生理の周期や女性ホルモンの変化など、女性の体は非常にデリケート。特に、デリケートゾーンにトラブルを感じやすい人も多いのでは? よくあるトラブルが、かゆみ。熱を持っているように感じられたり、ブツブツと異変が現れたり、おりものが増えたり、症状は人によってさまざまです。デリケートな部位だけに、なかなか周りに相談できず、病院に行くことをためらう人も多いでしょう。しかし、そうしたトラブルが病気の前触れとして現れていることもあります。病気が重症化しないうちに、「あれ、ちょっとおかしいな」と感じたら、早めに婦人科で診察を受けることをお勧めします。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

かゆみの原因、大きく分けると「かぶれ」と「感染症」

なかなか人には相談できないデリケートゾーンのかゆみ。大きく分けると、原因は二つに分類されます。

(1)かぶれが原因

特に、夏など気温が高くなる時期に、デリケートゾーンにかゆみを感じることはありませんか。または、締め付け感が強かったり、通気性が悪かったりする下着を身につけていた場合にも、かゆみを感じることがあるかもしれません。そうした場合のかゆみは、主にかぶれが原因。生理の時、長時間ナプキンを取り替えずにいる場合にも、かぶれによるかゆみは起こります。この場合は、通気性をよくしたり、締め付けを解放したりすれば、大抵の場合は治ります。もし、かゆみがひどい場合はクリームや軟膏なども市販されていますし、保険処方の薬もあります。婦人科に相談しても良いでしょう。また、肌にやさしい石鹸や下着、ナプキン、おりものシートを使用することも大切です。

(2)感染症が原因

細菌、ウイルス、カビ(真菌)が原因となって起こるかゆみもあります。このようなかゆみは、体調不良の時、免疫力が低下している時、妊娠中の時、抗生物質を服用している時などによく見られます。感染症でデリケートゾーンがかゆくなるというと、セックスによる感染を思い浮かべる人も多いでしょうが、実は、セックスを行わなくても感染する場合もあります。そのため、「セックスをしていないから、感染症ではない」と自己判断をしないことが大切。感染症が原因の場合は、適切な治療を早めに行わないと病気が重症化したり、他の器官に影響が及んだりすることもあるので、注意が必要です。また、パートナーがいる場合は、病気をうつしてしまう可能性もありますから、できるだけ早めに婦人科の診断を受けましょう。

かゆみを引き起こす性感染症(STD)

性感染症とは文字の通り、セックスでうつる病気のこと。感染者は20代にもっとも多く、性交経験があれば誰でもかかる可能性のある一般的な病気です。なかには完治しづらく、何度も再発してしまったり、不妊の原因になったりする場合もありますから、早めに婦人科で検診を受けましょう。また、パートナーの男性も同様のかゆみが見られる場合は、セックスで互いに感染した可能性があります。これをピンポン感染と言います。男性にも早めに泌尿器科で検査を受けるよう、勧めましょう。

(1)クラミジア感染症

クラミジア・トラコマチスという細菌による感染症。日本ではもっとも感染率の高い感染症と言われていて、特に、近年では若い女性の感染率が非常に高くなっています。感染すると、男性では尿道炎や精巣上体炎、女性では子宮頸管炎、卵管炎、卵管周囲炎などを発症。その結果、不妊症につながることもあるので、将来妊娠を望む場合は注意が必要です。女性がクラミジア感染症にかかると、水っぽいおりものが出たり、不正性器出血や下腹部痛が起こったり、膀胱炎に似た症状が現れます。しかし、症状がまったく出ない人も多いため、注意が必要です。

原因:クラミジア・トラコマチス細菌感染
治療法:薬物療法
チェック方法:デリケートゾーンのかゆみ、漿液性のおりもの、不正性器出血、下腹部痛、膀胱炎様症状

関連する病気: クラミジア感染症

(2)腟カンジダ症

カンジダという真菌(カビ)が原因で起こる感染症。通常、カンジダ菌は健康な人の皮膚や粘膜にも存在していて、免疫機能が十分であれば害を及ぼすことはありません。しかし、ストレスやホルモンバランスの変化、体調不良、免疫力や体力の低下、抗生物質の内服などで常在菌バランスが乱れると、腸内のカンジダが異常に増殖し、腟カンジダ症を発症。そのほか、セックスで感染することもあります。腟カンジダ症を発症すると、デリケートゾーンのかゆみや多量のおりものが見られるほか、膣内や外陰部が炎症を起こして赤くなることも。一度腟カンジダ症に感染すると、その後、再発する可能性の高い病気です。

原因:カンジダ菌感染
治療法:薬物療法
チェック方法:デリケートゾーンのかゆみ・炎症・灼熱感、白色でヨーグルト状またはカッテージチーズ状のおりもの、セックス時の痛み

関連する病気: 腟カンジダ症

(3)トリコモナス膣炎

トリコモナス原虫の感染によって発症するSTD。セックスにより感染しますが、それ以外に、衣類やタオル、浴槽縁などから感染することも少なくありません。女性に多く、デリケートゾーンに強いかゆみや痛みが現れるほか、褐色でアワ状の悪臭を伴うおりものが増加。しかし、半数には自覚症状がないため、注意が必要です。放置しておくと、不妊症や早産、流産などのリスクが高まります。セックスが原因で感染したと考えられる場合は、パートナーにも泌尿器科での診察を勧めましょう。

原因:トリコモナス原虫感染
チェック方法:デリケートゾーンの激しいかゆみ・痛み、悪臭の強いおりもの、濃性あるいは泡沫状のおりもの
治療法:薬物療法

関連する病気: トリコモナス腟炎

(4)尖圭コンジローマ

ヒトパピローマウイルスによる感染症で、セックスによりうつります。感染してから発症するまで約3ヵ月と潜伏期間が長いのが特徴で、感染すると感染部に先の尖った、カリフラワー状の小さないぼが多数できるほか、デリケートゾーンのかゆみや多量のおりものなどが見られます。しかし、自覚症状がないケースも多く、いぼが大きくなってから気づく場合も少なくありません。放置すると子宮頸がんの発症リスクが高まるため、早めに診察を受けましょう。

原因:ヒトパピローマウイルス
チェック方法:感染部のいぼ、デリケートゾーンのかゆみ、多量のおりもの
治療方法:薬物療法

関連する病気: 尖圭コンジトローマ

(5)性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスによって起こる感染症。主にセックスによって感染します。潜伏期間は3日〜1週間と短く、性器に小さな水泡潰瘍ができたり、デリケートゾーンに痛みやかゆみが続いたりします。一度感染すると、ウイルスが体内の神経節に潜伏するため、再発のリスクが非常に高いのが特徴。疲労がたまって免疫力が落ちている時などに再発するケースが多く見られます。一般的に、抗ウイルス剤の内服や塗布で治療します。

原因:単純ヘルペスウイルス感染
チェック方法:デリケートゾーンの痛みやかゆみ、強い痛みを伴う潰瘍
治療法:薬物療法

関連する病気: 性器ヘルペス

かゆみが見られたら、さてどうする!?

このように、デリケートゾーンのかゆみは性感染症の症状のひとつである場合が多く、なかには放置しておくと不快感だけでなく、不妊症や流産・早産、子宮頸がんのリスクを高めるものもあります。できるだけ早めに婦人科で診察を受けましょう。軽いかぶれであれば、自然治癒したり、セルフケアできたりする場合もありますが、医療機関で診断を受けた方が良いケースとは、どのような場合か、見てみましょう。

(1)医療機関で受診した方が良い場合

下記のような症状がみられる場合は、早めに医療機関を訪れた方が無難です。

  • かゆみが強く、広範囲に渡っている
  • 長期間、かゆみが持続している。かゆみがひどくて眠れない
  • 水疱や潰瘍が見られる。発赤や熱感がある
  • おりものが変化した(量が増えた、臭いがきつくなった、ヨーグルト状になった、など)
  • かき壊した

(2)セルフケアできる場合

元来肌が弱かったり、かゆみが軽度で下着によるかぶれなど原因が特定できたりする場合は、市販の薬でかゆみを抑えても良いでしょう。ただし、他の皮膚には使用できてもデリケートゾーンには使用できない薬品もありますから、購入する時には必ず専門家に相談しましょう。また、最近ではデリケートゾーン専用の低刺激性ソープも薬局で販売されています。そのようなもので日頃からやさしくケアすることも良いでしょう。

【まとめ】

近年、若い女性を中心にSTDの感染者数は増えています。感染初期には自覚症状が少ない病気も多く、なかなか自分では気づきにくいこともありますが、デリケートゾーンにかゆみが見られたら、念のため「病気かな?」と疑って、医師の診断を受けることをお勧めします。日頃から、かかりつけの婦人科を見つけておくと、いざという時でも安心。病気が深刻化しないうちに、早めの対処を心がけましょう。

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