女性の悩みで多い「足のむくみ」。立ち仕事で足を酷使していたり、お酒を飲んだ翌日など、日常的に感じる人もいるのではないでしょうか。一時的な場合が多いですが、足のむくみが数日続いたり、日に日にひどくなる場合は、なんらかの病気が隠れている可能性もあります。
ここでは、足がむくむ原因から、毎日の生活の中でできる予防法、症状別に考えられる病気までを幅広くご紹介します。足のむくみに加え、顔のむくみや体重増加など、いつもと違う症状が続く場合は、早めの受診を心がけましょう。

仲 眞美子先生(アスクレクリニック上野)
医学博士。認定内科医、認定産業医、人間ドック検診専門医。
昭和50年、東京医科大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了。愛知県がんセンター第二内科・化学療法部国内留学。社会保険蒲田総合病院内科医長、他。イーク丸の内院長、医療法人社団葵会AOI国際病院健康管理センター所長を経てアスクレクリニック上野院長。

足がむくむ原因とは?

人間のからだの60%は水分でできており、体内で一定のバランスを保っています。生活の乱れや病気など、様々な原因でこのバランスが崩れると、細胞と細胞の間でクッションの役目を果たしている「間質液」が過剰な状態になってしまいます。皮膚の下で、この「間質液」などの水分がたまって腫れたようになることで、むくみの症状が現れます。特に足にむくみが見られやすいのは、重力によって水分が下半身にたまるためです。

むくみやすくなる原因としては、以下のようなものが挙げられます。

〇長時間の立ち仕事や同じ姿勢…
重力によって体内の水分や血液が足にたまってしまうことに加え、ずっと同じ姿勢でいることで、血行が悪くなり、足のむくみにつながります。

〇運動不足…
足の筋肉は、心臓から送られてきた血液を再び心臓に戻す、ポンプのような役割を果たしています。運動不足によって筋肉の量が低下すると、ポンプの力が弱まり、上手に水分が排出されなくなります。

〇塩分の摂りすぎ…
血液中で高まった塩分濃度を正常に戻すために、自然と飲水量が増え、余分な水分が体内にたまりやすくなります。

〇アルコールの摂りすぎ…
お酒を飲むと尿量が増えますが、アルコールの分解には多量の水分を必要とするため、体内から失われた水分よりも、さらに多くの水分を必要とします。結果、水分過多の状態となり、むくみにつながります。

足のむくみを予防・解消するには

生活習慣を見直すとともに、ちょっとした工夫で足のむくみを軽減させることができます。次のような方法を試してみましょう。

〇軽い運動…
仕事や移動などで、長時間にわたり立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢を強いられる場合、1時間に1度は、かかとの上げ下げやひざの屈伸などを行いましょう。また、エスカレーターではなく階段を使ったり、休日にはウォーキングをするなどして、日頃から足の筋肉を鍛えておきましょう。

〇マッサージ…
一日の終わりに足をマッサージして、たまった老廃物を押し流して。足首から膝、ふくらはぎにかけて、下から上に向かってもみほぐすようにすると効果的です。入浴中、血行が良くなっているときに行うのがベストです。

〇弾性ストッキング…
足首から太ももに向かって段階的に圧力が弱まるように作られているので、足から心臓に向かう静脈の流れを助けてくれます。圧力の強さは選べるので、自分に合ったものを身につけましょう。

○塩分やアルコールを控える…
食事は薄味を心がけ、アルコールも控えめに。また、塩分の排出に働くカリウムの豊富なイモ類や納豆、野菜を積極的に摂りましょう。

生活習慣が理由の足のむくみは、これらのような工夫で多くが解消されます。しかし、むくみが何日も続いたり、徐々にひどくなったり、全身に及ぶような場合には、なんらかの病気が隠れていることも。注意すべきむくみには、次のようなものがあります。あてはまるばあいは、すぐに受診しましょう。

特に注意が必要な症状

1)足のむくみが夕方ひどくなり、体重の増加などがみられるときに考えられる病気

夕方に特に足のむくみがひどくなる場合は、「右心不全」などの心疾患が考えられます。病状が進んでいくにつれ、足のむくみだけでなく、全身のむくみ、動悸、息切れ、吐き気、体重の増加、腹部膨満感といった症状が出てきます。
「足は第二の心臓」とも言われており、心臓から送られてきた血液を、再び心臓に戻すポンプのような役割をしています。そのため、心臓に異常があると足にも症状が出やすくなります。
「右心不全」は、心臓のポンプ機能が低下するために全身がうっ血し、十分な酸素を送れなくなることで起こります。いっぽう「左心不全」は肺がうっ血するため、呼吸困難や咳などの症状が見られます。どちらも高齢になるほど起こりやすく、放っておくと徐々に進行し、急性心不全を起こすこともあります。夕方の足のむくみがなかなか改善されずひどくなる場合は、内科や循環器科を受診しましょう。

原因:右心不全

治療法:安静、飲水・塩分制限、酸素吸入、薬物療法

チェック方法:足のむくみが夕方に強くなる、足のむくみが全身に及ぶようになり、動悸、息切れ、吐き気、体重の増加、腹部膨満感などを伴う

関連する病気: 慢性心不全

2)むくみが顔にも及び、尿量が減ったときに考えられる病気

腎臓の機能が低下すると、足や顔がむくみ、尿量に変化が出ることがあります。腎臓病のなかでも、特に注意が必要なのは腎不全で、慢性と急性に分かれます。急性腎不全では急激に腎機能が悪化し、尿量が少なくなったり、まったく出なくなったりします。糖尿病や高血圧などが原因で起こる慢性腎不全は、数カ月から数年にわたり、ゆっくりと腎機能が悪化していきます。慢性腎不全の初期にはほとんど症状は見られませんが、病状が進むにつれ、足や目の周りのむくみ、夜間の頻尿、食欲低下、疲労感などの症状が出てきます。急性腎不全の予後では腎機能の大幅な回復も期待できますが、慢性では難しくなります。治療を始める時期が早いほど効果がありますので、一刻も早く内科を受診しましょう。
また、小児から高齢者までが幅広く発症する腎臓病に「ネフローゼ症候群」があります。尿中に大量のたんぱく質が流出することにより、血中のたんぱく質が減少し、むくみや、血液中のコレステロール値の上昇、疲労感、食欲低下など、腎不全と似たような症状が現れる病気です。小児、成人ともに完治しやすいですが、治療が遅れると腎機能に障害をきたすことがあります。早めに小児科、内科を受診しましょう。

原因:急性腎不全、慢性腎不全、ネフローゼ症候群

治療法:水分・塩分の制限、食事療法、薬物療法、人工透析療法

チェック方法:足や顔のむくみ、急性では尿量の急激な減少や無尿、慢性では夜間の頻尿、疲労感、食欲低下

関連する病気: 急性腎不全慢性腎不全ネフローゼ症候群

4)足がパンパンにむくんで痛みがある場合に考えられる病気

足がむくむだけでなく、痛みを伴う場合は「静脈血栓塞栓症」の可能性があります。静脈の流れは足の筋肉の動きに支えられています。長時間同じ姿勢でいると、足の血流がとどこおって血栓(血の塊)ができることがあり、この状態を深部静脈血栓症といいます。雪だるま式に大きくなった血栓が静脈内を流れていき、肺の動脈をふさぐと、肺血栓塞栓症という生死に関わる状態を引き起こすことがあります。深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症は連続した病態で、これを合わせて静脈血栓寒栓症と呼びます。

足がパンパンにむくみ、痛みを伴う場合は、血栓が足の静脈にできて完全につまり、そこにとどまっている状態です。この時点で早めに循環器科を受診しましょう。いっぽう、足に血栓ができても血管の壁にくっついただけの状態で詰まっていなければ、足がむくむことはありません。この場合は血栓がはがれて静脈の流れに乗り、肺の動脈をふさぐまで気づかないことが多いので危険です。

飛行機やバスなどで長時間同じ姿勢でいなければならないときは、血栓予防のため、意識して足を動かし、水分をじゅうぶん摂るようにしましょう。立ち仕事や座り仕事が多い人には、弾性ストッキングの着用も有効です。

原因:静脈血栓塞栓症

治療法:薬物療法、手術

チェック方法:足がパンパンにむくみ、痛みがある

関連する病気: 静脈血栓塞栓症

5)足のむくみとともに、顔や白目の黄疸、腹部膨満感などの症状がある場合

「肝硬変」など、肝臓の病気でも足がむくむことがあります。肝硬変になる原因は様々ですが、日本では多くは、B型やC型の肝炎ウイルスと、アルコール摂取によるものです。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、肝細胞が破壊され始める初期の段階では、ほとんど症状が見られません。肝炎が長期化し、肝細胞の破壊や再生を繰り返すうちに、肝臓が硬く小さくなり、肝硬変の状態となります。

肝硬変になると、アルブミンという血中のたんぱく質が作られにくくなります。このような低アルブミン血症の状態では、血中の水分が外に出てしまうため、余分な水分がからだにたまり、足のむくみや、お腹に水がたまるなどの症状が出てきます。肝硬変になると、健康な肝臓に戻ることは難しく、症状が進行すると肝臓がんを発症することもあります。一刻も早い治療が必要です。

原因:肝硬変

治療法:肝炎ウイルス性のものは、抗ウイルス薬の投与。そのほかの肝硬変は、食事療法、薬物療法

チェック法:顔や白目の黄疸、腹部膨満感、吐き気、疲労感など

関連する病気: 肝硬変

一刻を争う状況ではないものの、早めに受診をすべき症状

1)足がむくみ、血管がデコボコと浮き上がっているように見える場合に考えられる病気

静脈は、心臓から送られてきた血液を再び心臓へ戻すポンプのような役割をしています。足の静脈は、重力に逆らって下から上へ血液を送らなければならないので、逆流を防ぐために弁がついています。この弁が壊れたときに、周囲の血液が逆流したり、うっ血したりして、足がむくみ、血管が浮き出る「下肢静脈瘤」という状態になります。

患者の7割以上が女性で、運動習慣の少ない50歳以上の高齢者に多く見られますが、若くても立ち仕事が多い人などは、静脈の弁に負担がかかることで発症することがあります。
見た目に支障があるだけで命に関わる病気ではありませんが、重症化すると皮膚がうっ血して黒ずみ、潰瘍ができることもあります。適度な運動やマッサージが予防になります。

原因:下肢静脈瘤

治療法:弾性ストッキング着用による圧迫法、手術

チェック方法:血管がデコボコと浮き出る

関連する病気: 静脈瘤

2)足がむくんでいるが、すねを数秒押してもはじかれて、すぐに元に戻る場合

「橋本病」や「甲状腺機能低下症」などの、甲状腺の病気の可能性があります。橋本病は慢性甲状腺炎とも呼ばれ、自分の細胞に対して免疫反応が起きて、甲状腺の細胞を壊してしまう自己免疫疾患です。甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの量が低下することで現れる様々な症状のことをいいます。橋本病が原因で甲状腺機能低下症になることもあり、どちらも患者の9割以上が女性です。
皮下にムコ多糖類という物質がたまりやすいことから、足のむくみのなかでも、指で押してもへこまずに、はじきかえすような症状が特徴です。そのほか、甲状腺部分の腫れや、倦怠感、便秘、寒気などが現れることもあります。どちらも甲状腺ホルモンの投与で改善するため、過度に心配することのない病気ですが、思い当たる症状のある人は内科や内分泌科の早めの受診をおすすめします。

原因:橋本病、甲状腺機能低下症

治療法:甲状腺ホルモンの投与など

チェック法:指で押してもへこまずに、はじきかえすような足のむくみ、甲状腺部分の腫れ、倦怠感、便秘

関連する病気: 橋本病(慢性甲状腺炎)甲状腺機能低下症

【まとめ】

足のむくみには、心臓病や肝臓病など、命に関わる病気が隠れていることがあります。軽く考えず、症状が続き、ひどくなるような場合には早めに受診しましょう。また日常生活の中でも、長時間同じ姿勢でいることをなるべく避け、お酒や塩分を控えるなどして、足のむくみを防ぐことができます。エレベーターではなく階段を使ったり、意識して歩いたりすることで、足の筋肉を鍛えることも心がけましょう。

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