口から血が出たら、誰でもびっくりしますよね。一瞬、気が動転してパニック状態になってしまうことも、あるかもしれません。しかし、そんな時こそ落ち着いて対処が必要。また、他人がそうした症状を起こした場合でも、周囲の人が冷静に対処してあげることで、重篤な状態にならずに済むこともあります。ひとくちに「血を吐き出す」といっても、実際、その原因となる病気はさまざま。出血場所や血の色などを客観的に観察することで、取るべき対処法も見えてきます。ここではいざという時にとっさの判断ができるように、知っておくべき基礎知識を紹介します。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

喀血と吐血の違いって?

口から血を吐き出す点では、どちらも同じです。しかし、実際は両者にいくつかの違いがあります。

1)喀血の特徴

喀血とは、肺や気管、気管支から血管外に血液が出ること。咳などと一緒に起こることが多く、血液は真っ赤な色をしているのが特徴です。また、泡と一緒に出てくることが多く泡沫状で、血液が凝固しにくいという特徴もあります。出血場所により、呼吸困難や胸の痛み、喘息などの症状を伴うことがあります。

2)吐血の特徴

吐血とは、食道や胃、十二指腸など消化器系の病気による出血のこと。胃液と混ざって口から吐き出されるので、血液は暗褐色や茶色などになります。消化器から吐き出されるので食べ物のカスが混ざっていることが多く、喀血と違って固まりやすいのが特徴です。吐瀉物とともに吐き出されることが多いので、気分が悪くなったり、胸がムカムカしたりといった症状が見られることも多いようです。

喀血・吐血が起こった! さて、どうする?

自分が喀血や吐血した場合はもちろん、そばにいた人が、突然喀血や吐血をした場合も、焦ってしまう人がほとんどではないでしょうか。しかし、速やかな応急処置が、その後の回復につながる場合もあります。いざという時に役立つ知識を身につけておきましょう。

1)大量に血を吐いた場合は、急いで救急車を手配しましょう!

救急車が到着するまで、意識がある場合は一番楽な姿勢をキープ。また、喀血や吐瀉物で窒息することがないよう、軌道を確保することが大切です。さらに、他の人が喀血または吐血した場合は、出血性のショックで顔面が蒼白になっていたり、冷や汗が出ていたり、呼吸が促進していたりしないか、注意深く観察しておくことも必要です。

2)喀血または吐血の量が少量であれば、救急車を呼ばなくてもOK

救急車を呼ぶ必要は救急車を呼ばなくてもOK。ただし、すぐに病院で診察を受けましょう。その後に大量の喀血または吐血する場合もありますので、できるだけ早めに医師の診断を仰ぐことが大切です。

3)医師の診断を受ける場合医師に伝えるべき情報とは?

少量の喀血や吐血があり、その後、医師の診断を受ける場合、医師に伝えるべきことは、まず、「どれくらいの量を吐いたか」ということ。「ティッシュペーパーに付着するくらい」「コップ1杯くらい」など、わかりやすく伝えます。また、出血の経過として「いつ頃から、どのようにして出血したか」「突然か、少しずつか」なども伝えます。さらに、喀血や吐血に伴う症状として、咳または嘔吐とともに出血したのか、それとも、何もせずに血を吐いたのかなど、状況も正確に伝えましょう。

喀血により、疑われる病気とは?

呼吸器系から出血するため、疑われる病気としては肺疾患や気管支疾患が挙げられます。

1)肺がん

肺に発生する悪性腫瘍。早期であれば治癒も可能ですが、発見された時にはすでに進行しているケースが多く、現在、全身のがんの中ではもっとも治療が難しいがんの一つとされています。肺がんの原因は、70%が喫煙。そのほか、受動喫煙や食生活、環境なども関係します。喀血も肺がんの主な症状ですが、血痰も、肺がんの可能性を疑うのに重要な症状。痰に血が混ざっていたら、すみやかに医療機関を受診しましょう。

原因:肺がん

治療法:薬物療法、放射線治療

チェック方法:咳、痰(血痰)、喀血倦怠感、体重減少、胸痛

関連する病気: 肺がん

2)肺結核

結核菌が肺に感染して起こる病気。以前は国民病と言われるほど、一般的な疾患でしたが、現在は患者数は減少しています。患者の咳に含まれた結核菌が空気中で飛び散り、それを他の人が吸い込むことによって感染します。結核菌を吸い込んでも、免疫力が十分に機能している場合は発症しません。また、感染しても、必ずしもすべての人が発病するわけではありません。しかし、お年寄りや日頃から過労に悩まされている人、栄養不良の人、他の病気で体力が落ちている人などは注意した方が良いでしょう。初期には風邪と同じ症状が続きますが、これが2週間以上も続く場合は肺結核を疑っても良いかもしれません。

原因:肺結核

治療法:薬物療法

チェック方法:咳、痰、微熱が続く、体重減少、倦怠感、血痰、喀血

関連する病気: 肺結核

3)気管支拡張症

鼻や口と肺をつなぐ気管支が広がってしまい、元に戻らなくなった状態のこと。細菌やカビが増殖して炎症を起こし、これが悪化すると喀血を引き起こすことがあります。また、増殖した細菌やカビが肺の中にも広がり、肺炎を引き起こすこともあります。一般に、だ男性より女性が罹りやすいとされています。原因は免疫異常や先天性によるものなど、さまざま。風邪を引いてはいないけれど、咳が長引いたり、痰が絡んだりする場合は、気管支拡張症を疑っても良いかもしれません。

原因:気管支拡張症

治療法:薬物療法

チェック方法:慢性の咳、濃性痰、血痰、喀血

関連する病気: 気管支拡張症

吐血により、疑われる病気とは?

次に、吐血を引き起こす疾患のうち、主なものを見てみましょう。

1)胃・十二指腸潰瘍

胃酸やピロリ菌、非ステロイド性抗炎症薬などの影響により、胃や十二指腸の粘膜が傷つけられ、潰瘍を形成する病気のこと。胃潰瘍の場合は食後に、一方、十二指腸潰瘍は空腹時に痛みを感じることが多いとされています。上白部に強い痛みが感じられる場合は、穿孔が疑われることも。できるだけ早く、消化器専門医の診察を受けることが望ましいでしょう。

原因:胃・十二指腸潰瘍

治療法:薬物療法

チェック方法:上腹部の痛み、胸焼け、食欲不振、膨満感、吐血、下血

関連する病気: 胃十二指腸潰瘍

2)急性胃粘膜病変

胃の粘膜に浮腫やびらん、浅い潰瘍を引き起こす、急性胃炎と胃潰瘍の総称。胃のあたりに強い痛みを訴えることが多く、吐き気や嘔吐がみられることも。出血性胃炎や出血性胃潰瘍の場合は、吐血や下血も起こります。原因はさまざまで、刺激のある飲食物の過剰摂取や、アニサキスやピロリ菌、ヘリコバクターの感染、鎮痛薬や解熱薬などの薬物などが挙げられますが、精神的・身体的ストレスも大きな要因に。出血がひどいとショック状態になることもあるので、注意が必要です。

原因:急性胃粘膜病変

治療法:薬物療法

チェック方法:上腹部の痛み、吐血、下血

関連する病気: 急性胃粘膜病変

【まとめ】

咳のしすぎでときどき痰に血が滲むことがありますが、この程度であれば特に過敏になる必要はありません。しかしもしかしたらその後、大きな喀血や吐血を引き起こす可能性もありますので、できれば一度、医師の診断を受けた方が良いでしょう。血を吐くと、ほとんどの人がショックを受けますが、少量のものであればすぐに命に関わることはほとんどありません。また実際は、鼻血や外傷からの出血を、喀血や吐血と勘違いしてしまうケースも少なくありません。落ち着いて対処できるよう、普段から注意しましょう。