましょう。手術すればすぐ治る簡単な病気だと思われがちですが、腫瘍があったり、他の病気を併発し重症化するケースもあります。早めに内科を受診しましょう。

原因:虫垂炎

治療法:薬物療法、手術

チェック方法:みぞおちから右下腹や下腹部に痛みが移動する、ジャンプすると痛みが強くなる、右下腹を押して話すと痛みが強くなる

関連する病気: 虫垂炎

4)わき腹や腰部が痛い場合に考えられる病気

わき腹や腰に痛みを感じ、発熱や吐き気を伴う場合は「急性腎盂腎炎」が疑われます。主に大腸からの細菌が尿道口から侵入し、膀胱から腎盂にまで達して炎症を引き起こす病気です。ほかに悪寒、震え、発熱、腰背部痛などの症状が急激にあらわれます。排尿痛や頻尿など膀胱炎の症状がある場合や、吐き気や嘔吐を伴うこともまれではありません。放っておくと敗血症など重症の感染症に移行する場合もあるので、医療機関で早目に受診をしてください。

原因:急性腎盂腎炎

治療法:薬物療法

チェック法:肋骨下方の右か、左わき腹を軽く叩くだけで痛みがある、腰の痛み、吐き気、嘔吐、悪寒、震え、発熱、排尿痛、頻尿

関連する病気: 急性腎盂腎炎

5)左側下腹部が痛い場合に考えられる病気

大腸の病気である「虚血性大腸炎」かもしれません。腸への血液循環が悪くなることで、大腸の粘膜が局部的な貧血を起こし、炎症や潰瘍ができてしまう病気です。便秘などが誘因となって発症するケースも多く、左下腹部や下腹部全体への突然の激しい腹痛、下痢や下血、吐き気や嘔吐、悪心や発熱などの症状が出ます。痛みが収まっても、適切な治療を受けないと再発の危険もあるので、早めの受診を心がけてください。

原因:虚血性大腸炎

治療法:薬物療法

チェック方法:左下腹部や下腹部全体の激痛、下痢、下血、吐き気、嘔吐、悪心、発熱

関連する病気: 虚血性大腸炎

7)わき腹や下腹部が痛い場合に考えられる病気

「尿路結石」の可能性があります。腎臓でできた結石が尿管に降りてきて通過するときに、わき腹や下腹部、背中の方に七転八倒するほどの激しい痛みが起きたり、下腹部から太もも内側へ広がるような痛み、血尿、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。また排尿時の違和感、残尿感も、尿路結石の特徴です。典型的な症状が起きた場合は泌尿器科を受診しましょう。

原因:尿路結石

治療法:薬物療法、手術

チェック方法:腹部を押すと硬く、軽く叩くと痛む、わき腹・下腹部・背中の激痛、下腹部から太もも内側へ広がるような痛み、血尿、吐き気、嘔吐、排尿時の違和感、残尿感

関連する病気: 尿路結石

腹部全体が痛い場合

激しい腹痛を伴う吐き気があるけれど、お腹のどこが痛いかハッキリしない、あるいは腹部全体が痛む場合は、腸閉塞や急性腹膜炎などが考えられます。 

1)お腹全体の痛みと張りを伴う吐き気が起きたときは

腸が詰まった瞬間に突然、激しい腹痛と吐き気・嘔吐が起こるのが「腸閉塞」です。お腹が張り、ときには腸がむくむくと動くのが外から見えることも。多くの場合、きりきりと強い痛みが起こり、しばらくすると少し和らぐという状態がくり返されます。吐しゃ物は、最初は透明な胃液や、黄色で苦い胆汁が出て、進行すると下痢便のような色合いで便臭を伴うようになります。自然に治ることはないので、すぐに病院の外科を受診しましょう。

原因:腸閉塞

治療法:飲食を中止する保存的治療、手術

チェック法:激しい腹痛、お腹の張り、吐き気、嘔吐

関連する病気: 腸閉塞

3)右わき腹から腹部全体に痛みが広がり、吐き気や発熱がある場合に考えられる病気

「急性腹膜炎」では、最初は右わき腹が痛み、それが段々と腹部全体に広がっていきます。持続的な痛みも特徴。同時に、吐き気や嘔吐、頻脈や発熱も見られます。急性虫垂炎や他の内臓の炎症などの合併症として起きることも多く、進行すると脱水を起こし、ショック症状になることもあります。早期に治療すれば予後は良好なので、夜間であっても症状が出たら治療を受けましょう。

原因:急性腹膜炎

治療方法:薬物療法、手術

チェック法:腹部全体の持続的な痛み、吐き気、嘔吐、頻脈、発熱

関連する病気: 急性腹膜炎急性虫垂炎

【まとめ】

感染症による腹痛と吐き気は、人にうつしてしまう恐れがあるので注意しましょう。また急な腹痛と吐き気がある病気のなかには、放置すると死にいたる重篤なケースもあります。症状が激しい時は夜間でも救急相談窓口などに電話して、すぐに受診すべきかどうか相談しましょう。

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