「発症した人にしかわからない」と言われるほど、ひどいかゆみを伴う慢性的な病気であるアトピー性皮膚炎。薬物療法を試みたり、食べ物を制限したり変えてみたり、生活習慣を見直したり、できる限りの治療を頑張って行なっている人も多いでしょう。それでもなかなか根治するのが難しいのが、アトピー性皮膚炎の特徴ですが、上手に病気と付き合って、かゆみなどの症状を抑えることは可能です。ここでは無理せず、毎日継続できる対策についてご紹介します。
生月 弓子先生(ミッドタウンクリニック)
信州大学医学部 卒業
東京大学 大学院 卒業
医学博士 日本産科婦人科学会 認定医
婦人科(子宮、卵巣)癌検診、健康相談、また避妊、低用量ピル、緊急避妊ピル、月経調節、月経困難症、過多月経、月経異常、不正性器出血、月経前症候 群、子宮筋腫、子宮内膜症、婦人科腫瘍、更年期症状、掻痒感、性感染症、不妊、妊娠などの一般産婦人科診療、セカンドオピニオンも行っている。

アトピー性皮膚炎、その病気の正体は?

これまでは子どもの病気と見なされることの多かったアトピー性皮膚炎。大人になると自然と症状が軽くなったり、あまり気にならなくなったりする人も多くみられました。しかし最近では、大人になっても症状が続いたり、なかには大人になってから発症したりする人も増えてきました。そもそも、アトピー性皮膚炎とはどんな病気なのでしょう。

(1)アトピー性皮膚炎の発症要因

本人または家族がアレルギー性の病気を持っていたり、アレルギーと深い関わりのある免疫物質IgE抗体を作りやすい体質であったりすると、アトピー性皮膚炎を発症しやすくなります。もともとこうした体質のある人が、何らかの影響で皮膚のバリア機能が低下し、さらに、ダニや埃、食物などのアレルゲン物質が体内に取り込まれたり、汗や衣類などによって皮膚の摩擦が起こったり、ストレスや疲労が過度にたまったりすることによって発症。つまりアトピー性皮膚炎とは、体質的な要因に環境的な要因が重なって発症するのです。

(2)主な症状

アトピー性皮膚炎の症状は、重症度によって分類されます。軽度の場合は、皮膚がカサカサして乾燥しやすい、軽度の紅斑が出るなどですが、重症になると皮膚が腫れてジクジクした汁が出たり、小水疱やびらんが見られたり、皮膚が鱗のように盛り上がったりすることもあります。

(3)主な治療法

アトピー性皮膚炎の特徴は、症状を何度も繰り返すこと。症状が軽くなったと思ったら、また重くなるというように、症状が行ったり来たりするのが大きな特徴です。根治は難しいものの、治療は日進月歩で進歩しており、アレルゲンを少しずつ体に慣れさせ、アレルギー反応を徐々に弱めていく減感作療法などが研究開発されています。アトピー性皮膚炎を発症した人たちの多くは、薬物療法を試みることで症状を悪化させないようにしています。炎症を鎮めるステロイド薬を始め、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制薬などを用いるのが一般的ですが、状況によって薬の種類や分量を見極める必要があるので、定期的に皮膚科への通院が求められます。

関連する病気: アトピー性皮膚炎

かゆみを抑えたい! 自分でできる6つの対策

医師の診察や薬の服用の他に、自分でできる対策もあります。アトピー性皮膚炎は長い付き合いになることが予想される病気ですから、無理せず、日常的に取り入れられる対策であることが大切。アトピー性皮膚炎によるかゆみに悩んでいる場合は、できるところから始めてみましょう。

(1)「清潔と保湿」を意識したスキンケア

アトピー性皮膚炎の発症要因の一つは、乾燥。肌のバリア機能が低下していると、体内から水分や油分などを蓄積する機能も衰え、過度に乾燥してしまいます。その結果、表皮の一番外側にある角層のバランスが崩れて、さまざまな刺激やアレルゲンが体内に侵入しやすくなってしまうのです。そのため、保湿を意識したスキンケアを行うことが大切。アトピー性皮膚炎のために開発されたスキンケア用品もありますから、それらを使用してみるのも良いでしょう。また、雑菌などを体内に侵入させないようにするため、清潔を守ることも大事です。

(2)かゆみが辛い時は、冷やす

アトピー性皮膚炎のかゆみは猛烈にひどく、かき壊してしまうことも少なくありません。しかし、かけばかくほど症状が悪化するのも事実。どうしてもかゆみがひどくて耐えられないときは、薬を塗布して和らげたりすることも良いですが、凍らせた保冷剤や冷たいタオルを患部に当てて冷やすのも効果的。また、眠っている時に無意識でかいている場合には、室温や湿度をできるだけ一定にして寒暖差をなくすことが必要です。

(3)皮膚にやさしい衣服を身につける

肌に合わない素材を使った衣服を身につけていると、皮膚と衣服による摩擦が刺激となって、炎症をさらに悪化させてしまうことがあります。そのため、衣服の素材にも気をつける必要があります。木綿(コットン)100%の素材は肌にやさしく、吸水性も良いのでお勧め。特に、夏など汗をかきやすい時期にはできるだけ木綿素材の衣服を身につけるようにしましょう。反対に、化繊の衣服は速乾性が高く、摩擦を起こしやすいので避けた方が無難です。

(4)ストレスを溜めない

ストレスもアトピー性皮膚炎を悪化させる大きな要因。アトピー性皮膚炎による肌トラブルで人目が気になるなど、病気自体がストレスになることもありますが、そうしたストレスが免疫機能を衰えさせ、さらに症状を悪化させることもあります。規則正しい生活や栄養バランスの良い食事をして、できるだけ気持ちをポジティブにキープすること、そしてストレスが溜まっているなと感じたら適度にガス抜きをして発散することが、症状の緩和に役立ちます。

(5)かゆみを起こしやすい食べ物に気をつける

痛みやかゆみの刺激と深く関わりのある神経伝達物質に「ヒスタミン」というものがあります。ヒスタミンは別名「かゆみ物質」と呼ばれていて、これが体内で増えるとかゆみや蕁麻疹などを引き起こすことがあります。食べ物の中には、もともとヒスタミンを多く含むものもあるため、そうした食材はあまり摂取しないように気をつけましょう。たとえば、魚介類ならサバ、マグロ、イワシなど、肉類なら豚肉やサラミ、野菜類ならトマト、ナス、ほうれん草などがその代表例です。

(6)お風呂の温度はぬるめ。長風呂はNG

お風呂に入ると、なんとなく皮膚が潤ってアトピー性皮膚炎の症状が改善されるような感じもしますが、実際は、「入浴するとかゆみを感じる」「風呂上がりにはかゆみがひどくなる」ということも少なくありません。入浴中は水と皮膚の摩擦が起こっていますから、肌の負担も想像以上に大きなもの。特に、40度を超えるような熱いお湯は肌に負担になるため、ぬるめのお湯に浸かるようにしましょう。また石鹸やボディソープ、シャンプー類は肌や頭髪にやさしい、低刺激性のものを選びましょう。湯上りにはしっかり全身を保湿ケアすることも忘れずに行います。

(7)ダニやハウスダストは徹底的に除去

室内を常に清潔に保つことも大切です。特に気をつけたいのが、床と寝具。掃除機を丁寧にかける(もちろん、掃除機のクリーニングも忘れずに)、フローリングの場合は雑巾掛けで仕上げをする、寝具のダニを布団専用掃除機で吸い取る、定期的に布団を丸洗いするなど、こまめな対処が必要です。

関連する病気: 成人のアトピー性皮膚炎 小児のアトピー性皮膚炎

【まとめ】

最後に、子どもと大人では、アトピー性皮膚炎の原因に違いがあるということも覚えておくと良いでしょう。子どもの場合は、食べ物が原因となって発症するケースが多いのにくらべて、大人の場合はダニやハウスダストなどの環境や、皮膚のバリア機能の低下が原因になっているケースが目立ちます。こうした違いにも配慮しながら、自分にあった対策をとることが大切です。

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