乳房再建術

馬場紀行

 乳房切除後の患者さんにとっては、胸の左右差をカバーするための下着をさがさなければならないことや、他の人と温泉に入ることが躊躇されるなど、いろいろ不自由がありました。乳がん検診によって発見されやすいのは、石灰化を伴う乳がんで、そのうちのかなりの数は再発の心配のない非浸潤がんであるといわれています。治りやすい乳がんのために、一生乳房切断による苦労をしなければならなかったのです。とくに若い患者さんではとても深刻な問題でした。

 近年乳房切断術後に再建手術を行うことが健康保険適応となりました。乳房再建術には

1.手術と同時に再建を行う1期的再建術

2.手術後数カ月経ってから再建を行う2期的再建術

 とがあります。切除した乳房を形成するために、

1.背中やおなかの組織を使う筋皮弁術を用いる方法

2.組織拡張器で乳房切除後の皮膚を数カ月かけて拡げてから人工乳腺(シリコン製)に入れ替える方法

 とがあります。健康保険が使えるのは筋皮弁を用いる方法だけで、1期的、2期的いずれも健康保険が適応となります。人工乳腺はまだ保険適応とはなっていないので健康保険適応外となります。人工乳腺はかつては膠原病や発がんなどの危険があるとして使用がひかえられた時期がありましたが、その後の調査で安全性が再確認され、欧米では広く用いられています。日本ではまだ使用できるめどはたっていません。費用は施設によってかなりの差があります。乳がん手術後、抗がん剤の治療を受けなくてはならない場合でも、組織拡張器や人工乳腺があっても大丈夫であるといわれています。

 いずれかの方法で乳房のふくらみが再建された後に、乳頭再建術を行います。乳房再建術は形成外科の高度な技術を要します。乳腺外科医と形成外科医とがいて、両者の信頼関係がよい病院で受けたほうが良い結果になるといえます。まだ数は多くはありませんが、乳房再建術は乳腺外科にとって必須のオプション手術となるでしょう。


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