足や顔など、部分的にむくむこともあれば、全身がなんとなく膨張しているように感じられることもあります。足などの局所がむくむ場合は揉みほぐして血行を良くしたり、着圧ソックスを利用したりして、自分である程度、むくみを解消することもできますが、全身がむくんでいる場合は、自力で対処しようとするのは困難です。特に気をつけたいのは、女性のむくみ。月経前のホルモンバランスの乱れが原因で、全身のむくみが起こることもあります。多くの場合、重大な病気ではありませんので心配いりませんが、まずは正しい知識を身につけておきましょう。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

そもそも、「むくみ」ってどんなもの?

むくみとは、血液中の水分が血管やリンパ管の外部に染み出して、皮膚の下に溜まった状態のこと。本来なら血管やリンパ管の中を流れる水分は、サラサラとよどみなく流れるものですが、なんらかの理由によってそうした水分の流れが悪くなり、滞ってしまうことがあります。むくみの原因にはさまざまなものがあります。

1)生活習慣を原因とするむくみ

しょっぱいものを食べ過ぎた翌日などは、顔がむくんでいるように感じられませんか。塩分や糖分の取りすぎなど、偏った食生活はむくみの元になりますが、これは、血中の濃度が変化したことが原因。血中濃度を通常に戻すために体が大量の水を欲するために、体内に水分が過剰となり、むくみやすくなるのです。そのほか、寝不足や冷え、ストレスなどでも体内の水分バランスが乱れ、むくみを引き起こしやすくなります。また、よくあるむくみとして、同じ姿勢をとり続けたことで、足がなんとなく膨張したような感じがする、ということもあるでしょう。こうしたむくみは一時的なものなので、それほど心配いりません。まずは自分の生活習慣を見直して、改善できそうなところを見つけてみましょう。

2)病気を原因とするむくみ

突然ひどいむくみが現れたり、むくみが数日間も続いたりするようであれば、医療機関で診てもらった方が良いでしょう。心臓や腎臓に疾患があると、全身のむくみを引き起こしやすくなります。また、男性に比べて女性は全身のむくみを引き起こしやすいのですが、これはホルモンバランスの乱れが原因となっている場合が大半です。さらに、妊娠中はむくみが生じやすかったり、服用している薬の副作用で全身がむくみやすくなっていたりすることもありますので、必ずしも全身のむくみが病気に直結するというわけではありません。しかし特に、次のような症状が見られる場合はもしかしたら、何かの病気の前触れかもしれません。早めの受診をお勧めします。


・足首付近からむくみ始め、内くるぶしから2〜3cm上の部分を指で押した時、指の跡が残る
・1日の間で、体重が数キログラム増減する
・突然、顔や手が急激にむくんだ
・息切れ、動悸、だるさなどを伴っている
・不安感やうつ症状など、精神的にも不調が見られる

女性は注意! 全身のむくみを引き起こす病気

男性に比べて、女性はむくみを起こしやすいもの。ここでは女性のむくみについて、病気の観点から解説してみます。むくみに加えて、次のような症状が見られたら注意が必要です。

1)朝晩の体重差が激しい

体重が朝から夜にかけて数キログラム増減し、変動が激しい場合、まず疑われるのは特発性浮腫です。これは20~50代の女性に起こりやすく、手足や顔、腹部などが急にむくむ病気のこと。命に関わるような、重篤な病気ではありませんが、むくみが慢性化しやすく、長期間に及ぶことも。また、普段立ち仕事をしている人にも多くみられます。原因は明らかになっていませんが、生理前にむくみが悪化する人が多いことから、ホルモンバランスとの関係性を指摘する声も聞かれます。また、ストレスが強くなると同じようにむくみが悪化する人も多いため、自律神経との関わりも指摘されていますが、まだ、科学的に判明していません。なかには疲労感や不安感、うつの諸症状が見られる場合もあるので、気になったら医療機関に相談しましょう。

原因:特発性浮腫

治療法:薬物療法、運動療法

チェック方法:全身のむくみ、朝夕の体重差が激しい、疲労感、不安感、うつ症状

関連する病気: 特発性浮腫

2)月経前に起こる

女性の場合、生理の2週間から数日前になると、全身のむくみが感じられる人もいます。これは、月経前緊張症の症状のひとつ。月経前緊張症とは、月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)とも呼ばれていて、月経前に起こる不快な症状の総称です。全身のむくみのほか、イライラしたり、情緒が不安定になったり、頭痛やめまいがしたり、体重が増加したりすることもありますが、通常、月経が始まると同時にこれらの症状も消えていきます。それほど心配いりませんが、症状が辛く、日常生活に支障をきたす場合は、婦人科を受診すると良いでしょう。

原因:月経前緊張症

治療法:薬物療法、ホルモン療法

チェック方法:下腹部痛、腰痛、乳房の張り・痛み、吐き気、腹部ぼうまんかん、頭痛・めまい、肌荒れ・にきび、体重増加、尿量減少

関連する病気: 月経前緊張症(月経前症候群)

3)妊娠中であり、血圧が高い

妊娠中に、なんらかの原因で高血圧になったり、尿蛋白が出たりする病気を「妊婦高血圧症候群」といい、これも、全身のむくみを引き起こす病気です。ひと昔前までは、「妊娠中毒症」と呼ばれていました。妊婦高血圧症候群は、妊婦の3~7%に起こるとされ、重症化すると母子共に命の危険があると言われています。発症の原因はまだ明らかにされていませんが、一般に15歳以下、あるいは40歳以上の女性に多く、肥満や高血圧を抱えている、初産である、母親も妊娠高血圧症候群を発症したことがある、という場合に起こりやすくなっています。

原因:妊婦高血圧症候群

治療法:食事療法、場合により薬物療法

チェク方法:高血圧、頭痛、めまい

関連する病気: 妊婦高血圧症候群

4)トイレの際、尿が泡立っている

排尿の時に泡立っているということは、尿に含まれるタンパク質が増加している可能性が高いということ。全身のむくみに加えてこのような症状が見られたら、ネフローゼ症候群かもしれません。これは腎臓病のひとつであり、血液を濾過する糸球体に障害が起こることで発症します。タンパク質が老廃物として見なされ、尿中に排出されてしまうことで、血中のタンパク質が減少。その結果、血管内で適切な水分が保たれなくなり、体のむくみが起こります。腎静脈や下肢深部静脈の血栓症を起こすこともありますので、早めに内科または腎臓内科で診察を受けましょう。

原因:ネフローゼ症候群

治療法:薬物療法、食事療法

チェック方法:全身のむくみ、トイレの際の泡立ち、体重増加

関連する病気: ネフローゼ症候群

5)体がだるく、脱力感や冷えを感じる

全身のむくみに加えて、倦怠感や脱力感、冷えなどを感じたら、甲状腺機能低下症かもしれません。甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの分泌が低下して起こるさまざまな症状のこと。40歳以降の女性に発症するケースが多いのですが、「単なる体調不良」と考えられ、長期間放置されていることも少なくありません。甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が低下することによって起こるさまざまな病気の総称であり、なかでももっとも多いのが「橋本病」です。これは、自己免疫の異常により、リンパ球が甲状腺の組織を破壊してしまうことによって起こる疾患で、むくみや皮膚の乾燥のほか、食欲がないのに体重が増える、脈がゆっくりになる、無気力になり頭の回転が鈍くなる、などの症状が現れます。甲状腺機能が低下している場合は薬によって甲状腺ホルモンを補う治療を行います。

原因:甲状腺機能低下症

治療法:薬物療法

チェック方法:むくみ、倦怠感、脱力感、冷え、記憶力や集中力の低下、動作が緩慢になる

関連する病気: 甲状腺機能低下症橋本病

【まとめ】

そのほかにも、心臓や腎臓などに疾患があると全身のむくみを引き起こしやすくなります。また、内分泌系、静脈、リンパ節などに異常がある場合にも、全身のむくみが見られるケースが多いようです。「一晩寝たらすぐに治った」という場合は一過性のむくみであり、特に問題ないと思いますが、こうしたむくみが頻繁に起こったり、長期間に渡って続いたりするようなら、一度、医療機関を訪ねても良いでしょう。

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