高齢出産の現状とリスク

藤井知行 武谷雄二

 母体の年齢増加とともに、母児におけるさまざまな異常の発生率が高くなります。一般に35歳以上の出産を高齢出産といいますが、はっきりした定義はありません。ただし、初産婦については、「35歳以上の初産婦を高年初産婦とする」と、日本産科婦人科学会が定義しています。全国の統計では35歳以上の母親からの出生数は、2007年の時点で19・4%を占めています。1980年は4・2%でしたので、30年足らずの間に4・6倍に上昇しています。2005年から2007年の間でも、2005年16・4%、2006年17・7%、そして前述の2007年19・4%と年々増加していて、出産年齢の高齢化が現在も進行していることがわかります。また、1人の女性が生む子どもの数が減少してきていることもあって、第1子出産女性のなかで、35歳以上が占める割合も増えています。1980年には2・1%でしたが、2007年には13・0%と、6倍以上の増加をみせています。また、出産年齢の高齢化は都市部でさらに顕著で、東京大学医学部附属病院では、2007年の35歳以上の出産が、全出産の41・7%を占めるようになっています。

 出産年齢の高齢化は、母児双方のリスクを高める重要な要因となります。すなわち、母体年齢の上昇に伴い、前置胎盤、胎児発育不全、帝王切開率、分娩時出血多量といった産科合併症だけでなく、高血圧、糖尿病、腎臓病などの内科疾患も増加するため、こうした合併症による妊娠リスクも増加することになります。また、年齢とともに子宮筋腫の頻度が増し、それが原因で不妊や流産、早産のリスクが高まります。子宮筋腫は、骨盤位(さかご)などの胎位異常の頻度を高め、また分娩障害や分娩後の子宮復古遅延の要因ともなります。

 児においては、母体年齢の上昇とともに染色体異常の頻度が増加し、流産率が高まったり、ダウン症候群に代表される各種染色体異常症の頻度が増加したりします。また、先天性心疾患、腹壁破裂、口唇・口蓋裂など染色体異常によらない児の奇形も増加します。胎盤を構成する絨毛細胞が水胞状に異常増殖する病気の胞状奇胎も、年齢とともに発生頻度が上昇します。母乳分泌も母体の年齢上昇に伴って減少する傾向があります。


女性の病気と妊娠・出産