食べ過ぎたり、飲み過ぎたりした時に、吐き気と胃の痛みが同時に起こることはありませんか。これは、食べたものが胃酸とともに逆流して吐き気を催すことが原因で起こります。そのような症状を引き起こす病気にはさまざまなものがありますし、ときにはストレスなどによる自律神経の乱れが胃腸の働きを鈍らせることもあります。また、放置しても安全なケースもあれば、中には緊急な処置を必要とするものも。ここでは、吐き気と胃の痛みを同時に引き起こす病気について、代表的なものを紹介します。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

吐き気や胃の痛みに加えてこんな症状が見られたら、すぐに医師の診断を!

胃の痛みと吐き気を放置しておくと危険な病気もあります。吐き気や胃の痛みに加えて、次のような症状が見られたら、できるだけ早めに医師の診察を受けましょう。その際、できれば消化器の専門医がお勧めです。

1)空腹時、または食後30分くらいに強い上腹部痛がある。吐血または下血がある

お腹が空いているときや、食後30分〜1時間くらいしたときに、強い上腹部痛が見られたら、胃潰瘍または十二指腸潰瘍かもしれません。十二指腸潰瘍では空腹時に、胃潰瘍では食後30分〜1時間くらいしたときに上腹部痛が見られます。なかにはこのような痛みが出現しないこともありますが、そのほかにも吐血や下血などで潰瘍を見極めることができます。潰瘍とは、臓器の粘膜が深くえぐり取られた状態になっているもの。原因としては、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)や薬剤、とくに非ステロイド性消炎鎮痛薬などが挙げられます。胃潰瘍は40歳以降に、十二指腸潰瘍は10〜20代の若者に見られることが多く、いずれも放置しておくと胃や十二指腸に穿孔が起こるなど重症化する危険もありますので、急いで医師の診断を受けましょう。

原因:胃・十二指腸潰瘍

治療法:薬物療法

チェック方法:吐き気、嘔吐、胸焼け、上腹部痛、吐血、下血

関連する病気: 胃・十二指腸潰瘍

2)腹痛、嘔吐、発熱が見られる。痛みが時間とともに右下腹部へ移動していく

はじめは上腹部痛だったのが、時間が経つにつれて痛みが右下腹部へ移動していくことがあります。この場合は、急性虫垂炎が疑われます。急性虫垂炎とは一般に盲腸と呼ばれる病気で、盲腸の先端にある虫垂に化膿性の炎症が起こっている状態のこと。軽症であれば抗菌薬の投与で治癒することもできますが、化膿性の炎症がひどくなると外科手術が必要となります。早めに適切な処置を行えば、命の危険を及ぼすことはありませんが、治療を受けずに放置すると虫垂の組織が壊死して壊疽性虫垂炎となり、腹膜炎を併発することもあります。上腹部から右下腹部へ移動するような痛みが見られたら、速やかに医師の診断を受けましょう。

原因:急性虫垂炎

チェック方法:上腹部から右下腹部へ移動する痛み、嘔吐、発熱、食欲低下

治療法:薬物療法、外科手術

関連する病気: 急性虫垂炎

緊急性はないけれど、早めに医師の診断を受けた方が良い病気

以下のような症状が見られた場合、それほど命の危険に及ぶことはありませんが、胃の痛みや吐き気に長く悩まされるのはつらいですよね。症状を緩和するために、早めに医師の診断を受けた方が良いでしょう。

1)急激に上腹部痛や吐き気が現れた。食欲不振や胃もたれがあることも

たとえばコーヒーを飲んだあとや辛いものを食べたあとなどに、急激に胃の痛みや不快感、吐き気などを感じることがあります。この場合、急性胃炎かもしれません。誘引となる物質には食品や風邪薬、鎮痛剤などさまざまなものがあります。また、過度なストレスやタバコの吸いすぎ、不規則な生活などが引き金となって、急性胃炎を引き起こすこともあります。ほとんどの場合、安静にしていると症状が治まりますし、胃痛や吐き気がひどい時には市販の胃腸薬で抑えることもできるでしょう。しかし、こうした胃痛を日常的に繰り返すことで、慢性胃炎になることも。慢性化すると完治が難しくなり、胃酸を分泌する胃の腺細胞が萎縮して、胃酸の分泌が減少してしまいます。頻繁に急性胃炎を起こす場合は専門医の指示の元、内視鏡検査を受けると良いでしょう。

原因:急性胃炎

チェック方法:食欲不振、吐き気、嘔吐、上腹部の痛みまたはもたれ感

治療法:薬物療法

関連する病気: 急性胃炎慢性胃炎

2)魚介を食べて数時間後に、激しい胃の痛みと吐き気を起こした

マサバ、マアジ、スルメイカなどの魚を食べた後、数時間以内に激しい胃の痛みと吐き気を引き起こした場合は、胃アニサキス症かもしれません。これは、アニサキス類(アニサキス、シュードテラノーバなど)の幼虫が寄生した魚類を食べることで起こる食中毒で、アニサキス類の幼虫が胃の粘膜へ入り込み、痛みや吐き気を引き起こします。胃の痛みが強く、嘔吐も急激に起こり、重症化すると呼吸困難や血圧低下を招いて危険な症状に及ぶことも。魚類を食べた後にこのような症状が見られたら、慌てず、内視鏡検査を受けられる医療機関を受診しましょう。もし、夜間などですぐに受診できない場合、呼吸困難など重篤な症状が見られなければ、翌日に診察を受けましょう。

原因:胃アニサキス症

チェック方法:魚を食べて数時間後の上腹部痛、吐き気、嘔吐

治療法:内視鏡による虫体除去、薬物療法

関連する病気: 胃アニサキス症

3)酸っぱい胃酸が逆流する。胃痛や吐き気に加えて、喉がつかえた感じや胸焼けがする

食後、酸っぱい胃液がお腹から口の方へ上がってくるのが感じられるほか、胸焼けや胃痛、吐き気に悩まされることがあります。これは逆流性食道炎かもしれません。通常、食道と胃の境目は下部食道括約筋という筋肉で閉じられています。食物が体内に入るとこの筋肉が開いて、食物を胃へ送り出すのですが、さまざまな原因によりこの筋肉が開きっぱなしになると、胃酸が食道へ逆流してしまいます。そのため、胃酸が食道の粘膜に炎症を引き起こしてしまうのです。原因としては加齢や脂肪の多い食事、姿勢、肥満、飲酒などさまざま。このような症状が見られたら、食事内容を見直すことが大切ですが、炎症がひどい場合は医師の診断を受け、薬物療法で症状を緩和します。

原因:逆流性食道炎

チェック方法:呑酸、胸焼け、胃の痛み、喉の違和感、吐き気

治療法:薬物療法、外科手術

関連する病気: 食道炎、食道潰瘍

【まとめ】

胃の痛みや吐き気には病気だけでなく、過度なストレスや不規則な生活習慣、飲酒や喫煙なども大きく関わっています。また、食品に含まれる細菌が原因で発症する食中毒も、吐き気や胃の痛みを引き起こす病気として、珍しいものではありません。症状が見られる場合、消化器内科などを受診して原因を追求することが、治療の第一歩になりますが、そのほか、自分自身で生活習慣を見直して、改善する努力を行うことも大切。特に、多くの人が悩んでいる急性胃炎にはこうした見直しが効果的に機能するでしょう。

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